第96話試食

「ローズ!バルト!」


二人の姿が見えて来るとカイルが声をかけた。


「大丈夫か?実は取れたのか?」


ローズを受け止めようと手を伸ばすと…ローズは少し固まるがそのままおずおずとカイルの手を掴んだ。


「はい、たくさん取れました。これだけあればお茶会でも十分だと思います」


「そうか…よかった」


カイル達がほっとしたように微笑むと


「カイル様もロイ様もこんなところまで付き合ってくださってありがとうございました」


「そりゃローズにはお茶会で頑張ってもらわないといけないからな」


ロイがローズからカバンを取り上げる。


「あっ!ロイ様自分で持ちますよ!」


「いいから持たせておけ。ローズに全てやらせたなんてスチュアートに知れたら俺達が怒られるからな!」


ロイは構わずカバンを背負う。


「まだ木の上だからな下に降りるまで気を抜くなよ。バルト今度は落ちるなよな」


ロイがニヤッとバルトに笑いかけると


「あの時は油断しただけだ」


バルトはロイの頭を足蹴にするとスルスルと下に降りて行く。


「バルト早いよ!」


「お前らが遅いんだ!」


バルトが下から声をかけるとローズ達は顔を見合わせて笑いながら降りていった。



「ふー…どうにか無事に降りられたな」


久しぶりの地面に三人はほっとする。


「それで?どんな実なんだ?上では確認出来なかったからな」


ロイがローズに聞くと


「凄く綺麗でいい匂いのする金色の実でした。私も初めて見たので…」


「この大樹の実なんだろ?この木に実がなるなんて聞いた事無かったけどな」


「あんなに上になっていれば誰も気が付かないだろ、それこそここの森に住む動物達くらいしか」


ローズは大樹の実を一つ取り出す…


「せっかくだから味見してみませんか?」


ニコッと笑いかけた。


カイルとロイはローズにつられて笑う。


「いいな!」


「そうしよう!」


ローズが布で実の表面を綺麗に拭くとさらに輝きがます!


「すごいな…本当に金色だ」


「心なしか…輝いて見えます…」


カイルがじっと実をみつめる。


「光る果実なんて聞いた事あるか?」


ロイがカイルに聞くと


「いや…」


「食べても大丈夫か?」


ロイが警戒しだす。


「こんな美味しそうな匂いですしバルトも食べてますから大丈夫ですよ!」


ローズは持っていた小さいナイフで切りける。


ロイとカイルに切った果実を渡す。


「はいバルト」


バルトの口に果物を近づける。


バルトは警戒する事なくバクッとローズから出された果実に躊躇なくかぶりつく!


「美味い!」


美味しそうに食べるバルトにつられて


「私も~」


ローズも一口でパクッと頬張る。


「「あっ…」」


迷いのないふたりにロイ達も顔を見合わせると果物を口に運んだ…。

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