魔術のレクチャー
「お前は魔術の基礎の基礎しか分かっていないようだし、対アリシャを考える前に軽く魔術についての指導をするぞ。」
「お願いします。」
俺はどうやらこの世界の魔術について色々勘違いしているらしい。前世の色々な知識を元に考えていた故、そこで思い違いがあるっぽい。
なのでカノンが1から教えてくれるそうだ。
「魔術というのは術式に通すことによって、魔力を数倍に増幅させた術として発動する。故に術式は大きい方が効果があるし、小さい方が効果が薄くなる。」
「紋章魔術の場合はつぎ込む魔力の量によって魔術の強さは変わらなく、術式の大きさによって威力が変わる。」
「ただし防御魔術はつぎ込んだ魔力だけ威力が上がる。けれど効率は悪いからあえて術式を小さくして魔力をつぎ込んで硬くする!というのは殆ど使われない。」
「そして紋章魔術は術式の大きさによって、4種類に分けられる」
「大きさを変えれば種類が変わるって感じか?」
「いや違う。紋章魔術には術式の種類以前として、大きく分けて2種類の魔術に分けられる。」
「一つは汎用魔術。本とかに乗っていて、学べば誰でも使えるようになる魔術だな。」
「一つは血統魔術。家に代々伝わる魔術であり、その血筋以外の人間は基本的に使用できない。」
「その汎用魔術には教本に乗っている術式があるのだが。」
「なるほど。元の術式の大きさによって種類が分けられている、って感じか。」
「まあそういうことだけど、人がしゃべってるんだから気持ちよく解説させろ。」
「まずは小魔術。」
そういうとカノンはバスケットボールぐらいの大きさの魔術陣を展開した。
「一番規模の小さい魔術。これ以上小さくすることも可能だが、小さくするとそれ並みに威力が下がるし小さくすればするほど術式展開が難しくなる。」
「
彼がそういうと、先ほど展開した魔術陣から球状の火炎が飛び出し的へ直撃する。
「魔術のぶつけ合いでは威力は足りないが、直撃すれば簡単に人を殺すことができる。」
「慣れれば発動は一瞬なわけで、数発連続して当てれば
威力は大体俺の火炎の槍ぐらいか。
「小魔術ならば再現も容易だと思う。とりあえずこれを再現してみてくれ。」
そういうと彼の前に魔術陣が現れる。
「ちなみに紋章魔術ってのは。術式を
「故にこのように魔術陣を描く、所謂術式展開だな。術式展開をしただけで魔力を通さなければ魔術は発動しない。」
「ってことでやってみろ。」
火炎球は小魔術らしく、単純な構造らしい。今まで魔術陣を描いたことの無かった俺でもできそうだ。
というよりできた。
「おお、早いな。」
「まあ目の前に手本があったからな。」
「あとはこの魔術を何回も練習して、とっさに出せるようにすれば習得したと言えるだろう。」
「次は中魔術。」
そういうとカノンは大体1レーンぐらいの大きさの魔術陣を展開した。
「小魔術の次の魔術。威力も高く展開も2秒ぐらいでできるから、多くの魔術はこれを中心にして戦っているな。」
「アリシャもそうだが、中魔術を中心として小魔術でサポート。隙を作って大魔術で止め!って言う戦い方が、汎用魔術の基本的な戦い方となっている。」
「
そういうと術式から勢いよく火炎でできた槍が飛び出し、的を貫いた。
性能だけで見れば俺の火炎の槍の上位互換だ。
「まあこんな感じだな。かなり強い。」
展開までの時間が短く牽制にもつかえて便利そうだが、小魔術より術式がややこしくなっている。俺でも手本無し即再現は厳しいか。
「そして大魔術。」
そういうと2メートルもあろうかという、大きな魔術陣が展開された。
「多くの魔術師が止めとかに使う奴だな。術式が大きい分威力も半端ないが、その分展開に時間がかかる。そこそこ有名な魔術師の切り札にもなるぐらいには強い」」
「ちなみにこの世界の長さの単位は、この術式の大きさを元に作られたと言われているぜ。」
「火炎砲」
直後術式から、高出力の熱線が飛び出す。術式の大きさに比例して巨大になった攻撃。
「うわー。こんなん喰らったら即死だわ。」
「とはいえ展開には時間があるわけだからな。そうやすやすと喰らうようなことにはならない。」
「そして最後は極大魔術なんだが……」
「なんだが?」
「俺には使えない。」
「使えないのかよ。」
「複数の術式が精密に絡み合った術式で。そもそも術式展開をできるような魔術師すら貴重なほどの魔術だな。」
「展開には時間がかかるし、魔力消費がえぐいから基本的に戦闘では使われない。もし一般的な魔術師が仕えたとしても2発目は撃てない。それぐらいに魔力消費が凄いらしい。」
「主に戦争で不意打ちしたり、ダンジョンで巨大モンスターを倒すときに使われる感じだな。」
「そういえばダンジョンとか。モンスターとか言う言葉は存在するんだな。」
「不思議だろ?何故かダンジョンとかモンスターとか言う言葉は伝わっているらしい。」
「起源とかってわからないのかね?」
