ガリガリの男


 金貨30万枚。

 日本円にして約30億円。

 税金で金貨8万枚ほどボッシュートされたが、それでも既に稼いだ分込みで約金貨24万枚。



「これは現実だとは思えないんですけどね。」

 あまりの金額の多さに現実を受け止めれない。

 

「高騰するとは思ってましたが……ここまで上がるとは思いませんでした。」

 競売会を提案したクリームも驚いている。


「不思議だよね……。」


「あなたたち三人には分からないと思いますが、めちゃくちゃ凄いことしてますからね?」

 そう二つ名魔術師である、学園長に指摘される。


「自分たち3人は魔術師なんで、人造魔剣の技術革命が云々と言われても良く分からないんですよねぇ。」


「まあ立場が違えば価値観が変わりますので、分かりにくいってのは分かりますけどね」

「その別の視点に立つことで、初めて見えてくる景色というものも存在しますからね。」


 

 そんな学園長の言葉を聞いた少し後に呼ばれ、金貨30万枚という超価格で競り落とした人間との対面となる。



「よお愚物。速く俺に人造魔剣の作り方を教えろ。」

 うげ、あの偉そうな客じゃないか。

 特徴的なお面をつけた、高身長でがりがりの男がそこに立っていた。


「教えてもらう立場で人を愚物扱いするなボケが。」


「ああすまない……昔から俺自身以外の人間が全て愚かに見えてな。」


「初対面の人間に対して愚物と言うお前の方が愚かだろうが!」


「案ずるな。人の評価というのは時と場合、そして評価者によって大きく変わるものだ」

「故に俺は愚かではない。ということでさっさと人造魔剣の作り方を教えろ。」

 なんて嫌なやつなんだ。


「まあいいや。俺の人造魔剣の制作方法は付与魔術エンチャントという特殊な魔術を使用してから術式を刻印するんだ」

「複数の術式を展開するというややこしい魔術だから、とりあえず一つづつ術式を解説していこうと思う。」


「ああ頼む。」



 そうして1時間ほど、がりがりの男対して付与魔術エンチャントの理論構築について説明した。


「とりあえず可能な限り分かりやすく説明したつもりだが……理解できたか?」


「ああ理解できた。とても有意義な時間を過ごせたよ」

「愚物の癖によくやった。」


「だから愚物言うなと言ってるだろう!」

「まあいいや。とりあえず使えるかためしてみて、使えたら人造魔剣の作り方講座は終了ってことで良いか?」


「問題ない。俺は天才だからすべて理解した。」


「もしできないで後からグチグチ言われてもそれはそれで困るんだよ!」

 がりがりの男は中々に頭の回転、柔軟性が良い。

 故に俺の説明を理解しているし、恐らくは付与魔術エンチャントの魔術も使用できるはずだ。


 まあ教えるだけで使えるようにはしない、なんて詐欺じみたことをしようとしておいてあれだがな。



「いやできないんだ」

「俺は付与魔術エンチャントの魔術を発動できない」


「ああ……その……何かすまんかった。」


「憐れむな愚物が。」


「いやほら、まあ人生何があるか分からないしな?」


「そもそも俺の本職は戦闘ではなく研究者であり知識の探究者だ」

「だから魔力が少なかろうと問題は無い!」

 こうやって強がっているんだろう。なんて不幸な人間なんだ。

 

 この世界に置いては魔力が全て……って程ではないが、最低限の魔力が必要なことには変わりはない。

 そして根本的に付与魔術エンチャントを使用できないほどの魔力の無さとなれば、最低限のスタートラインにすら立てない魔力だろう。


 そんな状態でも自殺をせず、多少毒舌だが頑張って生きているのは凄いな。

 多少の毒舌は許してやろうじゃないか。


「だから俺には魔力なんぞいらないと言ってるだろ!何故哀れみの眼で俺を見るのだ!」




 そんなわけでがりがりの男への解説も終了し、無事俺は金貨30万枚という圧倒的大金を得ることができた。

 

 協力してくれたアリシャとクリーム、あとは人造魔剣のアイディアを出してくれたカノンにも報酬として金貨1万枚を渡して金貨3万枚を使ったとしても残り金貨18万枚。

 日本円で約18億。


 うん。学生が持つにはどう考えてもやばい金額だな。

 ということでこの金は学園長にでも預けて補完して、何かあった時用に使うことにした。



 その後例の店に行き、無事部分性転換の魔術を教えてもらった。

 

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