いざ決戦。
「あの……ドロシーさん」
「呼び捨てでいいって」
気まずい。
手伝ってくれるというのは嬉しい。だが、あいつ等は容赦無く俺たちに攻撃してきた。危険にさらすわけにはいかない。
かといって、俺とベティ2人であいつ等とやりあって勝てる気は……正直しない。
ここは、素直に力を借りよう。
「ドロシー、急ごう」
ドロシーは笑顔で頷く。
タケル達はダンジョンの前に着いた。
ダンジョン。想像していたのとは異なり、廃れた城のようなものだった。これもダンジョンと呼ぶのか。
正面から入ろうとするタケルを呼び止めるドロシー。
「ちょっと待って、洞窟じゃないなら……。 千里眼! …………タケルの言う通りベティは先にここへ来たようね。敵は3人組だったかしら。別々に行動しているわ。一人が所々に罠をしかけているわね。モンスターの数は数匹だけ。もう
両手を前に出し目を閉じるドロシー。
すごい。こんな魔法もあるのか。でもプライバシーもへったくれも無いな。
「こっちの窓から入れば近道ね」
「分かりました。急ぎましょう」
1階の窓から城の中へ入る。1階はすでに探索しつくされていてモンスターも居ないらしい。
ドロシーに道案内され、2階へ到達する。
「ベティちゃんはまだこの階に居たわ。先に合流しましょう」
手当たり次第に部屋の扉を開け、探していく。中は広くようやく半分ほど探し終えたかといったところで、叫び声が聞こえてくる。
「助けて、誰か助けて! って、タケルじゃない! ちょっとこいつ何とかしてよ!」
ベティが叫びながら廊下を突っ走ってこっちへ向かってくる。後ろを見るとウルフに襲われているようだ。
「私、犬は苦手なの! 早く助けてってば!」
そう言ってベティはタケルの後ろに隠れる。
ウルフは誰でも戦える、大きな狼のような初級のモンスター。犬が苦手なら無理も無い。
だが、ベティを動物に例えるなら犬だ。
同族嫌悪ってやつか?
背負っていたツルハシを取り出し
「って、イテテテ。ベティ放せよ」
ベティは俺の左腕を力強く掴んで涙目になっている。そりゃそうか。俺と歳も変わらない女の子が暴力的な3人パーティ相手に1人で挑んでいたんだから、その恐怖もあっただろう。
「一人で来てまで協力してくれてありがとうな。ベティ。 というかドロシー、なんでドロシーまで俺の腕を掴んでるわけ?」
ベティと逆サイド、つまり俺の右腕にドロシーがしがみ付いてる。
「私も怖かったー。ありがとうタケル君」
明らかな棒読みである。
と、こうしている場合じゃない。早くこのダンジョンの奥にあるキーアイテムを探さないと。
ドロシーの話によれば、3階から秘密の通路を辿って、地下へ行ける道があるらしい。恐らくそこにあるのでは無いか、という話だった。
ドロシーの千里眼は地面から上しか見れないという制約があるようだ。
3階まですぐにたどり着いた。ここからはあいつ等と出くわす可能性がある。気を引き締めないと。
それにしても広い城だ。外から見た時も大きかったが、これほどまでとは。
そう考えながら広い廊下を歩いている。
「ちょっとタケル。お腹すいたんだけど。何か無いの?」
「慌てて出てきたんだ。弁当の用意なんてあるわけないだろ」
「ドロシー。なんか無いの?」
「ごめんねベティちゃん。私も持ち合わせてないわ」
これだけ手伝って貰って食べ物までねだるベティの図太さに呆れたのと同時に、ドロシーへの申し訳なさが込み上げて来て、ドロシーの方を向き愛想笑いを振りまいておく。
当のドロシー本人は、楽しそうに笑っている。それなら気持ちも多少楽になるってもんだ。
「あの。タケルさん。この城何かおかしいと思うのですが。ドロシーさん。あなた、最初から気づいていたのでは?」
イリスだ。急に話しかけてくる。
ビク、と背筋が伸びるドロシー。
「な、なな何の事かしら? というか誰? 何処から話しかけてきているの?」
ドロシーは困惑している様子だ。いや、それより慌てていると言うのが適切だろうか。
イリスの事について軽く彼女に説明する。俺の
「そ、そうだったのね。どうりでマナが美味しいわけだわ。あ、いや何でもないのよ」
慌てて怪しい。ベティと2人でジーっとドロシーの方を見つめていると、
「あ、い、い言われてみればこの城なんかおかしいような? ウェイクアップ!」
そう言って手で
ドロシーの顔は明らかに引きつっている。
「どうやら、幻覚だったみたいね。良かった良かった。さ、行きましょう?」
「おい、もしかして最初から分かってたのか?」
「まさかアンタ、あいつ等の仲間なんじゃないでしょうね?」
慌てて首を横に振るドロシー
「違うわ! それは違う! 別に悪気があったわけじゃ無いんだけど……その……」
ドロシーを問い詰めていると後ろから声をかけられる。
「なるほど。そうゆう事だったのですか。いくら探しても見つからないわけだ」
マルクスだ。他の2人は居ない。
「キミ、次は気絶じゃ済まないかもしれないけど許してくれよ」
そう言ってマルクスは腰に携えた
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