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ルグリード領を後にして、グレッシオたちは北へと向かっていく。
国境へとグレッシオたちは向かっていく。
その途中途中で、グレッシオのことに気づくものもいれば、気づかないものもいる。
ニガレーダ王国の領主たちはほとんどグレッシオと交流があるものばかりだ。とはいえ、お忍びで移動しているグレッシオに全員が気づくわけではないのであった。
さて、グレッシオたちはスイゴー王国との国境に隣接している村にいる。
小さな村である。ただし小さいとはいえ、国境に一番隣接している村なので、人通りは多い。この村を通って、他の領地へと商人は向かう。
昔は――聖女さまが生きていた頃は、この村はもっと栄えていたらしい。近隣国との交易もさかんだったというのもあり、多くの人々が行きかい、村ではなく大規模な街だったようだ。
そんな場所は、今はもう住民も少ない村でしかない。
国境に近かったということもあり、この地に住まう人々は、北の国に逃れた者も多い。
ニガレーダ王国にこのままいては身の危険があると判断したものたちは、他国へ全員逃れていってしまった。
さて、そんな小さな村にグレッシオが訪れたのは一年ぶりぐらいである。以前この地を訪れた時もグレッシオは素性を隠していた。村の子供たちは、グレッシオが王族だなんて欠片も思っていないようで、グレッシオに「遊ぼう」などと話しかけている。
流石に村長などはグレッシオのことを気が付いているかもしれないが、そのことを彼が敢えて口にする気配は今のところはない。
村に辿り着いたグレッシオは、子供達にせがまれて少しだけ子供達と遊んだ。自分たちと一緒に楽しそうに遊んでくれるグレッシオに子供達は楽しそうだ。
その様子をマドロラは穏やかな瞳で見ている。
マドロラにとって、グレッシオは仕えるべき主であるという以前に昔から知っている幼馴染でもある。この苦境にあるニガレーダ王国のためにとグレッシオは常に動いている。
仕えてくれる民のためにも王族として答えなければならない――そう、王であるカシオはグレッシオに語っていた。他国に他の貴族たちと同様に亡命することも出来たにも関わらず、カシオはこの地にとどまった。この地を見捨てられないと、この地の王になった。
元々ただの貴族でしかなかったカシオは、そんな自分を陛下と慕ってくれる民のためにも――、行動で返したいと努力し続けた。その結果、無理がたたって現在体調不良気味である。
グレッシオは父親が倒れてしまったのを見ていたのもあり、「俺は倒れないようにする」と適度に息抜きを行うようにはしている。——とはいえ、それでもマドロラの目から見ると、グレッシオも働いてばかりだ。
それが王族としての責務とはいえ、もう少し休んでほしいというのが本音である。
だからこそ、こうして子供達と遊び、息抜きをしている様子を見るとほっとしているのであった。
小さな村なので、その村には宿といった泊まる施設は存在しない。グレッシオたちは、空き家になっている一軒家をかしてもらえることになった。食料や必要なものは村人から借りたり、買ったりして調達をした。
「グレ、スイゴー王国での方針は?」
「最初に行った目的を叶えることを第一として、それ以外は成り行きに任せる。ただ危険な目に遭わないようには当然する。俺は死ぬつもりはない」
「俺達が命をかけてでもグレのことは守ります」
「そこまで危険な真似をするつもりはないがな。何かあれば頼む」
護衛の男も、グレッシオの事が王太子だと悟られないようにか、グレとグレッシオのことを呼んでいる。
この護衛としてついている二人の男も、グレッシオとは昔馴染みである。
名は、ジョエロワとクシミールという。
その二人はグレッシオと昔から過ごしていた存在で、王太子と護衛という立場で、身分の差はあるものの、友人のような関係性である。
「当然です。最もグレは強いですから俺らの守りなどいらないかもしれませんが……」
「そんなことはない。俺は確かに少しは腕は経つが、大人数相手は流石にい難しいからな」
それは言ってしまえば、よっぽどの相手ではなければ、グレッシオたった一人でもどうにでもなるとでもいうようだ。
実際にグレッシオはそれだけの言葉を言い放てる強さを持っているのである。
グレッシオは王太子であるというのもあり、実戦経験というのは少ない。騎士達の方がずっと戦闘経験があり、そういう強さはあるだろう。
とはいえ、この世は絶対ではないので、グレッシオが強かったとしても命を失う可能性は十分にあるのだ。
その可能性を十分にグレッシオは考えて行動している。人数が少ないといえども、この場にいる面子は、グレッシオの命を守れるだけの強さを持ち合わせている面子である。
少人数とはいえ、実力を持つ者を連れているからこそ、王はグレッシオが他国に行くことを許可しているのである。
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