恋人の家
「ねえ……自分で言っておいてあれだけど明日練習場を貸し切りにしてしない?」
「まあ良いじゃないか。恋仲の相手を実家に呼ぶのに深い理由は必要ないともいうしな。」
「親がいれば一気に深い理由になりますけどねー。」
「深い理由にしてもいいけど…今は親はいないよ。」
「ならば行くのに問題は無いだろう!」
「でもそもそも付与する魔術の形成からしないと…・・・。」
「安心しろ!既に大まかなのは出来ている。」
「アリシャ先輩は実家に招きたくないようですが…でも提案したってことは我慢してでもリーシェさんに協力したいってことなんじゃないですか?」
「うん……理由は分からないけど……リーシェにとっては重要なことだと思うからできたら協力したい。」
うーん。理由が理由だけに割と真剣ではあるけど、何か申し訳なくなってきたな。
まあ多様な魔術の知識を得ることは将来に繋がるだろうから問題は無いと思うが……理由を言っておくか…。
「あのな、アリシャさんや?」
「でもリーシェがそんなにお金が欲しいのなら…嫌だけど頑張る!」
「そうですね!リーシェさんがそんなにお金が欲しいなんて何か深い理由があるんですよ!」
やばい。とても真実を言うような状態じゃなくなった。
そしてそのままアリシャの実家に3人で行った。
家自体は下級貴族らしく広い豪邸だった。
しかし庭には雑草が生えており、後に聞いたが、家の中の使用人も1人しかいないらしい。
「おお!アリシャお嬢様!ご友人達を連れてくるなんて珍しいですね!」
屋敷に入ると、唯一使用人が駆け寄ってきた。
「ユイノさん…・・・恥ずかしいから…・・・。」
「そうでしたか申し訳ありません。初めてご友人を連れてきたのでつい驚いてしまいまして。」
恋仲と後輩なので友人と言うのはあれだが黙っておこう。
「今から庭に出て魔術の練習しておくから…念の為変なのが入ってこないか見張っておいて。」
「分かりました!頑張ってください!」
そう言ってユイノと呼ばれた使用人は外へ出ていった。
「元気な人ですね。」
「元気しかないから…・・・。」
「元気があるのは大切だぞ。」
「と言うより何で呼びたく無かったんですか?」
「確かに、広いし使用人も元気だしな。」
庭には雑草が生えてる時点であれだが、そういうのを言うのは良くないだろう。
と言うよりクリームは察しろよ!と思ったが、村出身だし家が広い=凄い!みたいな感覚なのか?。
「だって…使用人はあの人だけだしあの人使用人としては色々駄目だし……」
「何よりこんな没落寸前の下級貴族だと…リーシェに釣り合わないと思って。」
奇遇にも俺と同じようなことを考えていたようだ。
「リーシェはあのリロンドの領主の娘だし…才能もあるし……流水の弟子だし………私なんて一年かかったのにリーシェはすぐに一気に一級冒険者になったし……。」
なるほど、客観的に見れば俺は割と有望株なのか。
「偶然だな。俺も同じことで悩んでいたよ。」
「え……?」
「俺は辺境の領主の3女。相手は没落手前とはいえ下級貴族貴族」
「こっちは魔術に触れて少しの魔術師。相手は稀代の天才と言われる魔術師。」
「それは違うよ…」
「まあ待て。俺が言いたいのはそんな事じゃない」
「自分の価値なんて簡単に決まるものじゃない。お互いに不釣り合いと思うのなら釣り合っていると思わないか?。」
すると、アリシャが少し悩み憑き物が落ちたような顔になる。
「そうだね……考えすぎてたと思う。ありがとう。」
「中々に青春な話をしてますが、私がいることを忘れていませんか?。」
「忘れてたわ。」
「酷い!?」
「先ほどは失礼いたしました。あなた様はご友人ではなく恋仲の殿方でしたのね。」
いつの間にかユイノと呼ばれた使用人が近くに来ていた。
「ユイノさん!外を見張っておいてと言ったはずでしょ!」
「あくまで不審者が入ってこないかを確認しろと言われただけですので、少し離れた所から聞いておりました。」
「と言うより俺は男じゃなくて女だぞ。」
そういうと、ユイノは心底驚いたような顔をした。
「申し訳ございません。喋り方的に殿方だと思っておりました。」
「と言うよりリーシェさんは何で男口調何ですか?」
「うん。じゃあ人造魔剣を作ってみますかー!」
転生のこと無しで男口調を説明するのは正直無理そうなので、無視して進めることとした。
「アリシャお嬢様。私は同性の恋愛には理解がある方ですのでご安心ください。」
「ああうん……あなたが理解のある人間で良かったよ……。」
なんて会話が後ろの方でしていたりもする。
まあ血の繋がった子孫を残せないわけだから、普通は同性の結婚は魔術師に置いては禁句だろうな。
「そうか!それを言い訳にすれば示しがつくか!」
「言い訳?」
どうやら口に出てしまっていたようだ。やってしまった。
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