魔術学校へ/後

 魔術師としての強さを得るため。魔術学校へと通うことになった。 


 そして現在、魔術学校のある都市「シュトロハイド」に行くための馬車に師匠の弟子さんと共に乗っている。ちなみにこの馬車は魔具。揺れが少なく便利だ。


「そうですね。シュトロハイドにつくまでにはかなり時間があります。その間に常識のすり合わせと魔術の基礎について学びましょう。」

 常識の基礎。聞きなれない言葉だがこの世界特有の言い回しなのだろうか?。


「常識の基礎……とは一体何のことでしょうか?」


「常識というのは人によって違います。特に辺境の村で生まれ育った人なんかは街での常識を知らない人が多いでしょう。」


「更に言えば、間違った知識によって人に迷惑をかけてしまうこともあります。最悪は喧嘩に発展する場合もあります。なのでまずは常識のすり合わせが大切なのです。」



「ということで、まずはシュトロハイドはどんな街かについてです。」



「はい。シュトロハイドはバウンド(俺たちが住んでいる国)の都市となっています」

 この世界の国の形態は少し変わっており。まずは城が建てられ、それを中心として城下町が作られる。


 これが都市。そしてそれを中心として近くに中規模の町が作られており。更に遠くには小さな村が存在している。


 正直非効率的な気もするし、戦争の時は村とかまっさきに襲われるよなって思うのだが。正直何故こうなっているかは分からない。

 ちなみに都市は国の中心であり、都市=その国という認識がこの世界の常識となっている。



「主な種族はヒューマンであり、他の国よりヒューマン以外の種族が少ないという国でもあります」

 ヒューマン。簡単に言うと人間のことだ。この世界は人間以外にもエルフやビースト(所謂獣人)を初めとして、多くの亜人族がすんでいる。


 ヒューマンは肉対面、魔術面ともによく多彩な戦い方があって数も多い。ゆえに過去にあった戦争で勝利してこの世界の中心の種族となっているらしい。

 


「魔術が盛んな国であり。魔術師を目指すのであれば一番良い環境と言っても過言ではない国ですね。」


「メリッサさん。そういえば自分は他の国のことを知らないのですがそっちもレクチャーしてもらってよいですか?」


「れくちゃー?ですか?」


「す、すみません。友達との合言葉で教えてって意味なんですよ。」

 流石にほぼなくなったが、たまにこうやってぽろっと英語が出てしまう。14年間生きていて何故英語がまだでるのだろう。

・・・・・・まあ自問自答が多すぎるからな。脳内で普通に英語使ってるからな。



「まあはい。バウンド以外だと大きな国は二つ。ロックとメタリカですね。」


「ロックはビーターが主に住む国であり、バウンドとそこそこ交流のある国となっています。」

 ビーター。所謂獣人というタイプ。けも耳美少女!なんてことはなく、人型の獣って感じ。ロマンが無い。とても悲しい。



「ビーターが多いですが、エルフを除く4大種族(ヒューマン、エルフ、ビーター、ドワーフ)が住んでいる国でもあります。」


「半種族(ハーフのこと)も少ないですが存在しており、その他多くの種族が住んでいるなどと多種多様の種族が住んでいる国となります。」



「メタリカはドワーフだけが住む国であり、外部との交流は殆ど無いという珍しい国ですね。」

 ドワーフ。小柄ながらにして力が強く、手先が器用であり鍛冶などと言った物を作ることに秀でた種族。



「噂では誰でも使えるような強力な武器を作り上げたなんて言われていますが、実際の所は不明です」

 なん……だと……?。

 



 実は俺もこの世界で、元いた世界の武器や兵器を再現することを試してみた。


 まず銃とかの火器。これは現状は無理。

 この世界は回復は魔術できるし、銃より強力な魔術をバンバン撃つしで科学面は殆ど発展していない。つまり火薬という概念が存在していないらしい。


 そして俺は火薬の調合レシピを知らない。硫黄となんかを混ぜるんだっけ?温泉行けば作れるんだっけ?。しかも精密な構造とか覚えてないし再現とか無理げー。速攻で投げ出したわ。


 クロスボウは存在しないらしく、これならいける!なんて思った時期はありました。

 まずクロスボウの構造を知らない。それっぽいものを頑張って作ってみたが上手くできなかった。



 一応は魔力が無い一般人でも使える武器、って意味ではクロスボウも悪くは無いのだが……クロスボウを持ったところで雑魚の魔物ぐらいしか倒せないだろう。

 

 魔術師や戦士を相手する時には役にも立たない。護身用としてはアリだが”誰でもが使える強力な武器”にはならない。





 ちなみにこの世界の脅威は大きく分けて三つある。



 1つは魔物。魔物・魔石を中心として作られた生き物。その多くが戦闘能力が高く凶暴的。ただし知能は高く無い。悪魔とは別の生き物とされている。


 そこそこ数がいるが強さはまばら。各地に出没するために所謂冒険者と言われる人達が主にこいつらを倒している。


 ただし強力な魔物はダンジョンと言われる巣に住み着いているため、村を襲うのはあまり強くない魔物なので村の警備で十分対応可能らしい(人間が報復してくることを理解しているため、生存競争で負けた弱い魔物しか村を襲わない)。


