魔術師アリシャの原点/■■■■との出会い
アリシャ・ガレッド。
母親は下級貴族である同時に魔法研究者でもあったが、新たなる解釈を出したのも関わらず一切結果を残せなかった人物。
私は母が大好きだ。だから没落貴族なんて言われるのは嫌だ。
「次女ならまだしも、
あいつらの言っていることは間違ってはいない。けれど腹が立つ。
ああやって挑戦もせず、安全な場所から意見を投げるような人間は大嫌いだ。
運の良いことに私には才能があった。だからあいつらを見返してやる。そのためにはやれることは何だってやる。絶対にあいつらを見返す魔術師になってやる!。
当時は5歳。あの時から約10年が経った。
私は頑張った。このまま行けばきっと名を残す魔術師になれるだろう。
名誉ある一級冒険者にもなった。同年代の
そう思っていた秋の頃。いきなり転入生がやってきた。
「この時期に転入生って、それかなり凄い人なんじゃない?」
「もし男の人だったら玉の輿になれるかもね!」
虫唾が走る。自分では大した努力をしない癖に話題には敏感で人の努力に乗ろうとする。
しかし勝手に話を聞いて勝手に怒るのは人間として駄目なので、授業が始まる前にお手洗いに行って気分を変えようと席を立とうとした。
「しかもその人、試験を飛ばして入学してきたんですって!」
なん……だと。
「しかも凄い美人なんだって!」
そこはどうでもいい。
試験を飛ばして入ってくる。それほどに実力が明らかな人物で、しかも期待されている人物なのか。
気になる。どんな戦い方をするんだ?。
そして転入してきたのは少女だった。
綺麗な銀髪のロング。身長は私より小さく触れると壊れてしまいそうな儚さと可愛さ。可愛いが美しい系では無いし転入試験を飛ばすほどの強い魔術師には見えない。
魔術師というのは見た目で強さは分からないにしろ、強い魔術師は独特な圧を持っている。
けれど彼女にはそれが無い。噂では学園長の知り合いだとかが流れた。噂を
その後、軽く新しい魔術の練習をして図書館に向かうと転入生が前から歩いてきた。
すると転入生はこちらの全身を眺めたあと、胸を
「えーっと。大丈夫かな?」
「割と大丈夫じゃないからこのまま帰らせてくれ。」
彼女はそうそっけなく言って帰ろうとする。
でも帰られると困る。彼女の戦い方を知りたいんだ。
だから脅しのように言う。なりふりなんて構ってられない。
「帰らせるから私のお願いを聞いてくれない?」
その少女は儚くなんか無かった。触れたら壊れるなんてものじゃない。
壊れるような魔術を放っても壊れない。
一撃で死に追いやるほどの魔術をくらいながら、下級悪魔を一撃で倒した新しい魔術を初見で避けながら、腕が千切れる攻撃をくらいながら、炎の中に突っ込んできながら。
その上で
一点読みの防御術式で防ぎ、小魔術の術式展開が終わった瞬間に勝ったと思った。
けれどそこも読まれていた。よくわからない追尾する攻撃が私に当たり、魔術が解かれてしまった。
そして負けた。首を切られた。その姿は儚くは無かったが美しかった。
「勝者!リーシェ・シャーレイ!」
勝った!勝った!勝った!
