冒険者見習い
新章の初めはキャラ解説が相場と決まっているのだね。
「ああ、もう2年生か。時の流れは不思議だね。」
そうやってため息をつきながら歩いているのはリーシェ・シャーレイこと俺。
銀と白の中間のような長い髪を雑にまとめたポニーテイルが特徴で、ようやく身長140センチ代に突入した小柄な少女。
鍛えているのにも関わらず見た目に筋肉質にならないのが今の悩み。
元地球出身の元魔術師で転生者だ。
性別が変わっていたり、記憶が無かったりと色々苦労しているが魔術学校に通いつつ”最強の魔術師”を目指したり、前世について考察をしている。
「お前は転入生だからそこまで不思議でもねーよ。」
そう突っ込みを入れるのはカノン・キーダ。
身長170後半ぐらい。顔自体は整っているのだが雑に切られた短髪に悪い目つきのせいでいまいちイケメンとは言えないのが残念。
俺の数少ない友達であり、同じく転生者。
頭の回転が速く知識も深いし地味に気が利くし元オタクということで話や乗りの合うやつだ。
「充実してたからそう思えるのよ。」
そう言うのはアリシャ・ガレッド。
綺麗な栗色の髪をおさげでたらし、この世界では珍しい黒い瞳が特徴の少女。
よく言えばクール。悪く言えば不愛想で感情が表情に出にくいが、慣れれば普通にどんな感情かは分かりやすい。
俺の恋仲の関係であり、俺の中身が男だと分かってもドン引きをせずに受け止めてくれた最高の彼女だ。
俺たちは魔術学校へと向かっている。
アリシャと2人で登校していたら運悪くカノンと遭遇してしまい、1人で投稿しているこいつを放置していくのも悪いことをした気がするしで仕方なく3人で投稿している。
とはいえ、どの道人の多いところではラブラブするわけにもいかないしあまり変わりは無い。
むしろ数少ない俺の友人で同じ転生者だ。話も合うし普通にこの3人で投稿してもよいと思う。
しかし男と投稿を待ち合わせするのってなんか嫌だなぁ……という理由でいまいち誘いきれない。
「そういえばリーシュ。今日って新入学生歓迎会で私達模擬戦するらしいんだけど、ちゃんと対策考えてきてる?」
「いや待て。その話俺は一切聞いていないぞ。」
「あの学園長のことだ。どうせ伝え忘れていたとかだろ。」
「一応この学園の最高責任者だぞ。それでいいのかよ。」
「戦いは唐突に始まります。故にあえて伝えなかったのです!って感じでごまかしそうだな。」
「リーシェ大丈夫……?私結構対策考えてきたけど。」
「は!大丈夫だ!何故なら俺にはこれがあるからな。」
そうして掲げるはつい先日にようやく完成した、異世界版刀だ。
「何それ……?」
アリシャは分からないだろうな。
「それはまさか刀か!」
同じ転生者であるカノンはすぐさま気がついた。
「正確に言うと刀もどき。刀を強引に再現したって言う剣だな」
ミスリルという魔力を通しやすい素材を使うことにより切れ味を”刀に魔力を流し込んだ時”並みに強引にしたというごり押しの方法だ。」
結局学園長に伝えた刀の作り方では素材を用意できなかったために再現はできなかったが、それっぽい感じの形と性能にはしてもらった。
「名付けて……」
名前が思い浮かばない。
「なんかそれっぽい名刀の名前を真似すればいいんじゃないか?」
「愛剣蘭蘭とかいいんじゃない?」
「パクリはやだし、愛剣蘭蘭は可愛すぎるかなぁ」
「死前悪伐無窮の刀・幻!」
「ダサい。」
「流石にそれはやめた方がいいと思うよ……」
「そうですか……」
かっこいいと思ったんだけどなぁ。
「悪魔殺し・螺旋!」
「螺旋要素はどこから来たんだよ!」
「魔状系刀早無羅威御前。」
「長すぎると思う……もっと単純な名前の方がいいし。」
「黒龍刀・凪破殺」
「変な人間が凝ったことをしたら大変になるんだから、単純すぎるぐらいでいいんだよ。」
「爆炎刀!」
「燃えるの?」
「燃えない。」
しかし俺はネーミングセンスが無いようだ。
こっそりつけていた溶けてしまった昔の愛剣[白王剣・
そんな衝撃の事実に軽くショックを受けながらも、とりあえず名前は保留にして楽しく会話をしていると5メートルほど前を歩いていた少女が後ろを向き、直後いきなり止まった。
可愛らしい見た目に綺麗な黒髪のポニーテイル。
身長は150センチちょっとぐらいか、胸は平べったい。
こちらを見て驚いたような顔をしている。となると暗殺とかではないか?。
ここで攻撃が来る場合はまさかのエンカウントで無我夢中でって感じだが、5メートルで相手のことを気がついているなら反応も可能だ。
念のために常時展開している不意打ちや暗殺対策の一時的な防御魔具に、魔力を流してより防御能力を強化しておこう。
するとその少女はこちらにかけよって、目を見開いて衝撃を受けたような顔をした。
「あの……間違っていたら申し訳ないんですが!」
「ももももしかして、あなたリーシェ様ですか!」
「はえ?」
様付け?完全に予想外の方向の質問が来た。
完全に予想外の台詞だった。
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