 冒険者たちはこのダンジョンにいる魔物を倒して生計を立てているそうだ。




 1つは悪魔。曰く別の世界の生物。中級悪魔以降は知能があってかなり強いらしい。

 主に騎士と言われる国に所属する者が倒す。場合によってはフットワークの軽い冒険者が倒すこともあるらしい。


 ちなみに父は上級悪魔と母と共に倒したことによって領主へとなったそうだ。




 1つは別の国の人間(この世界では亜人も人間という括りになっている)。今はあまりないようだが50年ほど前までは各地で戦争が起きていたそうだ。


 村に攻めてくる魔物は弱い魔物なために警備で十分。この世界の住民はある程度鍛えてるみたいだしで護身用には剣で十分だろう。

 悪魔は武器1つでどうこうなる相手じゃない。


 別の国の人間は正直分からない。俺の周りは父(めっちゃ強い)と母(多分めっちゃ強い)に元冒険者ばかりなのでいまいちこの世界の戦闘能力については理解できない。

 


 ちなみに後で女性弟子さんに聞いてみたところ、今の俺は一般兵士の数倍は強いらしい。


 まあ一般兵士相手ならそんなもんか、って感じ。

 それと一緒に”誰でも使える強力な兵器は作れるのか”という話になったが。



「圧倒的コストをかけて人造魔剣を作ることは可能」

 とのことなため、コストさえ見なければ一応は可能らしい。

 魔剣という心躍る言葉が出たが、簡単に言えば凄い剣ってことらしい。 




 しかし一つ謎がある。確かにこの世界は魔術という存在が圧倒的に便利すぎる。だからと言って一切科学が発展しないってのも妙じゃないか?。


 火薬が偶然できて、魔術関係なく爆発を起こせる!ってなる可能性もゼロじゃないわけだ。

 そして獣人が思ってたのとちょっと違うだけで、エルフもドワーフも俺の知っている異世界物と似たような長所を持っている。


 そもそもこの世界は一体何なんだ?ゲームの世界だなんて思いたくはないほどリアルだ。

 そう考えると非常に恐ろしくなってきた。記憶が無いのも性別が変わっているのも全て何かの実験のためじゃないか?。



「いきなり黙り込んでどうした・・・顔色悪いじゃない!大丈夫?!」


「いやその・・・えっと・・・あの日なんですよ…。」


「そうなのね…気分が良くなるまで一応馬車を止めておきましょうか。」

 そういうと女性弟子さんは御者に対して止めるように指示した。



 実際にあれの日なのでちょっとネガティブシンキングになってた。まあ落ち着いて冷静に冷静に冷静に考えるとしよう。


 まずこの世界は俺の知識にあるゲームとは次元が違う。国の最新技術は市場より数段凄い、みたいな話は凄い前に聞いたことがある気もするがそれにしても絶対におかしい。故にゲームの世界説は外しても大丈夫だろう。


 日本語ってのは異世界としてはおかしいが、所々で通じない言葉があるし一概にすべてがおかしいと言い切るのは早計だった。


 俺が意識だけこの世界に来たんだ。逆にこの世界から元の世界にいった人がいたかもしれない。

 もしかしたらその人が俺達の知っているエルフやドワーフとかのキャラを広めたのかもしれない。


 そう自分に言い聞かせ気分を変える。俺は俺だ。問題ない。

 この世界が何なのかは分からない。だから解明してけばよい。

 


 この世界でやる目標の一つが増えた俺は、その後待ち受けている女性弟子さん魔術オタクの話という恐怖をまだ知らなかったのである。





 女性弟子さんの早口超情報トークからやっと解放されようやく1日目が終了。


 魔術初心者の俺だ、言っていることの半分も理解できなかった。そのことを伝えるととても悲しそうだった。


 まあオタクあるあるだあな。と言っても知らない絵本の話の個人的解釈をされても割と俺も困る。



「黒粉王という童話で毒を盛られた姫が解毒魔術きかないのに王様の接吻で目覚めるってことがあるんだけど、それは愛の力ではなく接吻しつつ口から体内に魔力を流し込んで強引に目を覚ませるって言う方法で姫を起こしたと思うんだよね。」

 所謂白雪姫みたいなものなだろう。体内から魔力を流し込めば強引に目を覚まさせれるということだけは記憶に残しておく。




 その夜は野宿をした。女性弟子さんがなんか結界魔術みたいなのを使ってたのでそれについて聞きたかったが、さっき言っていることが理解できなかったと言ったしそれで凄い落ち込んでるしで凄い聞きにくい。