「対戦ありがとうございました。」
そこにはアリシャがいた。
「ありがとうございました。良い戦いでした。」
そういってこちらに握手を求めてきた。
「こちらこそありがとうございました。」
そういって握手に応じる。
声拡散の魔具を先生が持っており、恐らくはそれによって俺達の会話は全て観戦者に筒抜けになる。故にここで素を出すと色々大変なことになりそう。
応援してくれていた観客に笑顔を向けて手を振ってみる。多分ファンサービスみたいなことになってるだろう。
さて、ここからは皆さんお楽しみの時間だ。”何でも言うことを聞く”という素晴らしい権利があるわけで、つまりR18的な夜に営みを命令することもできる。
可哀相だが仕方ない。これは仕方のないことだ。
「私に勝ったのがそんなに嬉しかった?」
もろににやけてるのが表情に出てたのか。
「そうですね。アリシャさんという素晴らしく強く美しい魔術師と戦い、そして勝利した」
「今このことにとても感動しており、同時にとても歓喜しております。」
「そうですか良かったです。ちなみに負けたら何でもする、という約束でしたが私は何をすればよいでしょうか?」
会場が固まった。冷え冷えのお通夜状態だ。
「何全生徒の前で言ってくれてんだぁ!!!」
なんて言いたいがそれを言ったら俺の評判は地に落ちる。
「はい!良ければ私と友達になってもらえませんでしょうか?」
ここで俺と寝てくれ!なんて言ったら、俺の評判は地に落ちてそのまま岩盤まで急降下する。
「喜んで!これからよろしくお願いしますね?リーシェ。」
「良かったです!私友達というのはあまりいなくて……このことを言うのにとても緊張してしまって固まってしまいました。」
ちょっと言い訳臭いがまあ何とかそれっぽいだろう。
「これから共に魔術を学んでいきましょう。」
そういってアリシャに手を差し伸べる。
「はい。よろしくお願いしますね?」
そういって俺の手を取り、手をつなぎ会場から退場した。
「めちゃくちゃ面白かったぞ(笑)」
そういって煽ってくるのはカノン。俺の友人であり、アリシャとの模擬戦に置いては彼の情報がかなり活躍したという恩人だ。
途中で合流し、アリシャと三人で図書館に向かおうとしていた。
「それは戦いがか?それともアリシャの起点か?」
「両方だな。戦いも面白かったし、アリシャの起点で固まったお前もめちゃくちゃ面白かった。」
なんと酷いやつだ。
「仕方ない。奴隷にされて売られるとか……四肢を切られて男たちの性処理係にされるとか……死んだ方がましなこと結果になる可能性もある。」
「まあ一応は下級貴族だからな。奴隷だと王直属ぐらいじゃないと今より生活は悪くなるだろうな。」
「てか俺ってそんな酷いことやると思われてたの?!」
「まあしないとは思ってたけど。世の中絶対という言葉はありえない。」
「まあこいつ。卑猥なことをさせろって言うつもりだったから割と酷い命令するつもりだったんだろうけどね。」
「ちょっと待て!俺は何でもするという言葉に弱いが卑猥なことを命令するとは確定していないぞ?」
「うーん……リーシェならありかな?」
「ありなのかよ。」
「マジですか。」
「そそそそそそれじゃぁあですよ。折角ですし俺と付き合━━━━━あ゛?!?!」
いきなり頭痛がし始めた。立つのがやっとで思考がまとまらないたいいたいいたいいたいいたいいたいたいいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたい━━━━━━━━━━━━━━━━━
「dUshTNEUka?」
「dAijoBk!」
何を言っているのか理解できない。気持ち悪いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
「大丈夫ですか?」
そう言われていきなり頭痛が引いた。さっきまでの痛みが嘘のようだ。
「ああ。大丈夫だ。」
そういって前を向くと知らない男がいた。
「すみません。つい友人と思って返事をしてしまいました。」
謝罪をしつつも男を見る。身長は170後半……180はある。服の上だから見にくいが筋肉もかなりついており、腰にかけてある剣が様になっている。
黒髪の単発。目は若干たれ目だが顔は整っており、一般的にはイケメンと言われる部類だろう。
しかしなんだ。イケメンだからなのか凄いむかつくなこいつ。
「いえ大丈夫です。頭痛の方はどうでしょうか?」
頭痛って言ったか?。
どんな格好だったかは分からんが、多分頭を抱えてただろうし普通に分かるか。
「ご心配なく。先ほど無くなりました。」
「ではお二人とも。図書館に向かいましょうか。」
そういってさっさとこいつから逃げる。
「いえ、それとは別に一つ話があります。」
ッチ。
「今舌打ちしましたね?」
「してないです。」
「えーっと。あなたの名前はなんと仰られるのですか?」
「アリシャ・ガレッドです。」
「アリシャさんですか。良い名前ですね」
「ところでアリシャさん。お話があります。」
アリシャに向けて謎の男が言う。
「え?私のこと。」
