囚われの聖女と束縛されし聖騎士
路地裏アクシデント!
俺の名前はリーシェ・シャーレイ。
異世界転生した地球の魔術師だが、記憶が無くなり知識がだけがあるという奇妙な状態となっている元男だ。
恐らくは前世の影響で最強の魔術師を夢みて日々邁進を続けている。
そんなわけで、俺は彼女と友人と後輩と待ち合わせしているお茶屋(ちょっと五月蠅い喫茶店)へと向かっている。
寝坊したけどな。
「やばい!完全に寝坊した!」
この世界の住民はある程度時間にルーズだ。
時間を確認する手段は、一般人からすれば1時間毎に鳴る大鐘ぐらいでしかないために多少遅れても問題は無い(前世で言う時計は極一部の金持ちが趣味で持っている程度)。
問題は無いが、流石に1時間遅れて行くと怒られる。
そんなわけで日課の筋トレもせずに急いで屋茶亭というお気に入りの店へと走っている。
ちょっと怖いが、路地裏を通って近道をしようと決意した。
治安が良いので基本的に問題は無いと思うが、何故か昔から薄暗いところは苦手なので避けてきたが……背に腹は変えられない。
若干の恐怖を覚えつつも覚悟をし路地裏へと入り、極力急ぐ。
「キャッ!」
急いで角を曲がってしまったせいでぶつかってしまった。
やばいやってしまった。路地裏なんて人がいないと完全に思い込んでいた。
「だだだだだ大丈夫でですか!?」
「はい……大丈夫です。」
ん?この声はどこか聞き覚えがるな。
そう思いつつ全身を確認する。
黒い地味目のローブを着て全身を隠し、顔は見えない。
「たすけ……
折れに対して言いかけると、一瞬固まり
「何でもありません。では失礼します。」
そういって急いで立ち去ろうとした。
その時に見えてしまった。
フードの中のとても焦っている顔を。
「待ちなお嬢さん。」
そういって立ち去ろうとするフードの女を止める。
「助けが欲しいんだろ?」
俺が察しの悪い人間ならばどれほど良かったか。
このフードの女が何かに巻き込まれ誰かに助けを求めていたいのも、何等かの理由で人に助けを求めれない状態になっている可能性が頭の中に過った瞬間、俺はこの状態をスルー出来なくなってしまった。
「駄目です!あなたが不幸になってしまいます。」
「目の前の困っている人間を見捨てる方が不幸になるものさ。それで何に困っているんですか?」
「今あなたに止められて困ってます!」
「追われているのか?」
「違いますけどそうです!」
「じゃあこうすれば問題は無いな!」
そういってフードの女の手をとりそのまま後ろに周り倒し、お姫様抱っこの要領で持つ。
「
壁に
さてどうしたものか。
俺に助けを求めているように見えたが、もしかしたら俺に襲われると思って他の人間に助けを求めたのかもしれない。
一瞬見えた表情も、俺が生理的に無理だから焦っていただけかもしれない。
もしかしたら尿意や便意を催していて、今余計に大変な状態にしてしまったのかもしれない。
いやまて、ここは屋根の上だ。
「いや、いっそここなら漏らしても大丈夫なのか……。」
「私を攫った上で何をわけのわからないことを言っているんですか。」
「まあそれはいいだろう、ここは屋根の上だから探知魔術をかけない限りは分からないと思う。」
屋根の上にいるという考えが無ければ、よっぽど目立たない限りは多少見えてもばれないものだ。
「えーっと。フードの君の名前は何というんのかい?」
「アグラ・クラスティと申します。」
「いい名前だな。俺の名前はリーシェ・シャーレイだ。」
しかしこの女性の声、どこかで聞いたことがある気がするんだが……。
「俺とどこかで会ったことあるかい?」
「ええ、つい先日即売会でお会いしましたよ。」
「ああ!あの時の怖い人!」
訳アリのような、護衛に囲まれた金髪の少女か。
「怖い人とは失礼ですね!」
「というよりよく俺が分かりましたね。」
「ええ、信託が舞い降りましたので。」
ああ、そういう痛い人か。
いない者をいないと証明はできないので絶対ではないが、前世では神なぞ存在しないというのが魔術師の基本だった。
俺も神はいないと思う。
神がいるならあんな不平等があってたまるものか。
「そうか、それで君は今何に対して追われているんだ?」
「では一緒にお茶をしましょう。」
「は?」
「お茶をしましょう、私憧れていたんですよ、逢引をすることに。」
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