 翌日。

「それでは、今日からは魔術の基礎から学んでいきましょう。」


「リーシェちゃんはある程度戦えてたので忘れていましたが、魔術に関しては独学でしたね。昨日はごめんなさい。」

 ちょっと口調が砕けてる。このまま仲良くなれたら良いんだけど。


「大丈夫ですよ。ではお願いします。」



「魔術とは術式を通して威力を上げる。誰にでも再現できるもののことの総称です。」

 術式。模擬戦の時に女性弟子さんが出していた魔法陣のことだろうか。


「メリッサさん。術式とは模擬戦の時に出していた丸い形のやつでしょうか?」


「そうですね。あれは魔術路と言う魔力によって書かれた術式となります。」


「魔力によって空中や地面に路を描き、そこに魔力を通すことによって式が作られ形を作り、入れた魔力の数倍にもなり魔術としての攻撃となります。」


「リーシェちゃんの魔術は術式展開が無い分、魔力をそのまま放出しているために威力は他の魔術よりも下がってしまいますね。」


「となると、自分の魔術は弱いってことでしょうか?」


「そういうわけではありません。魔術師との戦いに置いて重要なこと、それは初見殺しと対応力です。」

 この世界にも初見殺しという言葉は存在しているのか。




「魔術師と言うのは簡単に人を殺す攻撃をすることが可能であり、対魔術師戦に置いてもその火力はかなり高いです。」


「ゆえにどれだけ相手に対応できない攻撃を展開するかというのが大切であり、同時にその攻撃にどう対応するかという対応力が重要です。」


「あなたの生活魔術は火力面はあまり高くありませんが、意外性という意味ではかなり強力です」


「そうなんですか?」


「はい。手加減していたとはいえ、模擬戦の際に私の術式展開から避けるまでの時間が早くなかったですか?」

 確かに。言われてみればいくら鍛えていたとはいえいきなり出てきたはずの魔術路に対しての反応が早すぎる気がする。そこに気がつかなかったとは己の才能を過信しすぎているな。



「魔術ってのは基本的に術式展開と言われる、回路を通して魔力を増幅させる行為が基本です」

「そして術式展開はある程度魔力操作になれた人からしたら魔術を使う!って言うのがなんとなくわかるんですよね」

「魔術は使う前にある程度反応できてしまいます。ゆえに複数の魔術を同時に展開して避けられない状態を作る。騙し合いが基本となります。」


「なるほど、つまり術式を媒介としてい自分の魔術はいわば魔術師殺し的な能力になるわけですね!」

 転生したら対魔術師最強の魔術師だった件。



「いえ、割と脅威ではありますがそこまで凄いものでもありません。」

 ご期待に添えず申し訳ありません。



「確かに術式展開無しというのは脅威ですが、そもそも術式展開をしないということは火力が足りなく魔力効率が良くないわけです」

「そもそも術式展開をしていないので魔術かすら謎。単純な魔術師としての戦いに置いてはそこそこめんどくさくはありますが、あまり脅威ではありません」

「そもそも術式展開を感じさせない方法だったり、魔術に近い攻撃は存在しているために術式展開が無くても反応されることが多いです。」

 とても悲しい。



「まああくまで魔術師としてはなため、剣術と合わせた戦いとして不意に飛んでくるのは脅威ですね。」

 見るからにがっかりしているっぽい俺を女性弟子さんが慰めてくれる。

 



「次は魔術の種類について軽く触れていきましょう。」

 魔術の種類。カバラとかルーンとか風水とか神代言語とかそんな感じのあれか。と言うか俺って無駄にそういうのに詳しいな。



「魔術には多くの種類がありますが、バウンドの魔術師の殆どは魔術路による紋章術と呼ばれる魔術が基本です。」


「他の魔術は弱いとか使い勝手が悪いとかなんでしょうか?」


「そうですね。紋章術は術式を同時に展開すれば同時に魔術を使用することが可能であり、使いやすく一番術が多いために人気があります」

「また、有名な魔術師の殆どは紋章術を主に使っているため、それに憧れて魔術師になる人もそこそこいます。そう言う人達は紋章術以外はあまり学びませんね。二十年ほど前までは紋章術以外の魔術師が多かったらしいですが、現在はあまりいませんね。」


「魔術師って家に代々伝わる魔術~。みたいなものってないんですかね?紋章術以外の魔術師の子供とかもいると思うんですが。」


「そうですね。確かに代々伝わる魔術というものは存在しています」

「しかしそれは上級貴族や一部の下級貴族だけなため、下級貴族の殆どは義務で親の魔術を継ぐということはありません。偶然被ったり両親に憧れて!ってのはふつうにありますね。」

 そして上級貴族なんて言うよくわからん単語が出てきた。俺の知ってる本には大雑把に貴族ぐらいでしか書かれてなかったぞ。



「上級貴族って聞いたことん無いんですが、下級貴族と何が違うんです?」


「分かりました、次は貴族という存在の作りについて説明しましょう。」


 まだまだ説明パートは続くようだ

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