ヒューマノイド


 ヒューマノイド。日本語だと人間に似たようなって意味だったか。

 もちろんすべて信じるわけでは無いが、リトルデビルのように名前が能力に関係のある可能性が高い。


 

バレット

 左手の指先に魔力を溜め、魔力弾前方に発射する。

 発射と同時に前に駆け抜け、既に抜いていた剣を右からの横斬りで斬りかかる。

 

 超スピードで飛んだ魔力弾は直撃するもそこまでダメージが無いようだ……対上級悪魔には火力不足か。

 追撃はしゃがみ避けられてしまう。


 直後下からヒューマの一撃が飛んでくる。

 腹を狙うアッパーだ。


 しかし腹の前に防御術式を展開し、全力で右方向へ飛ぶ。

 防御術式によって一瞬止まった一撃を寸前の所で回避し、状況は最初に戻る。



「対人間のつもりだったが、上級悪魔前提でいいなこれは。」


「ほう……?よく俺が上級悪魔だと分かったな。」

 自白してくれた。


「ハ!人間に擬態しかできない能無しの雑魚ってことも今分かったけどな!」

 

「フッ……我が能力の強さが分からぬとは……戦闘能力も相まってやはり三流か。」

 残念ながら煽りは聞かなかったようだ。


 言われなくても強さなんて分かるわ!特徴を掴めなかった点からも、恐らくは認識阻害効果持ちの人間に擬態する能力。

 魔導なので変化魔術とは違って入国する時に解除する必要もない。

 

 そして街中で不意打ちし放題。

 更にいえば、この余裕っぷりを考えると見た目は好きなように変えれるなり、何等かの方法でバレずに逃走する方法がある。


 戦闘能力は他の上級悪魔には及ばないだろうが、恐ろしさで言えば最強格だ。


 

「そういえばリリィ、あの娘をなんで攫ったんだ?」

 時間稼ぎついでに、単純に気になったので質問をする。


「屋茶亭の常連に俺たちの復讐相手の子孫がいるからな。そいつを殺すために攫ったんだ。」

 余裕に答えてくれる。これは下手に時間稼ぎをすると相手に得な感じか。


「そうか。もしよかったら俺も復讐を手伝ってやるから名前を教えてくれないか?」

 

 そう俺が言った直後、ヒューマノイドは全力でこちらに殴りかかってきた。

 全力の右ストレートだ。


「嘘だろ!?」

 相手が時間稼ぎをすると思っていたため、完全に油断してしまった。

 

 魔術防御壁ガードが破られる。

 しかしギリギリのところで回避できた。そこそこお気に入りだった服の左肋骨付近が無くなったが。


「あっぶねぇ!」

 暗殺対策につけていた防護服。魔力を通しやすい糸で編んだ、魔力版鎖帷子くさびかたびらと言った物を軽々と破壊した。


 

「油断したな?」


「中々に慣れているご様子で!」

 左手に魔力塊を生成する。

 ただしただの魔力塊ではなく、先のとがった針のような形で生み出す。


意味を与えるかそく

 それをヒューマノイドに向かって投げる。投げた瞬間に指令魔術を使用し、加速させ殺傷能力を高める。


 投げた魔力針は胴を狙ったが、左腕で防がれる。

 しかし守った腕を貫通とまでは行かなくとも、突き刺さる形で止まった。


意味を与えるばくは

 指令魔術を使用し魔力針を爆弾へと変える。


 威力自体はそこそこ程度だが、刺さっている状態からの爆発なために確実にダメージが入る。



 爆破させた瞬間、一気に距離を詰める。

 左下からの切り上げ。爆破によって視界が埋まった状態のヒューマノイドにはこちらの位置が見えていないはずだ。


 強化魔術によって切れ味の強化された俺の剣がヒューマノイドを斬り裂く。

 ・・・・・・いや、正確にはヒューマノイドが先ほどまでいた空を斬り裂いた。


 視界が埋まっていると判断したヒューマノイドは一瞬で後ろに逃げ、形勢を立て直しているのだろう。



「石壁!」

 多少ましになったが、現状はこちらの視界が防がれている状態なため前に土魔術の壁を生成する。

 直後目の前に作りだした石の壁が破壊される。


「くそ!」

 後ろに全力で逃避し、拳の先に防御術式を展開する。

 土の壁先からの攻撃なため、こちらの正確な位置が分かっていなく直撃は避けられた。


 しかし軽く触れる程度の攻撃は飛んでき、強化魔術をかけた体の上からでも入るほどの確実なダメージが入る。

 

 

 内臓にダメージが入ったのか、口の中に血の味がする。

 それを唾ごと掃き出し、目の前の上級悪魔に標的を定める。



魔力弩砲バリスタ

 後ろ上に術式が縦向きに展開される。

 世にも珍しい無属性の魔術だ。


 

「は?なんだそりゃ……」

 そりゃ驚く。本来は横向きで攻撃対象を向いているものだ。

 今俺の展開した術式は縦向き。攻撃方向は下か上にしかなく、敵の上に展開しない場合には理解ができない術式だろう。



「面白いだろ?」

 中に生成した槍が弩のように飛ぶ。 

 術式によってより強化された、地球のバリスタを超える圧倒的速度を持つ一撃。



 本来は反応すら難しい一撃。

 


 のはずなのだが、やつは全力で回避する。

 まだ俺は常識にとらわれているようだ。


 圧倒的速度でそのまま石畳を貫通する。



「火炎槍!」「指令弾バーン!」

 目の前に中魔術を展開し、左の掌の上に魔力弾を複数生成する。


 しかしその攻撃術式を破壊するべく、ヒューマノイドは全力で殴りにかかってくる。

 そこまでは読んでいる。術式を破壊するように、ヒューマノイドに向けて指令弾を飛ばす。


 一撃自体は殆どダメージを与えれないが、相手の嫌がらせをしつつスピードを落とすこと自体は可能だ。

 ヒューマノイドの右ストレートが飛んでくる。


 しかしそれは分かっていたため、事前に余裕を持って右下に回避して懐に入りこむ。

 超至近距離ゆえ、剣による攻撃ができない。



流波掌りゅうはしょう

 剣を落とし、集中強化魔術によって左腕に魔力を集中させ攻撃する。

 拳ではなく掌で、全力で腹に向けて一撃を叩きこむ。


 叩き込んだ瞬間に敵に魔力を入れ、更に掌から魔力を放出させる。


 

 人間に擬態しているせいなのか、思ったより効果があったのか、俺の一撃によって後ろに吹っ飛ぶ。



 そして完全に狙いの位置に飛んでいった。

 ヒューマノイドが先ほど避けた、バリスタの矢が刺さった上に乗る。



意味を与えるばくは!」

 その矢を爆破させる。

 石畳を貫通し地面に刺さっているため、爆破の威力は全て上にゆき敵を貫く槍となる。


 そしてその槍は偶然ヒューマノイドの心臓部分を貫いた。





「……え?もう終わり?」

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