第95話金色の実

「なんで助けたんだ?」


バルトはロイに思わず聞いた…


どう見ても自分の事を友好的に見ている相手ではないと思っていたので助けられた事に疑問を持っていた。


「なんで?そりゃ目の前で落ちたら助けるだろ?」


ロイは質問の意味がわからず怪訝な顔をする。


「お前にとって俺は魔物だろ…」


バルトが警戒しながら聞くと


「あっ…悪いな。そんなに気にしてたとは俺もカイルもお前…バルトの事をもう疑ってなんてないぞ!」


ロイは笑いながらバルトに手を伸ばす。


バルトはビクッとしながらもロイの手を受け入れた…


ガシガシと手荒に撫でるその手は、今まで自分を捕まえようとしていたハンター達の手とは違っていた…。


「なんだ…こいつらは…」


バルトはロイの手から逃れるとローズの肩に乗って髪の中に顔を隠す。


「バルト、よかったね」


私はクスクス笑うとバルトの顔に頬を擦り寄せた。



三人と一匹は順調に登り木の果実のそばまで来ると…


「これより上は枝が細すぎるな…」


「俺とロイだと折れるかもしれない」


カイルが枝に足をかけるとミシミシと音が鳴っている。


「じゃあここからは私とバルトで行って実を採ってきます」


バルトが少しでも大丈夫そうな枝を探して飛び移るとローズがその後を追う。


「ローズ!気をつけるんだぞ」


「落ちるんなら俺かロイのところにしてくれ。絶対受け止めるから」


カイルが真剣にローズを見つめると…


「わかりました。その時はよろしくお願いしますね!」


ローズは笑顔で手をあげるとバルトとてっぺん目掛けて登りだした。


「ほら、ローズこれだ」


バルトが実を見つけてローズに振り返る。


「どれ?」


ローズがグッとバルトの身体の奥を覗くと…そこには金色に輝く実がなっていた。


「綺麗…それに凄くいい匂い。ずっと感じてた匂いはこれだったんだ…」


ローズは目の前の実を優しく取る。


「上を見てみろ」


バルトの言葉に上を見上げると…そこには金色の実がたわわに実っていた。


「凄い!」


「取り放題だな!俺が落とすからローズが受け止めろ」


バルトが一つ枝から落とすとローズがキャッチする!


「あっ!バルト!そんなにいらないよ。食べられる分とお茶で使う分だけもらっていこう」


次々に落としてくるバルトにローズが笑いかける。


「こんなにあるのにか?」


「どんなにあっても余分に取るのはよくないよ。他の人の事も考えてあげないとね」


「こんなところに来るやつなんていないだろ?」


「現にバルトは来てたし…森の動物達だって来るかもしれないよ…鳥達も。自分さえよければなんて思って独り占めするのは駄目だよ」


「そうか…」


バルトは今落とそうと噛み付こうとしていた枝をそっと離した…。


ローズ達は十分木の実を取るとカバンに優しく入れて来た道を降りだした。

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