第34話 JKアイドルさんは花火大会に興味があるらしい。01

 


「花火大会ねぇ……」


 帰宅したらすぐに晩の支度を始めた。

 道子さんが帰ってくるまでには終わらせたい。

 今日買ったはんぺんをビニール袋から取り出す。


「豊洲、また行きたいよなぁ」


 はんぺんのラップを剥がした時、賞味期限が目に入った。

 まぁ、今日消費するし、関係ない……か。


『8月15日』


 ……815、815。


 あれ……やっぱこの数字って。

 味噌汁が作り終わったら、俺はスマホで桜咲菜子と検索する。


「……あぁ、そういうことか」


 815は8月15日……つまり、桜咲の誕生日か。

 あの時815を強調していたのはそういう事だったのか。


 スッキリしたけど、逆に焦りも感じていた。


 桜咲の誕生日まであと8日。


 だが、桜咲は多忙だ。

 15日に会える確証は無いし、渡すとするなら次会う時に渡すべきだろう。


 ……だとすると、8日も無い。


 どうするか。


 桜咲の欲しいもの、桜咲の欲しい、もの……。


「食べものか?」


 いやいやいや、それは少し安直すぎるというか。

 あー、何プレゼントすりゃいいんだ。


 分からないなら、聞けばいいのでは?

 俺はメールで桜咲に聞こうと思い立ったが、


『お前、何か欲しいものとかあるか?』


 やっぱ却下。

 聞くのはちょっと違うような気がする。

 なんで俺、こんなに悩んでるんだ。


 七海沢への誕プレは3秒で決まるのに。(昨年はアマギフ3000円分)

 ……桜咲への誕プレは、しっかり決めないとダメな気がする。


「桜咲……」


 その時、スマホに着信が入る。


『閑原くん! 帰りに一緒に調べて選んだ花火大会の日、午後オフらしいから行けるよ!』


 ま、マジか……。

 花火大会まで、残り4日。

 あ、でも待て。

 15日が空いてるかどうか聞いてみるだけでも、


『でもね、夏休み中に会えるのは、最後になっちゃうっぽい』


 4日以内が確定した。


 ✳︎✳︎


 4日以内で誕プレを決めなくてはならない。

 しかし、何が欲しいか桜咲に聞きたくはない。


 いや、考え方を変えよう。

 桜咲が欲しそうなものではなく、桜咲が喜びそうなものを選ぼう。

 喜びそうなもの、か。


 日頃から使えそうなものなら、誰でも喜ぶよな。あとできれば長持ちする方が……。

 女子に渡すんだから、可愛い感じの方がいいし。


 …………そうだ。

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