第36話 JKアイドルさんは花火大会に興味があるらしい。03

 

 花火に魅入られて、わたしは言葉を失っていた。

 何発も止まることなく弾ける花火。

 閑原くんと繋いだ手が少し動いたことで、すぐに我に帰る。


「あ、そうだ。ここの花火は高台の公園から見ると凄いんだ。食べ物買ったら行かないか?」

「うん!」


 出店で食べものを買ったら、閑原くんに教えてもらいながらその公園に足を運んだ。


「わぁっ! 綺麗だね、閑原くん!」


 公園にはわたしたち二人だけだった。

 意外と穴場なのかもしれない。

 ベンチに座りながら、二人で空を見上げる。


「あぁ、綺麗だ」


 空を彩る花々の勢いに圧倒されながらもその美しさに魅了される。

 こんなに近くで花火を観るのは初めてだった。

 レッスンの帰りとか、お仕事の最中とかに目に入ったことは何度か合ったけど、こうやって誰かと一緒に花火を観に行ったことは無かった。

 それも、その誰かさんは……わたしの。


 その時だった。

 閑原くんは繋いでいた手を、そっと離す。

 えっ….…。


「桜咲……目、瞑っててくれないか?」


 突然言われて何で瞑らないといけないのか、全くわからなかった。


「……へ?」

「いいから、ほら」


 いつもよりちょっぴり強引な閑原くん。

 わたしは動揺しながらも、目を閉じた。


 これって……。


 な、ななな……。

 わたし、何されちゃうのかな……。

 ドキドキが止まらない。


 閑原くんの大きな手がわたしの前髪に触れる。


 も、もしかして……き、キス……とか。


「やったことないから、上手くできるかな……」


 閑原くんはそう呟いた。

 や、やっぱりキスなの閑原くん……⁈⁈


 ✳︎✳︎

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