第15話 JKアイドルさんは動物園に興味があるらしい。01

 

「閑原くんが可愛いって言ってくれた……」


 電話が終わってからもずっと閑原くんのあの言葉を頭の中で反芻していた。

 あの閑原くんが、わたしに。


「えへへぇぇ、可愛いかぁ……」


 もぅ、閑原くんったらぁ……。

 ぬいぐるみを抱きしめながら、ベッドの上をゴロゴロ転がって喜びを爆発させる。


 来週になれば学校行けるし、久しぶりに閑原くんに会える……。


 わたしは散歩した時に撮った閑原くんの写真を見つめていた。


「閑原くん……」


 ✳︎✳︎


 学校に行っても、わたしと閑原くんは校内で会話することは無い。

 同じ教室にいるのに、閑原くんと距離を感じてしまう。


 もっと話したいのになぁ。


 でも、我慢しないと。これもお互いのためなんだから。

 変な噂が立って閑原くんに迷惑かけたくない。


 横目で閑原くんを見つめていると、七海沢さんが閑原くんに話しかけているのが見えた。


 七海沢さんはいいなぁ。

 ああやっていつも気軽に話しかけている様子を目にする。


 閑原くんも閑原くんで、わたしと話す時と七海沢さんと話している時の距離感がなんとなく違うような気もする。(物理的にも心理的にも)

 普段から話せたら、もっと近づけるのにな。学校が終わるまで我慢するのが苦行にすら思えた。

 帰りのHRが終わったらすぐにわたしは、下校する。


 そして、帰り道の待ち合わせ場所で閑原くんを待つ。

 待ち合わせ場所は、学校から少し離れた空き地の前。

 数分待っていると、閑原くんが来た。


「悪い、待たせたか?」

「ううん。待ってないよっ、さ、行こっ」


 やっと、話すことができた。

 嬉しさで自然と笑みが溢れた。


「? なんかいいことあったのか?」

「へ? あ、別になんでもないよ」

「……そうか」


 閑原くんは、いつもわたしの歩幅に合わせてくれるし、車道側を歩いてくれたり、普段は何ごとにも無頓着で鈍感だけどこういう所は紳士的だ。


「今日はどっか寄りたいところとかあるか?」

「うーん、長話できそうなところがいいなぁ」

「電話で散々話してるのにまだ話したいことあるのかよ」

「いーの!」

「はいはいわかったわかった。じゃあどっか長居できるところ、へ……あれ」


 ポツポツと雨粒が降ってきた。

 今日は朝から夜まで晴れという予報だったのに。


「桜咲、傘持ってるか?」

「今日はずっと晴れだと思ったから持ってきてない……」

「だよな、俺もだ。大降りになる前にどっか雨宿りできるところへ行こう」


 わたし達は走って近くにあった公園の、屋根付きベンチの下に逃げ込んだ。

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