貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

第121話眉間のしわ

カイルはローズが向かった先目指して廊下を疾走していた…

(あっちは鍛錬場…まさかとは思うが一応…)

カイルが鍛錬場に着くと先に来ていた兵士達が鍛錬もせずに集まって何か話をしている。

「お前達！！」

カイルが思わず怒鳴ると

「「「わっ！」」」

兵士達が驚いて振り返る！

「あっ！カイル様…ど、どうされました？」

兵士達が何かをサッと後ろに隠した…

「今隠したものはなんだ？」

カイルがジロリと兵士を睨みつける。

「な、なんでもありません。ただのゴミです…落ちていたので何かと拾っただけです」

「そ、そうです！鍛錬場にあったから驚いていて…なぁ？」

他の兵士達もうんうんと頷く。

確かに見るとただの空の袋を持っているだけだった…

「ならいいが…ところでここに誰か来なかったか？」

「だ、誰かとは？」

逆に兵士に聞かれてしまう。

「た、例えば…可愛らしいご令嬢とか…」

カイルがローズを思いながら答えると

「こ、こんな所にご令嬢来ますかねぇ？なぁみんな！」

「そうですよ～こんな野蛮な所に普通のご令嬢なら来ませんよ」

兵士達が変な汗を流しながら必死に答えると顔を顰めながら

「そうか…ならいいが」

カイルは兵士達に鍛錬を続けるように言うとローズの部屋へと行こうと考える…

(普通の令嬢ならそうなんだが…)

カイルはソワソワしている兵士達を疑いながら見つめていた。

カイルは鍛錬場には居ないと判断すると今度はローズの部屋目掛けて大股で歩く…すると

(いた！)

前にローズの姿を確認する！

「ローズ！」

カイルが声をかけると、ローズはピクッと反応したかと思うと振り返るどころか足を早めた。

「ロ、ローズ？」

カイルは慌てて追いかけるとローズの腕を掴んだ！

「待って！なんで逃げるんだ！」

「べ、別に…ただ早く部屋に帰りたいだけですから」

ローズがこちらを見てくれない…

「ローズ…お願いだ…顔を見せて、こっちを向いてくれ」

カイルが頼むと、ローズがゆっくりと振り返る。

その顔は寂しそうな少し怒っているような顔をしていた…

「なんだ…その顔？」

カイルが眉間にシワのよったローズの顔にクスッと笑う。どんな顔をしていても可愛いと思ってしまった。

「別に…それより何かようがあって声かけたんですよね？」

「ああ、さっきは大丈夫だったのか？」

「大丈夫？心配はジュリア様でしょ…」

顔を曇らせると

「ジュリア様…足は大丈夫だった？」

なんだかんだと気になりローズが聞くと

「ジュリア嬢？知らないなぁ、医務室の前に置いてきた。俺が下ろすとしっかりと立っていたからな大したことないだろ」

どうでもいいとカイルが答えると

「そっか…」

ローズは少しほっとして眉間のシワが少し緩んだ。