第21話 始業式
「夏の暑さも
ホールの壇上で学生会会長なる人物が、学生代表として挨拶をしている。と言うか、朝会った厩務員のお兄さんだ。え? もしかして偉い人だったの? 何で厩務員やってたんだ? さらさらの金髪に碧眼の学生会会長は、今朝竜舎にいた同一人物とは思えない。
「凄いな、王侯貴族の見本市みたいだ」
俺の横で学生会会長の話を聞いているカルロスは、さっきから顔をウロウロ動かし、落ち着きがない。しかしそれもしょうがないのかも知れない。カルロスだけでなく、青の差し色が入った学生の中には、カルロスのようにウロウロ顔を動かしている者が見て取れる。
「静かにしなさい」
余りウロウロザワザワし過ぎたのだろう。ポーリン試験官から注意が入り、一年生がしんと静まり返った。そこに壇上の学生会会長が付け加える。
「今年の新入生も活きが良さそうです。なんでももう決闘をした人もいるとか」
笑いが起こる会場。やはり決闘するのは余り良い事と捉えられていないようだ。
「この機に在校生も新入生の模範となるよう改めて襟を正し、新入生も在校生の良き所を見習い、将来ガラク王国を背負って立つのだと身を弁えて行動して下さい」
こうして学生会会長の挨拶は終わり、式は終始
「王様挨拶しなかったな」
「王様が挨拶するのは卒業式だけらしいぜ」
始業式が終わり、授業を行う教室へと移動する最中、俺はカルロスと益体のない会話をしていた。
「ブレイド!」
いきなり大声で話し掛けられ、ビクッとして振り返ると、俺より頭一つ小さい、マイヤー・タッカートがふんぞり返っていた。
「聞いたわよ。初日から上級生と決闘して勝ったそうね! 流石は我がライバル!」
俺はいつからマイヤーのライバルになったんだ?
「ふふん、でもいい気にならない事ね。私もこの夏の間、暇にかまけていた訳じゃないのよ。また貴方と対戦する事があれば、受験の時のような無様は晒さないわ!」
はあ、さいですか。これに対してどう答えれば良いのか、返答に困っていると、
「えー、皆さん、えー、廊下で、えー、
黒いフードを目深に被った鷲鼻の試験官が諌める。試験官はそれだけ俺たちに伝えると、教室に入っていった。それに続いて教室に入っていく俺たち新入生。
「えー、……、えー、……、えー、……」
どうやら黒フードの試験官は俺たちの担任の先生らしいのだが、「えー」以外、何を言っているのか分からない。
教室はすり鉢状に机と椅子が並び、席は決まっていないので俺とカルロスは窓側の席に座った。俺たちの後ろの席ではマイヤーがふんぞり返っている。
「えー、……、えー、……」
「先生! 何を言っているのか聞き取れません! もう少し大きな声でお願いします!」
と最前列の中央を陣取った緑髪の少年が、ズバッと切り込む。ああ、良いんだ。先生に注文付けて。
「えー、ダン・モッシェルです」
おお、先生の声が少し大きくなった。やるな、緑髪の少年。ダン先生の話は、学院生活をする上での諸注意や、時間割などであった。
ダン先生は一年の魔法学を担当するのだそうだ。魔法学『を』担当と言う事は、担当の教科ごとに先生が違うのかも知れない。
先生の話が終わった後、俺とカルロスは、このまま解散して家に帰るのもどうだろう。折角ならば学院を探検してから帰ろうではないか。と言う流れになり、学内を探検する事に。
「面白そうね! 私も混ぜなさい!」
後ろの席で話を聞いていたマイヤーが、自分も混ぜろと主張してきた。どうするか? とカルロスと顔を見合わせるが、
「やっぱり初めは練武場? それとも魔法実験室? 図書館も良いし、上級生の竜舎を見に行くのも良いわね!」
既にノリノリのマイヤーを止められそうになかった。だが、人数が増えても良いと言うならと俺は、教室に残っていた一人の学生に声を掛ける。
「アインくん、だよね?」
相手は受験の武術試験で対戦した、中性的な美少年アイン・アイボリーだ。アインも特にこの後用事もなかったようで、四人で学内を見て回る事に決定した。
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