魔術師アリシャとの戦い/2
極大魔術。限られたごく一部の優秀な魔術師のみが使えると言われている、
ただしその圧倒的破壊力の代わりに発動までは長く、高い集中力が必要なために極大魔術中はほかの魔術はしようできない。
しかも魔力消費も恐ろしく多く、普通の魔術師は2発目は撃てない。優秀な魔術師でも3発が限度だそうだ。
その圧倒的強大な魔術が、今俺の目の前で発動しようとした。
回避すらできない、広範囲高威力超速度の一撃必殺の術式。もし発動すれば俺の負けは確定だろう。
いや普通に妨害するけどな。
まだ学生故に青いのだろう。回避に専念していた俺に堪忍袋の緒が切れたのだろう。極大魔術で俺を倒そうとしてきた。
思っていたのとは違ったがせっかくできた隙だ。ここで一気につめる。
「
指先に込めた5発の魔力弾がアリシャに向けて飛んでいく。しかし
重魔術師の
アリシャの場合、彼女を中心として半径2メートルの大きさの円で作られている。
しかし極大魔術というのは極大な分隙が大きく、集中力が必要なために他の魔術は使用できない。
故に使用時は大きな隙ができてしまう。
俺とアリシャの距離は50メートルほど。極大魔術の発動までにどれぐらい時間がかかるかは不明にしろ、一気に詰めてそのまま倒すしか俺は選択肢が無い。
「何?!」
一気に詰めたことによって集中力が切れたのか、アリシャの極大魔術の魔術陣は崩壊してしまった。
「石壁!からの石槍!」
その魔術陣から魔力の込められた石の槍が俺目がけて飛んでくるが、簡単に避ける。
焦ってたせいなのか、目の前に石の壁を展開してしまったせいでアリシャからは俺のことが見れない。故にこのまま突っ込む。
そして飛ぶ。高さ3メートルなんて強化魔術をかけた俺ならば簡単に越えられる。
石の壁を越え、
後ろ側に防御術式を発動させ、足場としてそれを蹴ってアリシャに接近し剣を抜こうと構える。
このまま抜刀と同時に
……待て何かが変だ。加速している思考の中で違和感を感じた。
目の前には無表情でかわいらしいアリシャの顔がある。いくらクールとはいえ、流石にこれは反応が薄くないか?。
術式展開の反応は無い。ゆえに攻撃は無いはずだ。
けれど何かがおかしい。何か見落としているような……思考を巡らせる。何か一つ勘違いをしている気がする。
『しかも冒険者としても一級冒険者で、戦闘経験も豊富だから子供とは思えないほどに臨機黄変に動ける。』
カノンの言葉を思い出す。
直後俺は切ろうとした手を止め、防御術式によって足場を作りアリシャの後ろへ行くように飛んだ。
飛ぼうと魔術防御の術式を足場にした瞬間。先ほど生成した石壁から勢いよく石槍がこちらの向かってきた。
そうか!事前に術式展開をしていのだ。
事前に術式展開をして、そこに魔力を通さなければ術は発動しない。
故に先ほどの岩の攻撃時に、何個か
なんて恐ろしく器用なことをするのだ。
そりゃそうだ。戦闘経験も豊富なやつがめんどくさがって極大魔術で決めには来ないだろう。
邪魔をしなければそのまま負け。邪魔をしに行けばこのように油断を誘って攻撃をする。なんて嫌らしい攻撃なんだ。
アリシャが生み出した岩槍は防御術式に阻まれたり、そもそも当たらなかったりで一発かすったぐらいで直撃はしなかった。
アリシャの後ろを舞いながら、左手の指先に魔力を込める。
「
不安定な体勢での一撃なために狙いは定まらない。あくまで
しかし防御術式を展開して止められてしまう。流石に近距離で喰らうのは不味いと判断したのだろう。
その後攻撃は飛んでこなく、俺は着地して追撃に行こうとする。
しかし気づく。上に強大な術式が展開されたことを。
「畜生!」
そう悪態付き魔術で攻撃しながらも逃げ、距離を取ろうとする。攻撃は全て防御術式によって守られてしまった
「
上空に展開された、術式から火炎の槍が大量に降ってくる。
アリシャが俺に逃げさせるために発動した大魔術だ。防御術式無しでは直撃で瀕死になる。てか普通は死ねる。
故に本来は逃げるのである。普通は逃げる。
「待っていたぜ。この時をよぉぉ!」
故に油断する。完全に予想外の接近だ。
「な!」
アリシャも爆心地に突っ込むとは予想していなかっただろう。驚いている
「取った!」
「甘い!」
剣ではなく左手による追撃のアッパー!防御されるのは想定していた。故に片手で切り上げ、左手をフリーにしていたのだ。
集中強化魔術を乗せた全力の一撃。体勢的に全力の一撃にはならなかったが、軽くヒビが入った。
流石にこのままいるとまずいので、ヒビを入れてすぐに後ろへと下がる。
その瞬間、さっきまで俺のいた場所に石槍が複数突き刺さ━━━━━━━━
直後俺の目の前に魔術が降ってきた。さっきアリシャが使っていた
爆炎。直撃しなかったが、今の攻撃のダメージを減らすために後ろに飛んだ影響でアリシャとの距離は離れてしまった。
痛みはあるが問題はない。俺の火炎の槍より強力だが、後ろに下がった影響でギリギリ何とかなる。
「風よ、水よ、風よ。我に敵を破壊する力を与えたまえ。」
俺との距離が開いたのを好機にと、アリシャが詠唱をし始めた。
詠唱。確か勇者語の詠唱は魔術としての意味より、ルーティーンとして使われる。
彼女の上に3つの大魔術陣が形成される。
大魔術の複数展開すら難なくこなすアリシャだ。確実にやばいのが飛んでくる。
「三重の大魔術に沈むが良い!
