人造魔剣


 魔剣。地球だと強い魔力の籠った剣の総称ではあるが、この世界での魔剣は意味が違う。

 ダンジョンと言われる、巨大モンスターが生み出した巣で手に入る特殊な剣。


 魔力を込めることによって、魔術師以外でも魔術が使えるという代物だ。

 ちなみに剣自体に術式が埋め込まれているのだろうと予想はされているが、実際に原理は不明となっている。

 更にいえば、何故ダンジョンから剣が出るかというのも諸説あると言われている。



 曰く巨大モンスターなり、雑魚モンスターが攻冒険者を集めるために準備している。

 曰く中で死んでいった冒険者の装備。




 しかし結局魔剣となる理由は一切不明であり、研究はされているものの一切解明していないようだ。

 


 また、極一部の強力な魔術師は人造魔剣を作成することが可能らしいが剣から作らないと行けなく、非常に高価な上に武器としての性能が落ちてしまうためにあまり使われていないらしい。


 魔術というのはかなり強力であり、小魔術でも防御無しで直撃すれば死を招くほど。

 故に魔剣というのは高価で取引されており、魔剣を持っていることは一種のステ―タスになる……と思っていた。




「人造魔剣か。でも作ったところで売れるのか?。」


「武器種にもよるが、人造魔剣の相場は大体一本金貨2000枚の袋(2000万円ちょっと)。リーシェと俺の知識、それとアリシャとクリームの技術で全力を出せばこれより安く作れるかもしれない。」


「というかそもそも人造魔剣自体がどう作られてるか知らないんだが。」


「確か切り替え式を使用した書置き術式……だったと思う。」

 


 切り替え魔術。紋章術の多くは一度使用すれば終わり!と言う術式にすることでより威力を上げるようにしている。

 しかし魔具に描かれた魔術などのように、”何度も発動する”ような魔術はそのままではいけない。


 俺の魔術弩砲バリスタにも使われているが[術式発動後に回路を初期状態に戻す]という特殊な式を描かなければいけない(その分火力増強の式が減るために効果は落ちる)。


 ちなみに書置き術というのは、特殊な金属などに物理的に術式を掘る術式のこと。

 術式は魔力で組むのが最も速く効率が良いために使われているだけで、紙に描いたり地面に掘ったりして魔術を発動することも可能だ。



「と言うより今考えたんだが、書置き術式かつ切り替え式を採用した紙でも売ったら大儲けできるんじゃないか?。」


「基本的に触媒(術式を描く対象)によって変わるもので、紙だと描いて1時間以内じゃないと術式としては機能無くなるんですよね。」


「石板とか金属板なら大丈夫だと思うけど……重くて運用は難しそう。」


「結局の所剣士は殴るのが強いわけだから、あくまで魔術を使えるなら良い程度なんだよな」

「だから魔剣もあんまり売れない。」


「え?あんまり売れないのか?。」


「要するに今まで使っていた獲物を捨てて、新しい獲物にしろってわけだからな」

「自分が今まで使っていた武器に近い魔剣が来ない限りは基本買わないだろう。」


「値段も高いから……大体金貨五千枚の袋(5000万ちょっと)ぐらいあるし……。」


「魔剣ってそんな悲しい物なのか。」


「まあ物によっては普通に売れるからな、片手剣なんかは人気高いが戦斧なんかは使う人を選ぶからあんまり売れない。」


「特に戦斧は特注品が多いしね……。」


「そうなるわけで、逆に特注品である人造魔剣は魔剣より使い手を選ばないから人気が出る!と言う目論見で作っていたらしいのですが……。」


「作成難易度が高い上、素材の関係で武器としてはオリハルコンやミスリルに劣る。じゃあ強い武器使って魔術は味方に任せればいいじゃんと。」


「オリハルコンやミスリルだと魔剣は作れないのか?。」


「オリハルコンは魔力を通さなすぎる。強化魔術は覆う感じだから問題は無いが人造魔剣の素材としては適していない」

「ミスリルは逆に魔力を通し過ぎて、強化魔術を使うだけで魔術が発動してしまう。」


「そもそもどんな構造になってるから知らないんだが。」


「私も知らない……。」


「昔父に見せてもらった時に、大まかな理論の解明はできましたが……断言できるほどではありません。」


「結局俺が解説しないといけないのか……」

「正直見たら分かるような内容だから言うけど、あんまり他言はしないようにな。」

 そう言ってカノンは魔術収納袋から紙を出し、分かりやすいように図を書く。



「基本的に魔剣はそこそこ強度のあって、そこそこ魔力を通しやすくて、そこそこ魔力を通しにくいソコソーコという金属によって使う。」

「そして柄の真ん中に術式を書き込んでいる魔石を入れて、一部を露出させた上でミスリルで覆うように加工してはめ込む」

「これで強化魔術を使う分には普通に剣として使え、柄の辺りに集中して魔力を流し込むことで魔術が使えるという魔剣が完成する。」


「それって魔石単体じゃダメなのか?。」


「理論上魔具だと威力が足りない……恐らくは剣にも軽く術式が描かれていて、はめ込むことで威力を増強できるという仕組みだと思う。」


「更にいえば使うのは強化魔術ぐらいしか知らない素人なわけで、攻撃魔具だと飛ばすのすら一苦労だと思います」

「なので放出先を一方向にして使いやすくする。と言うのもあるでしょうね。」




 つまるところある程度安い品質で、その上大量生産できるようにしなければいけない。

 そもそも人造魔剣を作るところから始めないといけなく、鍛冶屋さんに協力をしてもらわなければきついだろう。

 


「そういえば即売会っていつからなんだっけ?。」


「あ……完全に抜け落ちてた」

「即売会は10日後開始だな。」




 終わった。

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