黒粉王・前
「やあやあそこの君。ご機嫌はいかがかな?」
「いきなりどうした転入生。」
「私のことを転入生を知ってるとは、なかなかに情報網の広い人ですな。」
「いや普通に同じ教室だったぞ。」
……まあ1クラス20人ぐらいなんで、一発で顔覚えるとか無理なわけでして。
「それで噂の転入生殿は俺に何の御用でしょうか?」
「せっかく魔術学校に入学したのですから、この大量にある本で見聞を広めようかと思いました。そうしたら偶然……えーっと?」
「カノンだ。カノン・キーダ。」
「リーシェ・シャーレイです。よろしくね。」
「よろしくと言われるような関係になったつもりはないが。」
「まあそれで用事というのはですね。」
「転入してきたはいいけど周りに警戒されて友好関係を築けなく、仕方なくここに来たら偶然独りぼっちで本を読んでいる根暗野郎がいたからこいつで妥協しよう。って感じかな。」
ばれてる。俺ってほんと顔に出やすいタイプなのか。
「最後の妥協しようって辺り以外は正解ですね。私は暗いとかで人を判断したりはしませんから。」
「ということで友人になってください。」
「友人になってくださいって言う言葉初めて聞いたわ。」
「まあ告白の時に友達から始めましょう。みたいなこと以外では使いませんからね。」
「まあ友人になる気は無いがな。」
「何故に!?」
「俺に利点が無い。」
「友人というのは素晴らしいものですよ。」
「まあそうだけどな。お前とはなる気は無い。」
「今友人になると!なんとこの私こと美少女を間近で眺めることが可能となります!」
「お生憎様心に決めた相手がいるんでな。それに胸が小さいやつは好みじゃない。」
「まあ確かにペッタンコですけど?そもそも14歳なんで成長途中と言いますか?母はかなり大きいので将来に期待大と言いますか?」
「落ちつけ。早口すぎて聞き取れない。」
全く失礼なやつだ。
「情けは人の為ならずという言葉もあるように、あなたも私を助けると思ってどうです?」
「まあそうだな。流石にお前が可哀相だし少しだけ試してやるよ。」
そういうとカノンは立ち上がって本棚に近づく。
「こう見えて俺は優秀でな。」
「そうは見えませんが。」
「だからこう見えてと言っただろう。昔は俺のお零れに
「うわー。絶対友達になりたくないタイプ。」
「じゃあ友人になるのはやめるか?」
「なりたくないのは友達なので、友人じゃないので問題ありません。」
そんなやり取りをしていると、カノンは悩んだ末に本棚から本を一冊取り出した。
「この本は黒粉王と言ってな。この国で一番有名なお伽噺であり、主に女子に大人気のお伽噺だ。」
師匠のうんちくオタトークで聞いたところだ。
「えーっと。確か毒の魔術をかけられた姫を王が接吻で起こした。って言う物語でしたっけ?」
「そうだな。この物語では他の者の解毒の魔術をしたが効かなく、王の接吻で起きるというとんでも物語だ。」
「これの王の接吻で何故起きたか。と言う個人的解釈を答えろ。その答え次第で友人になってやろう。」
えーっと。確か師匠の意見を俺なりにアレンジして。
「体内で毒を発生させる魔術を形成していた。解毒魔術は解毒に成功していたが術式自体は破壊できないから少しづつ姫の体を蝕んでいった。黒粉王の接吻は接吻をすることによって体内の状況を確認し、魔力を流し体内の術式を破壊した。私の考えはこんな感じですね。」
まあ師匠は解毒しても治らないから魔力を流して強引に起こすだったから、体内って部分はパクったけど問題ないだろう。
するとカノンはため息をついて本を元の位置に戻した。
「第2問」
第一問だけじゃないのかよ。
「魔法についての個人的見解を答えなさい。」
魔法。魔術は術式を展開することによって、血統魔術以外ならば誰にでも再現できる。
しかし魔法は限られた人物でしか使えない。旧文明の時にあったと言われる存在。
『魔法は理解すればだれでも使える。魔法を理解するのは誰もができない。』
この一文が旧文明から伝わっている。
実際にあるかどうかは不明だが、昔は魔法の解明を目標としていた魔術師も多かったらしい。
「というのが魔法だ。マジで知らなかったのかよ。」
カノン殿に魔法の説明をしてもらった。いやぁ、ありがたい。
けれどどこか引っかかる……何か頭の奥で引っかかってる。
まあ分からないならそこまで問題ないだろう。
「その魔法についてお前の見解を答えろ。」
「え、今魔法について知ったばかりなんですが。」
「そういうとっさの判断が実際の戦闘にでも必要なんだよ。実際の戦闘では文句なんて言えないぞ?」
なんと理不尽だ。
「魔法……魔法かぁ……」
魔法。確かに魔術に似た言葉ではある。けれど
「魔法は魔術とは関係ない。魔法を見た人が魔法を再現しようとしたもの。それが魔術である。」
さらりとでたまるで。まるで答えを知っているかのように自然と言葉となった。。俺にはこういう才能があるのかもしれない。
「ふーん、パロミネンス・ガレッドと同じ答えか」
「誰なんですかそれ?」
「今落ち目の下級貴族だよ。魔法の解釈でお前と同じことを言って魔法研究界を騒がしたがそれだけで、その後子供を産んで魔術研究者を引退するまで研究をして結果を残せなかった人さ。」
「割と簡単に出ましたけどね。」
「まあお前がこの世界の理から外れた存在だからな。そういう意味ではパロミネンスは天才だったのかもしれない。」
「まあ才能があっても成功するとは限らな……え?」