2つの大魔術によって別回転の竜巻を生成しつつ、もう1つの大魔術により大量の水を勢い良く竜巻に追加される。
その相乗効果によってなのか、暴風乱舞の時よりも早く凶悪になっている。
けれど相手もかなり余裕が無い。ならばここが勝負の分かれ目!。
「勝負だ!アリシャ・ガレッド!」
そういうと俺は納刀し
生身で行けばそのまま吸い込まれたろう。けれど今は強化魔術を使い、更に防御術式による足場もあるのだ。
暴風乱舞ならば追撃が怖かったが、この一撃ならば追撃は怖くない。
ブウン!と言う刃が近くを通りすぎる音がした。
その瞬間、俺の左腕に激痛が走る。
「っ?!」
見れば左腕の、肘から先が無くなっている。綺麗な切断面だ。
竜巻によって外に出され水だ。
超速度で飛ばされる、魔力を込められた水は俺の体すら切る圧倒的切れ味の刃となっているのだ。
ならば速攻でここを抜けなければならない。
反撃が怖いが、アリシャに向けた最短距離でアリシャに接近するべく防御術式を後ろに展開。それを蹴ってアリシャに直進する。
同時に攻撃を仕掛ける。
右手で腰に刺している弓矢を取り、風魔術を付与してアリシャの上に投げる。
直後右腕で
アリシャは
防御術式を足場として俺は更に上に飛ぶ。直後アリシャの
風魔術を付与した矢が、俺が殴った場所を追撃して壊したのだ。
「
追撃の指令魔術だ。速度が遅い分アリシャの周りまでしか進んでいなく、追尾の指令によりアリシャに向かって追尾し始めた。
同時に俺は右手に魔力を込める。
「石壁」
しかしアリシャは弾全てに対し、石の壁を展開して防御をする。
集中。集中。集中。
アリシャの魔術を避けたことによって、アリシャの真上まで飛んだ俺は追撃の魔術を発動させる。
「
炎と風を魔力で圧縮した弾を、風を炎挟む形にして炎の弾3つ風の弾2つを指先に生み出す。
それを標的に向けて飛ばし、アリシャの上で魔力を解放することによって━━━━━爆発する。
風と炎が解放され勢いよく爆炎を起こす。
アリシャは防御術式を展開していた故に直撃は避けたかもしれないが、それでもダメージは大きいだろう。
炎は素早く広く広がるため、
更に燃焼によって空気中の酸素が無くなるために呼吸もできなく、呼吸しようとすれば酸素が無くてそのまま倒れる。
言わば火炎の槍を素早くした技だ。
しかしそれだけでは終わらない。防御術式による足場を作り、それを蹴りアリシャの後ろへ回る。
炎によって視界が防がれている現状、上から攻撃したとしても先ほど作った防御術式で防がれてしまうだろう。
故に後ろに回って切る。俺の肉体ならば強化魔術込みでも、炎の中でもダメージは少ないだろうしすぐに炎は消える。
着地、と同時に抜刀の形で斬る。斬ろうとする。
しかしその攻撃すらも阻まれる。防御術式を
「終わり」
そういうと彼女は防御術式越しに術式展開をする。しかも防御術式には大量の魔力を練ってあるらしく、片手とは言え壊れる気配もしない。
勝敗は決した。出せる力はすべて出した。
力を入れる。彼女の展開する小魔術は一瞬で展開された。その術式から石の槍が出現しようとした直後、彼女はこっちに向かって倒れてきた。
時間差攻撃だ。
『
故に威力は非常に低く、強化魔術込みとはいえアリシャを軽く押すぐらいの力しか残っていなかった。
「何?!」
しかし予想外の一撃だったからか、彼女の展開していた術式は全て消えた。
そう、防御術式も消えた。
一閃。アリシャの首が飛ぶ。勝敗は決した。
「勝者!リーシェ・シャーレイ!」
先生からの勝利宣言。勝ちだ、俺の勝ちだ。
「よし!」
力強く拳を握りしめる。ここで喜びのあまり叫ぶのは流石に引かれる。
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