第102話正体

「スチュアートさん、俺は彼女…彼を医務室に!」


カイルはローズを抱き上げると鍛錬場を飛び出した!


「ローズ様…」


心配そうにローズを見送るスチュアートがゆっくりと振り返る。


「ス、スチュアート…さ、さん?」


「な、何か俺たちしましたか?」


兵士達がビシッと背筋を伸ばして横一列に並ぶ。


「なぜ…」


スチュアートの声がすると兵士達が震える…一言一言にビリビリと痺れるような威圧がこもっている。


「なぜ…こんな事に?」


「お、お前が言えよ!」


一番最初に剣を交えた兵士にみんなが目配せをする。


「あ、あいつが…いえ!あの方が剣を振る姿をみて感銘を受け…一戦交えないかとお願いした次第であります!」


「スチュアートさん…彼は誰なんですか?」


兵士の一人が伺うとスチュアートがジロッと睨みあげる。


「ひっ!す、すみません!」


思わず謝ると


「あの方に何かあればお前達…明日が無事に迎えられると思うな」


「「「「「「へっ…」」」」」」


スチュアートはそれだけ言うと医務室へと向かった。


スチュアートさんの姿が見えなくなると兵士達の緊張の糸が切れてドサッと座り込む…


残っていたロイ王子に兵士達が話しかけた…


「お、王子…一体なんなんですか?なんでスチュアートさんはあんなにお怒りに?」


「そりゃスチュアートさんの大事な人を傷つけたからに決まってるだろ!」


「大事な人?」


「俺もお前らを許す気ないけどね」


「えー!王子まで!あの方一体誰なんですか!?」


「それは言えん…お前らここで待ってろよ!俺も様子を見てくるから」


ロイ王子も医務室に向かうと…


「おい…俺達とんでもない事をしてしまったんじゃ…」


「もしかして…どこぞからお忍びで来ていた王子だったとか…」


「確かに…端麗な顔立ちをしていた…」


まさか手を出してはいけない人にとんでもない事をしてしまったのかと兵士達は血の気が引く。


「こうしてはいられない…今すぐに謝罪に行かないと…」


兵士の一人が立ち上がると医務室に走り出す!


それを見た他の兵士達もあとを追った!



「ローズ様!」


スチュアートが医務室に到着するとカイルが心配そうに見つめる先のベッドにローズが横になっている。


胸元を軽く開かれ医師のダンテがローズの様子を伺っている。


「ダンテさん!その方の様子は?」


「スチュアートさんもカイル様も落ち着いて、ただ気を失ってるだけですよ」


ダンテがあまりにも心配する二人に苦笑すると


「ちょっと腕に傷がありますがすぐ治りますよ。しかし…彼女は女性なのになぜこんな格好を?」


ダンテが二人に聞くと


「やはり医師のダンテさんにはわかりますか…」


スチュアートがローズの側に行くと穏やかな顔で寝ているローズをみてホッと息をつく。


「どう見ても女性でしょ?体つきが男性とはあきらかに違いますからね」


「先生!いやらしい目でローズを見ないでください!」


カイルがダンテに注意すると…


「うん…」


ローズがカイルの大声に目を覚ました。

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