第59話 JKアイドルさんは暇人を想う。02
『閑原くーん! 元気〜?』
「あ、あぁ。一応な」
電話で、週明けにはしっかり歩けるようになると言う桜咲の近況報告を聞き、俺は安堵した。
安静にしながら、家にいたことで、とてもリラックス出来たらしく次の仕事にも、しっかり集中して取り組めそうだという。
まぁ、怪我の功名ってやつなのかもしれない。
『わたしねー、前閑原くんとフレンドになったゲームのランクが250まで行ったよ!』
「高っ、俺まだ20だぞ」
『閑原くん、ざっこー』
「電話切るぞ」
『あー、ごめんてごめんて』
なんか、懐かしい会話。
これも、桜咲と会ったばかりの頃に、交わした会話とよく似ている。
今となってはこうやって会話できるが、前まではお互いに探り探りで……いや、そうでもなかったな。
『閑原くん、最近わたしと帰れてなくて寂しいんじゃないのかなぁ?』
そう言って、桜咲は俺を揶揄ってくる。
「……寂しいに決まってる」
『え……え? いつもの閑原くんなら『俺、寂しくなんてねーし』とかイキってるのに!』
「イキってねっつの。……お前がいなくて寂しいのは、当たり前だろ」
『……そ、そうかぁ、なんか照れちゃう。えへへ……』
「なぁ……桜咲」
桜咲は『なに?』と小さく答え、静かになった。
「一つだけ、俺のわがままを聞いてくれるか?」
『わがまま?』
「クリスマス……、仕事の後で全然構わないから、お前に会いたい」
『……う、うん、大丈夫! ライブが終わったらすぐに会えるようにする! 実はね……わたしも、その日はどうしても閑原くんに会いたかったから』
「……ありがとう。桜咲」
俺は心に決めていた。
クリスマスは、俺の全てを桜咲に伝える日にすると……。
『あ、そうだ! 今年のクリスマスは家族でパーティーするつもりだったから、閑原くんは先にわたしの家に行って、お父さんたちとワイワイやってて! お母さんの手料理も有るし』
「へ?」
『前みたいに閑原くんが手料理を食べてくれるって知ったらお母さん喜ぶだろうなぁ』
何に関しても、"試練"が付き物だが、俺にとってそれは、記憶が飛ぶ可能性もあるくらい大変なものである。
「あ、あぁ! 俺も楽しみ……だよ」
段々と声のトーンが下がる。
俺の試練はやはりあの、桜咲家の難関を突破することにあったか。
一成さんの意識的なのか、無意識なのかわからないセクハラと、蜜さんの手料理。
俺は一世一代の大勝負に、緊張感を持って立ち向かうことを決意した。
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