「一目惚れです。私と付き合って頂けないでしょうか?」
は?は?は?何言ってんだこいつ。
「ってめぇ!アリシャに手を出すな!」
そういって二人の間に立ち、物理的なブロッキングをする。
「何を戯言を。あなたと彼女がどんな関係かは分かりませんが先ほどの模擬戦からして、お付き合いはしていませんよね?」
「ならばあなたが私の告白を止める権利はありませんし、そもそも恋人だろうが告白を止める権利はありません。」
正論だ。正論なんだがこのチャラ男に言われるとむかつく。
「ちなみに俺はあなたのことも知りませんが、あなたはどこのどちら様でしょうか?」
「リーシュ・シャーレイだ」
「カノンだ。」
「なるほどなるほど。そういうことですか。」
そういって俺のことを見る。俺のことを見て何か勘違いしたのか?。
「確かにそうなんだが……正論だろうが感情的に嫌なのは嫌なんだよ!」
「この男の人の言う通りですよ。リーシェ。」
「良かった。では俺と付き合って頂けませんでしょうか?」
くそ。顔はいいしがたいもいいし男だし俺に勝てるところなんて無いじゃないか。
「普通にお断りします。」
無言のガッツポーズ。
「そうですか。とても残念です。」
「妨害しておいてあれだが良かったのか?多分こいつそこそこ凄いやつだぞ。しかも見た目も悪くないし多分強い。」
そうなんだ。肉体や足さばきから実力が高いのが分かるし、何よりこいつは
故にこいつが魔術学校に入学どころか、そもそも敷居を跨ぐことすら許されない人間だ。
だからこいつがここにいる。その事実がこいつの凄さだ。
「そうですね。見た目もいいですし恐らく実力もある。ちょっと変な人みたいなことを除けばかなりの良物件でしょう。」
「君さらっと酷いこと言うね?」
男が突っ込みをする。
「けれど今の私にはリーシェさんがいます。」
「アリシャ……」
「まあ良い人みたいなので、リーシェさんと出会っていなかったら普通に承諾していたと思いますがね。」
模擬戦受けててよかった!。
「そうか残念だ。では私はこれで退散することにする、また会おう!」
そういうと男は俺達の進行方向とは逆の方向に進む。
「まあ君がこいつと出会えて無かったら、そもそも俺に良い感情を抱かなかったろうけどな。」
そういってよくわからない謎の言葉を呟いて男は去っていった。
「何だったんだアイツ。」
何と嫌なやつだったんだ。
「ああやって嫌悪感を表面に出すのはあんまりよくねーぞ。」
そういってカノンは俺に注意してくれた。
「分かってんだけどなー。なんかアイツ凄いむかついた。」
「そうかね?俺はちょっと変な所あるけど面白いやつだと思ったけどな。」
カノンがそう呟く。
「そうですかね?私は少しやばい所があると思いましたが、美しいと思いましたね?」
アリシャはそう感じたのか。あいつを見て美しいか、この辺は男と女の差なのだろうか?。
「全く。寝取られた気分だよ。」
「ねとられた?とはなんでしょうか?」
独り言に近い言葉をアリシャに聞かれてしまった。やっちまった。
「アリシャは気にしなくていいよ。知らなくて良い言葉だ。」
「恋人が別の者に取られること全般のことだな」
カノンがいらない助け船をだす。
「こ……恋人ですか。」
そういってアリシャが照れる。これは脈ありか?。
「まあ今は恋人って関係じゃないがな?今後恋人になるって可能性もあるわけだからな?」
そうやって強がりつつもアプローチを仕掛けてみる。少し遠回りすぎるが一応は女性同士だ、多分これぐらいがちょうど良いだろ衣。
「そうですね。それまでに私を好きにさせて見てくださいね!」
それは実質的な告白なのでは?と思うが口には出さない。
「ああ。女同士もいいものだとその体に教えてやるぜ。」
「それ下ネタに聞こえるぞ。」
すかさずカノンが突っ込みをいれる。
「それより、確かリーシェさんって大魔術どころか中魔術も使えないんでしたっけ?」
アリシャが強引に話を変えてきた。
「そうだね。術式展開自体はできるんだけど、実戦投入できるほど慣れては無い。」
「それじゃぁ!この後中魔術の練習をしましょうか!」
「おい忘れてないか?今図書館に向かってるんだぞ?」
冷静なカノンの突っ込みで忘れていた目的地を思い出す。
「そういえばそうだったな。今日は戦争関連の本を漁るとするか。」
そういって3人で歩く。
目標は遠い。けれど頑張れば。この3人で頑張れば目標まで届く気がする。
きっとこれは気のせいだろう。喜びによって楽観的になっているのかもしれない。
今後待ち受けるであろう壁も、きっと俺達ならば越えられる。
冬に差し掛かろうとする冷たい風が吹く。さっきまで雲のせいで遮られていた陽光が射す。
この世にはまだ大量の魔術があり、それを使う多くの魔術師がいるだろう。
けれど悲観することはない。他の人達が成長するように、俺も成長し続けているのだ。
俺達の戦いはまだ始まったばっかりだ!。
「なんか雰囲気で最終回みたいなこと考えてたな。」
「何言ってるんだお前は。」
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