冒険者になろう/1
いつもより狭いベッドによって睡眠が浅かったのか、それとも夜に行った運動によって目覚めが良かったかは不明だが今日は早く起きれた。
カーテンを開ける。いつもより少し早い日光が部屋を照らす。
「ん……ん・・・。」
光を当てられたことによって目が覚めたのか、一緒に寝ていた全裸のアリシャが起きていた。
「おはよう……。」
「おはようアリシャ。今日という日を祝福してくれるかの如く素晴らしき朝日だ。」
「朝から気力が凄い……。」
「そういうアリシャはいつも通りのやる気だな。」
「体を交えたところで何かが変わるわけでもないし……。」
「気分は変わる。俺は今最高にハイでとても嬉しい気分だ。」
「それは良かった……。」
その後俺たちは1日中遊んだ。
契りの描写もデートの描写も特に需要はなさそうなので割愛となる。
~翌日の昼~
魔術学校の授業終了後、俺は愛しのアリシャとは一緒には帰らずに別々に帰ることにした。
別に愛想が尽きたわけでもないし、愛想を尽かされたわけではない。
そう!俺は帰宅せずにそのまま全力で冒険者組合に向かっているのである。
先日、アリシャと夜の運動をしたことによって更に1つ俺の目標ができた。
それはアリシャと同じ地位になること。
俺は田舎の領主(下級貴族と同じ位ではあるが、一般的には下に見られている)の3女であり、アリシャは没落間際とはいえ下級貴族の長女。
アリシャはそこそこ名誉のある一級冒険者。俺は特にそういう肩書は無い。
一応は流水の魔術師と、その娘の弟子ではあるがそれは俺の実力ではない。
もちろんこの世すべての地位が実力で成っているというわけでは無いが、運でなったような物はこういう場面ではカウント外だろう。
特に没落間際の貴族であるため、アリシャも結婚に関してはかなり慎重にならないといけないはずだ。
それなのに成長に期待!程度の俺と恋仲となってくれた。
ならば没落を覆せるほどの何かを俺がすればよい。
そもそもこの世界の貴族に置ける没落貴族とは何かからだ。
前にメリッサさんに聞いた通り、この世界の貴族=戦力だ。
故に長女や才能のある長男は魔術の練習をし、家を継いでいかなければならない(女性の方が魔術師に向いているため、長女なら即跡継ぎ決定。長男の場合は才能があれば男が家を継ぐ)。
そして家を継がない子供たちはある程度自由な生活を約束されているが、逆に家を継ぐ子供の将来はよくも悪くも確定してしまっているのだ。
しかしアリシャの母、パロミネンス・ガレッドは一人子でありながら研究者の道へと進んでしまった。
故に魔術師としては3流レベルで、パロミネンスの母も早くに亡くなってしまっているために他の子供もいない(故にパロミネンスは好き勝手できてしまったのだろう)。
下級貴族は魔術学校を卒業して、自分が優秀な魔術師であるという証明をする必要がある。
ただし手っ取り早く分かりやすく、更に安い(下級貴族はタダで通える)ために魔術学校を卒業することが推奨されているだけであって、他の方法で自らが優秀だと証明さえできれば研究者に道に進んでも問題は無い。
ただしリスキーだ。結果を出せなければそのまま支援を打ち切られてしまうかもしれない。
実際にパロミネンスは結果を出せなかった。
魔法の理論構築自体は殆ど正解に近いが、そもそも魔法が無い世界では”正解である”と言うことを証明できない。
だからと言って第三者からして間違っていた、と断言はできない。
魔術の衰退によって魔法の研究が盛んであった地球では、魔法使いは多くはないが少なくない数はいた。
これは地球が魔法使いを産みやすい環境にあったことは違いないが、それこみでも魔法使いの研究をしたからこそ。魔法使いが生まれる理由を、魔法という概念を追ったからこそできた努力の結晶なのだ。
ちなみに魔法使いとは、たまーーーーーーーーーーーーーに空中にできる割れ目。通称[真理の扉]に触れることによって”魂の消費”を引き換えに
この世界は魔素の濃度が高い上に安定しているため、真理の扉はそもそも出にくいのだろう。
色々と不安定だった地球ですら1年に1,2個ペースでしか発見できなく、しかも失敗して廃人になる可能性も高かったわけだ。
今後この世界で魔法使いが生まれる確率はゼロと言っても過言ではないぐらいには低い。
しかし、これはあくまで自然に生まれる可能性だ。
もし魔法の研究によって、真理の扉を探したり。もしかしたら作ることだってできるかもしれない。
長女でありながら先の見えない研究者の道に進んだ彼女はリスキーな行為であり、子孫のことを考えない無謀な行動に見える。
しかし外から見たらそう見えるだけで、もしかしたら何かが起きていたのかもしれない。
例えば脅されたとか、他国のスパイによって騙されたとか、理由はいくらでもある。
まあそれはさておいて、そういうわけで下級貴族としての支援が最低限しかもらえていない状態。それが今のガレッド家であり没落寸前の貴族だ。
もしアリシャがそれを覆すような魔術師へとなれなければ、そのまま没落してガレッド家は貴族では無くなるだう。
そういうわけで、アリシャは冒険者になったりして実力を上げているらしい。
「よく考えるとアリシャって強いし、そのままでも没落貴族化は回避できそうだな。」
普通に俺の出る幕が無い。
まああれだ、彼氏(女)としてアリシャを傍から支えれば問題ないと思う。そうだろう。
そうやって軽く思考を回しながら歩いて数分。
アメリカの西部劇に出てきそうな、アウトローが酒を飲んで喧嘩をしていそうな酒場の前まで来た。
冒険者組合。俺はここで冒険者となって名声と地位を得るために頑張らないといけないのだ。
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