「特に無い。俺も気になって文献とかを漁ってみたが詳しくは無い。昔から使われていたとはあるが昔というのも具体的なのは無い。」
「流石に情報無さすぎないか?いくらなんでも不自然なほどに伝わってない。」
「まあつまりそういうことだ。詳しく調べると明日の日の出を見れないかもしれないぞ。俺も調べすぎて王様に怒られた。」
「つまりそういうことだな。」
「次は汎用魔術の属性だ。」
「汎用魔術には攻撃術式に加え、回復、防御、などのような補助魔術もある。回復魔術は今からお前が覚えるのは無理だし、アリシャはお前の戦闘方法的に恐らくは使わない。」
「ということで攻撃魔術の属性についてだ。」
そういうと彼はまたもや小魔術規模の魔術陣を生み出した。
「よく考えたら術式作る意味なかったな。これは火魔術、最も人気の高く術式も多い術だ。」
「かっこいいからな。」
「まあそうだな。単純にかっこいいし、速さもそこそこあって威力も高い。」
「けれど短所だってある。まず二次被害が起こりやすい。」
「まあ炎ですしね。」
「特に森なんかで使うとやばいし、狭い場所で発動するとこっちまで燃える。」
「小魔術、中魔術だと当たったあとに周りにも被害が出る。これは長所でもあるが短所もでもあるな。」
「次は風魔術、こっちもそこそこ人気の魔術だ。」
「まあかっこいいしな。」
「いや、かっこよさ人気はあんまりない。」
「なんでだよ!風ってかっこいいじゃん!」
「風魔術中心に戦ってる有名な魔術師が殆どいないんだよ。」
「あーね。つまり所謂マイナー寄りのやつ。」
「別にマイナーってわけじゃない。むしろ使用率で言えばほとんどの魔術師が使ってるし有名な魔術だろう。」
「じゃあなんでかっこよさ人気は無いんだ?」
「補助魔術が人気なんだよな。」
「そら人気出にくいですわ。」
「風魔術は全体的に威力が低い。しかも攻撃術式は威力が低いぐらいでしか長所が無く、意表をつけるぐらいだ。」
「凄い魔術になったら台風みたいなこともできそうだけどな。」
「ちょうどいいぞ。アリシャがそんな術式を使う。」
「勘弁してほしい。」
「だからと言って風魔術が弱いわけではなく、お前が弓矢に付与したように風魔術は何かと合わせることで力を発揮する魔術なんだ。」
そういうとカノンは足に術式を直接展開した。
「これが
「軽魔術師?」
「機動力を重視する魔術師の総称だな。逆に魔術で陣地を作り、あえて動かなくして高打点の魔術を使う。重魔術師という戦法も存在する。」
「人気も普通に高いがかっこよさ人気は無い。そんな若干不遇気味だが真の不遇とは程遠い魔術だ。」
「そしてここからが不遇属性。」
「まだ半分しか紹介終わってない気がするんだが。」
「水属性。水を生み出す魔術を作れる。」
「なんだっけ。一点に出力を集中して高速で出せば恐ろしい切れ味になる!って知識はあるんだが。」
「それをやるなら炎でも代用ができる。全体的に威力は悪くないが速度が足りなく燃費も悪い。」
「炎相手に対して強いとか?」
「そもそも魔術同士の撃ち合いということは少ない。あくまで牽制の撃ち合いならばあるがそこで勝っても意味が無い。」
「まあとはいえ、流水の魔術師のように主戦力として使う二つ名持ちがいるだけましではあるな。」
「土属性。こっちは割と性能は悪くないがあまり使われていない。」
「まあ土属性は噛ませになるってよくあるしな。」
「まあ割と近い理由で人気が無いな。単純にかっこよくない。」
「ひっでぇ……。」
「実際かっこよさは重要だ。戦争とかで目立てばその分報酬が増えるかもしれないし、強い敵が相手からぶつかってくるかもしれない。」
「まあそこまで考えてるやつはほぼいないだろうがな。」
「土属性は物理的な攻撃ができる。って言う長所がある。」
「水は?水じゃダメなのか?」
「水も悪くはないんだが。土より威力が無く炎より遅い。って言う中途半端な印象があるせいで採用されにくい。」
「土より威力は無いが土より早くて燃費もよい。炎より遅いが炎より重い。実際はこうなんだけどな。」
「土属性は物理的な攻撃ができる。故にガードをされてもある程度は無視してそのまま攻撃ができる。」
「ただし燃費が超悪いし、中魔術以降は地面に隣接していないと魔術が使えない。」
「そういえば気になってたんだが、土魔術って土や岩を生み出してるのか?それとも操作しているだけなのか?」
せっかくなので昔から地味に気になっていたことを聞く。
「それは術次第だな。小魔術の岩弾ぐらいならば魔力で生成してる。けど一定時間経つと消えるから建築と蟹は使えない。」
「中魔術以降は殆どが操作だな、普通に建築とかでも使えるし。」
「以上が魔術の基礎だ。ちなみにアリシャは4種類の魔術を幅広く使うから注意な。」
こうして俺への魔術の基礎講座は終了した。
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