一人目の□□□
牽制程度の、コンボの一つにやったはずの攻撃が心臓にクリーンヒットして倒してしまった。
心臓を撃ち抜かれて、上を向いて倒れているヒューマノイドの死体を見ながら俺はそう思う。
・・・・・・これで終わるの?拍子抜け感が凄い。
「
落とした剣を拾い、とりあえず貫通力の高い一点に風を集中させ槍のように放つ大魔術を発動させる。
ヒューマノイドには悪いが、この一撃を削っておけばそれっぽいだろう。
「死体に攻撃は死者への冒涜だろ!」
放とうとした瞬間、ヒューマノイドは起き上がり大集風槍を回避する。
「貴様が死んだふりをしていたのは丸分かりだったぞ!馬鹿め!」
完全に偶然だったが、まああまり気にしない。
確かに死体への攻撃は良くないが、そもそもこいつは上級悪魔だしな。
敵なら何もしてよいってわけじゃないが、誘拐して誰かを殺そうとした時点で確実に悪いやつだからセーフってことで。
「なるほど……戦闘経験が少ないと思っていたが以外とあるようだな。」
「悪魔に常識は通じないからな」
「特に勝負が決まった直後は油断しやすい。一切油断しないというのが一流の仕事ってもんだ。」
完全に偶然だったが、ここぞとばかりに調子に乗って煽る。
いやあれだから。魔法使いは自己蘇生してくるようなやついたから、死体は木っ端みじんにしてようやく殺したと言っても過言ではないまであるから。
そんな自己援護をしつつ、次の展開を考える。
一点集中していたとはいえ、爆破で貫通できるとは正直思えない。
となると、やつはわざと人間の心臓がある場所に当てるように移動してあえて攻撃を受けて死んだふりをした?。
そこまでの労力をしてまで死んだふりをしたかったということは、隙をついて俺を殺したいか逃げたいかのどちらかだろう。
・・・・・・いや、そうやって俺が優勢に思わせておくという戦略も?。
まあ無駄に深く考える必要は無い。全力で戦えば問題は無いだろう。
「
右足に風の魔力を纏わせ、それを蹴りと同時に飛ばす。
同時に避けた先の追撃のため、左の指先に魔力を溜める
しかし風脚は威力不足なのかヒューマノイドはそのまま受けてしまった。
追撃のために準備していた
回避直後、やつは俺に向かって全力で前進してくる。
「炎よ!」
炎が家に移って大火災になったら不味いが、そんなことを言っている余裕は無い。
左手から槍状の火炎を放ち、直後俺は全力で距離を詰める。
火炎の槍。当たった直後に爆炎を生み出し、焼けた空気を吸った相手を肺から焼いて殺すように作った亜種生活魔術(俺だけが使える攻撃可能な生活魔術)だ。
なお、強いやつらは何故か肺も強いので一切効果は無かった。
幼少期に練習していたこともあって、属性持ちの亜種生活魔術の中では一番出しやすいのが長所。
「効かん!」
直撃するも、術式展開が無いこともあって一切ダメージが無い。
しかし今の一撃は攻撃のためではあるがダメージを与えるためではない。
敵との距離おおよそ1メートル。もはや一撃を叩きこめる距離だ。
ヒューマノイドの攻撃が来る。上から叩きつけるような一撃。
直後奴の体が巨大化する。
大きさが2倍近くになり、その分射程も伸びる。
恐らくは能力を解いたのだろう。しかし変身能力が来ると分かっていた俺は、これを簡単に左側へと回避する。
直後右手に持っている剣に風の魔力を纏わせるイメージを作る。
風ごと、火炎の槍によってまき散らされた炎を剣に吸いつける。
「焔ノ剣!」
炎の乗った剣を全力で、脇腹の辺りに叩きつける。
焔ノ迦具土ほどんの威力は無いが、強化された炎の剣が敵を斬り裂く。
勢いに任せてそのまま突っ走ってしまったため、追撃ができない距離まで離れてしまった。
しかし見るからにダメージが入っている。新しい剣の強さも相まって今の一撃はかなり効いたのだろう。
「さあ、そろそろお前も危険な状態なんじゃないか?」
恐らく他人から見たら悪い顔、悪役の顔で煽ってゆく。
「そうか……まだまだ大丈夫だ。」
そういうと、いきなりやつは後ろを向いて全力で走り出す。
「さあ!俺の最後の一撃を喰らうが良い!」
うん、こいつ逃げてるな。
「信じるわけないだろ馬鹿が!」
全力で追いかける。
本来の姿に戻っているため、歩幅の関係で速度はギリギリあっちの方が上。
しかし奴らはこちらに背中を向けている。ならば遠距離攻撃を叩きこめば問題無いだろう。
「
アリシャも使っている、一点集中の突風を生み出す魔術が一番だろう。
偏差射撃をするため、ヒューマノイドの先を見ていると、先には女がいた。
金髪の髪に蒼い瞳、サイド三つ編みを右肩にかけているのが特徴。
白く高級そうな、カッコよさと可憐さを両立したような服を着ている女性。
「馬鹿!危ないぞ!」
危機感の足りない成金の娘か?くそ!ここで死人やけが人が出たらまずい。
「
少し前に術式を展開し、それを右足で踏み込む。
術式を不安定な形に改造し、魔力を過剰に入れることによって術式を暴走させる地球原産の魔術。
魔術が発動し、俺の脚に大ダメージを与えながらブーストをかける。
それに合わせて全力で上に飛ぶ。
直後術式が暴走し、術式自体が破壊され突風を起こす。
その風によって押され、俺は超スピードで空を舞ってヒューマノイドに接近する。
最後の手段であり、ここをミスった場合にはもう追いかけられなくなる賭けだ。
ここで成功できなければ戦闘能力は低いが、危険度はトップクラスの最悪の悪魔を逃がしてしまう。
しかし間に合わない。
「邪魔だ女!のけ!」
ヒューマノイドが悪態をつき、金髪の女性へと殴りかかる。
しかし金髪の女性は逃げも怯えもせず、魔術収納袋から剣を取りだした。
ヒューマノイドの全力の一撃。
並みの剣士や騎士ならば即死する。
そんな一撃を金髪の女性は真向から剣で受け、右に流した。
「は?」
そのまま女性はさっきの俺と同じように、左脇腹辺りに進み一撃を入れる。
あまりにも滑らかな動きであり、美しい動きで見とれてしまう。
そして見とれていたために着地のことを忘れてしまい、俺はそのまま地面に激突を─────
しなかった。
その金髪の女性……女性の剣士?騎士?が俺を受け止めてくれたのだ。
「君がこの上級悪魔と戦ってくれていた者か?」
俺に対して話しかける。女性にしては低いが、かっこよさを感じる凛々しい声で。
後ろにある、先ほど真っ二つに切り裂き殺した上級悪魔の死体のことなんてしらないように、気にせずに話しかける。
「は、はい。そうです。」
「礼を言う。君がいたから早期に発見でき、少ない被害で上級悪魔を倒すことができた」
「私はアルト・プリュスタン。」
「ど、どうも。リーシェシャーレイです。」
自己紹介で返す。
「そこで突然だが、ここで一つお願いなのだが」
「礼もかねてだが、良かったら私が団長をしている第三騎士団に入団してみないか?」
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