ダンジョンに敵との出会いを求めるのは間違っているのだろうか
ダンジョン。この世界に伝わる数少ない英語であり、曰く古くから伝わる言葉。
強大な力を持つモンスターの巣のこと指す。
そのモンスターを頂点とした食物連鎖のピラミットが形成されており、ダンジョンの中には地上では見られないような強力なモンスターが多数存在している。
殆どの冒険者はダンジョンに生息しているモンスターを倒し、素材や魔石を売ることによって生計を立てているらしい。
「ダンジョンを破壊しに行きますよ!」
そういって朝からテンションの高い学園長が宿屋に来た。
ダンジョンを攻略しにいくの間違いではないだろうか?。
「ダンジョンを破壊ですか?」
「ダンジョンを破壊です!」
意味が分からない
「攻略じゃなくて破壊なんですか?」
「はい破壊ですね。詳しくは行きながら解説しますのでとりあえず行きましょう。割と急ぎです。」
ダンジョンは巨大モンスターと言われる、所謂ボス枠を倒すことによって崩壊が始まる。
ただし崩壊はすぐ始まらなく、あくまでゆっくりと壊れていくだけなので倒しても余裕はある。
しかしその素材を高く売れる点や、ダンジョン攻略で生計を立てている冒険者の多さから”組合の許可なく巨大モンスターは倒さない”というのが冒険者のルールとなっている。
余談だが、巨大モンスターと言ってもすべてが巨大というわけでは無い。
あくまで最初に発見されたやつが大きかっただけだ。まあよくある話ではあるな。
そういうことでよくわからないまま、安めの剣を買って馬車に乗りシュトロハイドを出発した。
「ダンジョンを破壊するんですか?」
「そうですね。ダンジョンを破壊するんです。」
学園長は徹夜でテンションが無駄に上がっていたようで、今は落ち着いている。
「ダンジョンを破壊するのはとても楽しみです。」
徹夜だけが理由ではないようだ。
「今回行くダンジョンは半年前ほどにできた、小さい実入りの少ないダンジョンですね」
「遠いために初心者向けでもありません。そのために攻略する人が殆どいないダンジョンです」
「ですが残しておくと付近の生態系に悪影響を起こし、最悪の場合はダンジョンから溢れたモンスターが付近の村を襲う可能性があります。」
「故にそのような利益の薄いダンジョンボスは、ある程度実力のある冒険者に依頼が来て巨大モンスターを倒して壊すことがたまーにありますね。」
まあ遠いわりに不味いようなダンジョンは誰も来ないわな。
って、あれ?
「学園長って冒険者なんですか?」
「あー、説明してませんでしたっけ?」
「今回は都合の良い強い冒険者はいなかったんで、組合(ギルドのようなもの)の長の知り合いだった私に依頼が回ってきたってことですね。」
「壊されるわけで、ダンジョン攻略には誰もいませんし行ってはいけません。露出癖があるならここで発散しておくのもありですよ?」
この世界は下ネタをたまに入れるのがデフォなのか。
「自分はしませんが、露出というのは誰かに見られる高揚感を求めるものなのではないでしょうか?」
「なのでもしも露出癖があったとしても、見られる対象はモンスターぐらいしかいないので自分はしないですね。」
「リーシェちゃん……人の趣味にとやかく言うのは良くないですが、逮捕されるようなことはやめてくださいね?」
「だから自分はしないって言ったじゃないですか!」
「申し訳ございません。夫から”自分は違うけど”って言う人はほぼ確実に嘘をついている、ってのを聞いたのでつい。」
なんて酷い話だ。
というかそれより、ボスを一人で倒すのか?。
「そもそも巨大モンスターって一人で倒せるようなものなんですかね?」
レイドボスとかで、複数人で叩くイメージがあるが。
「ダンジョンの規模次第ですが、今回行くような小さいダンジョンならば私一人でも余裕ですね。」
「それこそ有名なところなんかは、強い冒険者パーティーで複数で挑まないと厳しいとは聞きました。」
「全力で戦えば今回の規模でもかなり強力ですが、ダンジョンの維持にかなり力を使っているのであまり強くありません。」
何と愚かな生物なのか。
何故かダンジョンの中は不思議と明るい。しかも何故か罠も存在してもいる。
「ダンジョンは巨大モンスターの巣なので中を明るくし、通路を作って人を呼ぶ」
「巨大モンスターが巣を作れば通路は魔力によって固められ強固なものへと変わり、強力な魔力はモンスターを生み出します。」
モンスターは強力な魔力から自然発生するそうだ。前世で言う魔物に近い存在なのか?。
「罠は生まれたモンスターの中で知能の高いやつらが作っていると言われていますが、実際にそうかは不明です。」
ダンジョンは色々不思議だ。そもそも巨大モンスターは
もしかしたらダンジョンは濃厚な魔力から生まれ、その後に巨大モンスターが生まれているのかもしれないな。
ダンジョンについてのレクチャーを受けつつ、軽い魔術行使のコツを受けて約2時間、ようやくダンジョンについた。
入口は穴だ。
階段を下りてダンジョンの中に入る。階段があるというのも不思議だ。
ダンジョンは幅4メートル少しぐらいの通路が主で、たまに部屋に出てそこからまた通路に出る。という構造になっている。
