第87話過去

「ま、待ってくれ!いや!待ってください!」


ハンターが走り出そうとするスチュアートに声をかける。


「まだ何か?」


スチュアートが面倒臭そうに振り返ると


「あなたはあのスチュアート…さんなんですか?」


「あのと言われても私は親からこの名を貰った時からスチュアートですが?」


「戦火の中、前国王を助けて敵を一人で半壊させたと言う…」


「はっ?何の話ですか?」


スチュアートが顔を顰めると…


「よ、よかった…人違いか…」


ハンターがホッとする。


「一体何年前の話を…しかも一人ではありませんしね」


「えっ…」


「もうよろしいですか?サッサと済ませて私も仕事に戻らないと行けませんので…」


スチュアートがジロっと男を睨むと


「次、喋ったらお前の喉を潰す」


「ヒッ!」


男はギュッと口を結ぶ!


「痛くても叫ぶなよ…」


そう言うとスチュアートは戻るまで後ろを振り返ることはなかった…。



ローズ達は馬を見つけると…


「あっいた!よかった~怪我も無さそうだね」


ローズが優しく馬を撫でるとヒョイっと馬に跨る。


「バルト!」


おいでと手を伸ばすとバルトがローズの前に座った。


「じゃあ帰るからバルトもっとこっちに寄って」


ローズがバルトを自分に引き寄せる…その腕から血が滲み服を汚していた…それに気がついたバルトは…


「この怪我…悪かった」


ローズの傷ついた腕を舐める。


「ん?ああ、このくらい大丈夫だよ。領土にいた時はこんなの日常茶飯事だよ」


ローズが笑っていると


「ヒール…」


バルトがローズの腕に回復魔法をかけた、すると腕の痛みが引いていく!


「えっ!バルト魔法が使えるの!」


「魔獣だからな…だが俺が使えるのは回復系だけだが…」


「凄いね!痛みが無くなったよ!あっ!傷も消えてる!」


「あのままだと…俺がスチュアートに怒られそうだからな…仕方なくだ!」


「うん!ありがとうバルト!」


ローズはバルトを抱きしめた!



ローズ達は馬を厩舎に戻すとローズベリーを置いてきた場所に戻る…


「あった!」


籠を見つけるが慌てていたため中のローズベリーが半分以上落ちて潰れてしまっていた…。


「あー…半分はつかえないね、もうあそこにはあんまり実ってないしな…」


ローズは残念そうに笑うと


「まっ、いっか!とりあえず部屋に戻ろうこのままスチュアートさんより遅かったら…」


「それは…不味いな」


「だよね!急いで戻ろう!」


ローズとバルトは走って部屋へと向かった!



「クレアさん!ただいまー!」


ローズが勢いよく扉を開けると


「ローズ様!もっとお静かに!」


クレアさんが音を立てて入ってくるローズをたしなめる。


「す、すみません…急いでて…スチュアートさんは…」


キョロキョロと部屋を見ると


「スチュアートさんはまだ戻ってませんよ?ご一緒では?」


「あっ…ちょっと色々とありまして…」


ローズが頭をかくと…服の袖がボロボロになっているのにクレアさんが気がついた!

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