国王との対面
「不敬とか気にしないでもっと緩く話せ!」
大丈夫かこの国王。
この国の将来に不安を持ち始めた俺はとても反応に困っていた。
多分父ならばここでため口で話せるんだろうが俺にはできない。
「ありがとうございます。ですが王相手ですので私は少し緩くさせていただくぐらいにさせてもらいます。」
我ながら完璧の反応だろうか。
「国王。リーシェさんが困っているのでそれぐらいにしておいてください。」
補佐のような、白髪の目立つ中年のような人物が王を止める。
できればもっと早目に止めてほしかった。
補佐のような男が止めたところで少し俺も冷静になり、周りを見渡す余裕ができた。
玉座の間にいるのは俺を除いて8人。
王とその補佐らしき男、おそらくは第一から第三までの騎士団長、副団長だ。
そこには先日会ったアルトがいた。
そして昔、アリシャとの模擬戦の後に会った糞野郎がいた。
王座の間は真ん中にかかっている、玉座に向かう赤色のカーペットを中心として広い作りとなっている。
アルトの場所的に騎士団長と副団長に分かれていると思われ、3人ずつ左右に分かれて立っている。
副団長と団長に分かれているのであれば、奴は騎士団長ということだろう。
と言うよりかなり開けているし、護衛をしている人も騎士団長だけだしこれ暗殺とか大丈夫なのか?。
いや、実際に大丈夫だからこの方式になっているとは思うんだが。
と言うより今気が付いたが、これは風水占術と結界魔術を利用した特殊な空間となっている。
風水占術・東西南北、そこに色と地形の要素を絡めた魔力を込めた紙を基本とする魔術。
それ以外には特定の位置、方向に○○を置くことによって特殊な結界を貼ることも可能。
しかし風水占術観点で見るとややおかしい作りとなっている……が、今俺がここで指摘するのは危ないだろう。
「それでリーシェよ。そなたは誘拐されたリリィ・バイヤを無傷で救出し、更に誘拐犯であった上級悪魔・ヒューマノイドを人的被害を出さずに倒した」
「その功績を称え、そなたには金貨一万枚(日本円で約1億円)の入った袋に、第三騎士団への入団が可能な権利」
「そして三級冒険者から、一級冒険者へと飛び級することを褒美とする。」
予想通り金と入団権利、第三騎士団限定というのは意外だ。
地味に冒険者の位が上がったのも嬉しいな。アリシャやカノンと一緒に冒険できるようになるわけだし。
「ありがたきお言葉ありがとうございます。」
緊張のせいで日本語……ではなく勇者語が変なことになっている気もするが気にしないで大丈夫だろう。
「では失礼いたします。」
そういって退場した。
「言葉遣い変でしたね!」
退場後に学園長に言われた。
「緊張でそれどころじゃなかったんですよ。気さくな人とは言え王相手ですからね。」
「慣れれば楽なものですよ?適当に返事しても怒らない王様なんて珍しいですから。」
「王様ですからね。きちんと敬意は払わないと。」
「私は敬意をは払わないでも大丈夫なぐらいの権力があるので大丈夫です!」
「わーお黒い大人。」
「そういえばあなた、何かに気がついたような感じしてましたけど何かあったんですか?」
なんでこういう時だけ鋭いのだろう。
いや……恐らく俺が分かりやすいだけなんだろうな。
「いえ、アルト以外にも知っている顔があったので驚いただけです。」
学園長になら言っても問題は無いだろうが、”俺が言った”ということによって俺が狙われるかもしれない。
何せ玉座の間の魔術に手を加えれる人間、又は玉座の間の防護術を作りだした人間が敵だから。
玉座の間に施されている術式なのだから、もちろん王を守るための防護術なのだろう。
しかしあの配置では、王に対して一切効果が無い作りとなっている。
風水占術的に見れば[部屋の内装や部屋自体の耐久性を強化する]というよくわからない作りとなっている。
もちろん重要な置物は守っておかないと、風水占術自体が崩れるので意味はないが……内装の防護に全力をかけているために一切意味が無い。
恐らくは王様を守るような防御術があったが改変された。
又はそのような術を作ろうという案を出されて決定したが、実際に作られたのは違う物だったというところだろう。
風水占術はこの世界でも超マイナーな魔術なので、そもそも間違っていることを理解できる人間自体が少なかろう。
恐らくは魔術に守られていると思っている、裸の王様に対しての暗殺の成功率を上げる!と言うのが目的だろうな。
だからと言って間違っている、狙われていると指摘するのは不味い。
玉座の間を改造できる人間だ、かなりの権力者だろう。
故に下手に手を出せばそのまま俺は消されてしまう。
何より軽くしかしゃべっていないが、今の王が王様に向ているとは思えない。
絶望的に向いていないって程じゃないが、上手くかみ合わないと国の運営は厳しいだろう。
王には王の器が、王の威厳が、王の判断が必要となる。
上司や、何等かの小・中規模のリーダーにはかなり向いている性格だとは思う。
だからと言って始めて会った目下の人間に対して無礼講で良いというような人間が、この世界でも有数の魔術国家[ハウンド]の王には向いていないと思う。
とはいえ見殺しは気分が悪いため、もっと俺が強くなったら助言をしよう。
~そして数日後~
「まだまだ終わりませんよ!」
俺は今、アルトにフルボッコにされて地面にのたうち回っている。
修行回だ、こいつの技術とやらを盗んでやる!。
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