地味に迷いやすいために地図を見ながら進んでいる。とりあえず3階までの道は大まかには覚えたが細かく覚えるのは一苦労だろう。
壁は魔力で強化されているために壊れにくくもし壊れてもすぐに再生される上、壊れた部分は少ししたら普通の石になってしまう。
故に研究が殆どされていないそうだ。
3分ほど進んだ辺りでゴブリン3匹と遭遇した。
身長1メートルぐらいで全緑の小鬼。強さは5級モンスター(1匹なら武器を持った素人の大人より弱い)。
武器はナイフ。油断すると危ないにしろ、ゴブリン本体はあまり強くない。
故に今の俺なら簡単に倒せる。しかし3匹いるために油断はいけない。
3匹が当時に突撃してくる。
右手で剣を構え、左指に魔力を込める。
「
左指から魔力弾が飛ばされ、突撃してきたゴブリンの一人に直撃する。致命傷にはならないにしろ倒れてこちらに攻撃するのはもう少しかかるだろう。
それを見たゴブリンが左右に分かれ飛びかかってきた。
「ハッ!」
攻撃してきたゴブリンのナイフを避けつつ、右から飛びかかってきている心臓に剣を突き刺す。
強化魔術によって切れ味の強化された剣はゴブリンの肋骨ごと心臓を貫く。
刺した剣を横から抜き、殺したゴブリンの死体を左から来たゴブリンへ投げつける。
「Gy!」
左のゴブリンの動きを止めた間に、
ようやく起き上がりかけたゴブリンに対して一閃。一撃で首を飛ばし殺害する。
人差し指に魔力を込める。
「
道中で学園長に習った
その集中を人差し指一本に、より集中させることによりより速度と威力を上げることに成功した。
ちなみに名前に深い意味は無い。
こちらに狙いを定めていたゴブリンの頭を集中弾が貫通する。
「終わりました。」
「初戦にしてはそこそこでしょうか。複数の敵との戦いも悪くはありません。」
学園長に褒められた。多数の敵との戦いは同時に攻撃されないよう、可能な限り射線を通さないという知識がある。
・・・・・・まあゲームの知識っぽいけどな。
「けれどゴブリン程度のモンスターなら、もう少し早く倒せましたし何より」
そういうと学園長は、俺が一番最初に殺したゴブリンの死体に近づく。
「モンスターの核は魔石なため、本来心臓があるであろう場所を刺しても意味がありません。」
そういって、俺が殺したはずだった生きたゴブリンの頭を杖の尖った部分で刺して殺す。
「すみません完全に油断していました。」
モンスターは魔石が核という知識は既にあった。これは完全に油断だった。
「戦いに油断は命取りです。常に過剰に警戒するぐらいがちょうど良いでしょう。」
「あまり落ち込まないでください。始めてなんですからゆっくり慣れていけばいいですよ。」
「それとそこの足元。気を付けてくださいね?」
そういうと、学園長はこちらに近づいてきた。
「水面」
そういうと術式と共に足元に水が広がる。
「ここは罠です。」
俺の近くの足場を指してそういった。
「そうなんですか?!何もわかりませんでした。」
分かりにく。というかここ戦闘中に下手したら踏んだんじゃないか?
「まあ分かりにくいです。慣れればなんとなくわかるので少しずつ慣れていきましょう。」
そういって学園長は罠があるらしい足場を杖で押す。
直後足場が崩れた。
崩れたが、学園長の張った水の足場によって俺たちは落ちなかった。
崩れた足場はすぐさま再生され、まるで何もなかったように元へ戻った。
「このようにすぐさま再生されるため、紋章術の防御術式を足場にして戻るということもできません。」
これはかなりめんどくさい。ソロで攻略している場合も予想外な場所に落とされる。
パーティーで攻略している場合は最悪だ。なんせ孤立する。
「ちなみにパーティーで攻略している場合に罠にかかって分断された場合、人数が少ない側。または明らかに戦力が乏しい側に最も近い休憩所に集合というのが鉄則ですね。」
魔術師が固まったり、シーフ(盗賊)を初めとするサポーターが固まったりした場合の対策だろう。
一見して戦力差がない場合は人数が少ない方に近い休憩所に進むと言った感じか。
そうして何回か敵を倒し、1階の休憩所の手前まで進んだ。
休憩所は1階につき1つある、モンスターが近寄りにくい部屋のことだ。
魔除けの魔具を置いているだけなため、あくまで近寄りにくい程度なために警戒を解くのはいけないらしい。
ここを曲がったら休憩所。と言う場所まできたが、そこでいきなり学園長が止まりこちらに手を向けた。
止まれ。ということだろうか。
「常に警戒を怠るな。ですよ?」
そう小声でこちらに言う。つまり休憩所にイレギュラーが発生しているということだろうか。
「そこから覗いてごらんなさい。」
そう小声で言われたため、俺は軽く覗いてみた。
そこには3人いた。正確に言えば
全身黒色一色で羽が生えていおり、顔はペストマスクを被ったような変な形。
前に見た羽とは違う。あの時の羽根は飾りのようなものだったが、今回のは本物の飛べるような鳥の羽根だった。
大きさは2メートル以上あり筋肉質。そして何より
休憩所にいたのは3人の悪魔だった。しかも確実に下級悪魔より上の存在だった。
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