四重魔術(カルテット)



 魔女。この世界における魔女とはその国でのこと。

 

 正確には最もその名が広く、恐ろしい意味で伝わっている人物のこと。

 

 正式に決められているわけでは無いが、自然と国には最強と言うにふさわしい魔術師が一人だけいる。


 女性の方が魔術師に向いているのと、男性は魔術の適正があった場合に魔術剣士を目指しやすいために強力な魔術師は女性が殆ど。


 故に魔女と言われている。




 バウンドに置いては、光の一族を除く一番強い魔術師のことを指している。


 五十四年前に起きたロックとの戦争にてたった一人で戦況を変え。たった一人で大量の兵士を殺し、戦争を終結へと導いた者がいた。


 その者には流水の二つ名が与えられ、前代の氷結の魔術師の死後にバウンドの魔女として扱われるようになった。




「魔女という名はあまり好きではありませんがいいでしょう。」

「バウント最強の魔術師があなたを全力で殺しに行ってあげます。」

 

 リレートが魔力を杖に集中させる。

 

「流水の魔術師は平和主義だと聞いたのだがな。中々物騒なやつだ。」

 集中力を乱すためなのか。ガロンがリレートに対して挑発をする。


「もちろん平和主義ですよ。できれば人を殺したくない。」

「けれどそうやって日和ひよってしまい、大事な人を亡くしました。」

「だから殺す相手は絶対に殺す。殺させない仲間は絶対に殺させない。これを信条にしています時間稼ぎ終了。」


 直後人の形をした巨大な水が動きだす。

 ガロンに向けて殴りかかる。


「魔力を溜めるために隙があるとは!実戦的ではないなぁ!」

 純粋な質量の暴力。並の騎士ならば一撃で死亡するほどに魔力の込められた一撃。



「鎧拳!」

 ガロンの鎧の腹の辺りから、大きさ3メートル近くの拳が飛び出てくる。


 拳と拳が衝突する。威力は互角。しかし重さの関係でガロンはそのまま後ろに飛ばされる。


「夢のような現実の話をあなたに聞かせる。遠い世界にいるあなたに届かせる歌」

「速く有れ」


 直後人の形をした巨大な水を表面が薄蒼色に発光する。

 表面に術式が展開される。



「極大魔術か!」

 極大魔術と予想したガロンは一気に接近する。


「ハァッ!」

 下から上に爪を切り上げる。伸びた鎧は人の形をした巨大な水を切り裂き、表面に展開されていた術式を破壊する。


 

「甘い!」

 破壊した。しかし切った場所がく


「なんだそりゃ!」

 


 紋章魔術の術式は遠くに出せ、素早く描ける点からも魔力によって描くのが主である。

 しかし魔力で生み出した術式は結晶のような状態となり、簡単に破壊されてしまう。

 術式は攻撃を貰った場所から連鎖的に崩壊してしまう。


 ただしあくまで、魔力によって術式を展開した場合にのみこの状態は発現する。



 もし操作可能な水で術式を展開し、攻撃された部分をすぐに再生することが可能ならば。

 それはという凶悪な術式へと変わるだろう。



「水で術式を形成してるのか!」


「もう遅いです。音よりはやく届く歌カルテット・ソング

 

 人型の水の口の部分。そこから水の弾が発射される。


 単純な一撃。圧倒的魔力を込めた弾を圧倒的速度で撃ちだす。ただそれだけの一撃。

 その攻撃は音がガロンに到達する前に、ガロンに直撃する。



「曰く音より速い、音速を超える一撃」


 その一撃はガロンへの攻撃だけでは留まらず、休憩所の壁に直撃し破壊する。


「相手の実力を見誤りましたか。次の準備をする必要はありませんでしたね。」

 一撃で魔術により強化された城壁すら破壊する一撃だ。直撃して生き残れるのは上級悪魔ぐらいだろう。



「急がなければ!水足!」

 水を床に展開し、同時に水を足にも付与する。


 水の上を滑るように移動する高速移動術により、リーシェとリトルデビルの向かった先へ急いで移動する。




 急いで部屋の中を確認する。

 中には血まみれで倒れているリーシェの姿があった。


「嘘……でしょ……。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る