「私がまるで化物かのようなことを言うなんて。女性に対して失礼だとは思いませんか?」
「女性扱いするならもうちょっと女性らしい言動と体をしろ。」
まあそりゃ身長140センチの少女ですけどさっきからほんとにこいつ失礼だな。
「まあ別に女性扱いしてほしいわけじゃないですけどね!」
「まあいいや。疲れたし俺帰るから。」
「え?!ちょっと、結果は?せめて結果だけでも!」
「今後友人関係でいたいならもうちょっと言葉に気を付けろよ。」
「もうちょっと女性っぽくしろと?」
「ちげーよ。この世界に”情けは人のためにならず”なんてことわざは存在しねーんだよ。」
「え?」
いやちょっと待て。確かに無いかもしれないが……何でこいつそれに気がつくんだ?。
「あと無視してたけどたまに英語出てるから気を付けろ。」
「え?ちょっと待ってちょっと待ってお前なんなん?」
「ただお前と同じ出身地なだけだよ。」
そういって奴は俺の問いかけにそれ以上答えずに帰っていった。
まさか偶然話しかけたやつが同じ転生者?っぽいとは思わなかった。
まあ可能性的には知り合いが転生者で俺がその言葉を使っていたから【同じ出身地】って言っただけかもだが、英語って言ったしやっぱあいつ転生者だよな。
あまりの急展開に脳がついていけなく、本を読む気分ではなかったのでそのまま帰ることにした。
まだ昼時。軽く飯でも食って帰るかなどとのんきな話をしていると前から女性が俺目がけて歩いてきた。
綺麗な栗色の髪のロングヘア。この世界ではそこそこ珍しい黒い瞳をしておりだるそうなジト眼で無表情。よく言えばクール、悪く言えば不愛想。
胸も控えめだがそこそこ大きい。
ふと自分の胸に目を落とすと真平らだ。まあ戦闘になるなら胸は小さい方がいいし防具に金もかからないしで別に悔しくはな・・・・・・・え?今なんて思った。
悔しい?胸が小さくて?小さめなやつに胸の大きさで負けて?。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
肉体に精神が引っ張られている。落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け。
「えーっと。大丈夫かな?」
頭を柱にぶつけて落ち着こうとしていると、先ほどこっちに接近してきた女性が心配そう……ってよりはドン引きしながらこちらを見ている。
「割と大丈夫じゃないからこのまま帰らせてくれ。」
面倒事には巻き込まれたくない。
「帰らせるから私のお願いを聞いてくれない?」
まあこうなると。
「内容次第です。」
「私と模擬戦をしてほしい。」
「なるほど。調子に乗った転入生をぼこぼこにして人気を集めると。」
「いえいえそういうわけでは無い。単純にあなたと戦ってみたい。」
軽く動揺を誘う系の冗談を言ってみたが無表情は崩さない。さっきのドン引き的に完全に表情が死んでいるってわけではなさそうか。
「ただこれほどまでに期待されている。あなたの魔術が見たい。ただそれだけ。」
中々に積極的な子だ。
「つまり私の魔術を見たい戦ってみたい分析してみたい。そんな感じですかな?」
「そんな感じ。ということでよろしく。」
「待て待て待て!まだ俺は受けるとは言っていないぞ!。」
何を言ってるんだこの娘は。
「素が出たね、変にとりつくろうとするより素の方がずっといいよ。」
「そりゃどーも。でも受けないんでそこんところよろしく。」
「受けてくれないとあなたが可愛い子ぶる淫乱尻軽野郎だと言いふらす。」
何と恐ろしいことを言うんだこいつは。
「女の子が淫乱だとか言っちゃいけません!」
「あなたも言ってるから問題ない。」
「まあそもそもだ。受けるにしてもこっちに利益が無いだろう?」
「それは大丈夫。私と戦えるというのは光栄だから。」
なんて自信過剰なやつなんだ。
「そんなドン引きした目で見ないで欲しい。今のは冗談。」
「伝わるような冗談にしてくれ。貴族って自尊心高いらしいしで本当だと思ったぞ。」
「でも実際あなたの利益にはなると思う。私との模擬戦は。」
「利益になるかもしれないが戦うことによる不利益はこちらにある。何よりそっちから仕掛けたことなんだ、少しぐらいこちらに
利益になるかもしれないが、今はまだ魔術の完成度が高く無い。まともに戦ったとしても勝ち目は薄いだろう。
「じゃあ私に勝てたら金貨1枚(大体1万円)をあげる。」
「貴族なんだからもうちょっと出してくれよ。」
「母が魔術の研究で失敗したからうちは貧乏貴族。だから凄い魔術師にならないといけない。だから戦ってほしい。」
なんと断りにくい情報を出してくるんだ。これで断れるやつがいたらそれは悪魔か何かだぞ。
「だがやはり俺に利益が少なすぎる。模擬戦なんてやろうと思えばいくらでもできるしな。」
ほんと最低な野郎だ。
そもそも受けたくない。貧乏貴族が出せる条件なんて限度があるだろうし、この模擬戦は絶対に受けない。
「じゃあ分かった。もしあなたが私に勝ったら叶えられることなら何でも言うことを聞いてあげる。これでどう?」
「何でも?」
「ええなんでも。でも叶えられる範囲で私に不利益が無い願いだけね。」
「すみません!俺に魔術を教えてください!」
翌日。そこには友人になったばかりの男に土下座をして指導を請う俺の姿があった。
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