正九芒星。
タケル達は無事洞窟を脱出し、家に帰る途中だった。
「私はこの吸魔石に封印されているのです」
そう話すのは天使イリス。どうやらこの吸魔石が近くにあると会話は可能らしい。
「そういえば、自己紹介してなかったな。俺はタケル・クジョウ。そしてこっちがサラ・エヴァン。俺はサラ姉って呼んでる」
「よろしくお願いします。タケルさん。サラさん。私の事はイリスとお呼びください」
自己紹介を済ませたタケル達だったが、サラは浮かない顔をしていた。
「どうしたんだ。サラ姉」
「吸魔石って、何処かで聞いた事があるのよね」
「魔法学校で習わなかったの?明らかに魔道具って感じだけど」
サラは首を左右に振った。どうやら学校でも教えられていないらしい。
「魔道具と言いますか、吸魔石というのはマナを吸収し蓄えておく装置みたいなモノなのです。」
イリスの話に耳を傾けながら歩いているとアストラの街が見えてきた。すると、街の門の前にいる小太りの商人らしき男がこちらに走ってくる。
「なんだ? えらい慌ててるみたいだけど」
商人はゼーゼーと息を切らしながらもギョッとした目で吸魔石を持ったタケルの顔を見ながら話しかける。
「お兄ちゃん、その石、おじさんに譲ってくれないかね? いや、もちろん只とは言わない。ワシも商売人だ。金なら出す。100万チェンでどうだね?」
タケルはその金額に驚きのあまり言葉を失っていた。すると商人は続けた。
「アハハ、冗談だよ冗談。500万……いや、えっと……1000万チェンでどうだ?」
そこにセラが
「いくら積まれてもお売りするつもりはありません。もう二度と話しかけないでもらえますか?」
そういってサラはタケルの腕をひっぱり街へ向かった。
「どうやらこの吸魔石とやらには相当な価値があるみたいですね。あの商人の態度からして1000万はくだらないのでしょう。家に帰るまでの間ソレはバッグに
そう言ってサラは吸魔石を触ろうとするが
「触らないでください! この吸魔石は
タケルは吸魔石を仕舞い家まで駆け足で帰った。その道中周りの人が襲ってくるのではないかと不安を覚えた。自分が手にしている物は少なからず1000万チェンの価値があるものなのだから。
~アストラの自宅~
家の個室、ボロボロの机の周りに置いた今にも壊れそうな椅子に二人は腰掛け、真ん中に吸魔石を置き、イリスと対話を始める。
「つまり吸魔石っていうのは、マナを吸収して蓄えておくモノって事?」
「そうゆう事です。ただし、意識せずとも勝手にマナは吸収されてしまうので、タケルさんのように”
「ノナ・・・?なんだそれ?」
そういうとイリスは困惑していたが、サラが少し驚いた顔で説明する。
「特殊な才能のある人の体に現れる紋章の一つよ。例えば魔法術に長けた人に見られる
「正確には無尽蔵のマナではなくて、マナの回復が異常に早いのです」
タケルは驚いたが冷静になった。魔法が使えないタケルにとってマナを使う事なんて少なく、気づかなかっただけかもしれない。ただ---
「俺、正九芒星だかって紋章なんてどこにも無いぜ?」
「恐らく、あなたが石碑に触れた時に
分からない、聞きたい事は多々あるが、どうやら俺はその”正九芒星”保持者という事で間違い無いらしい。とは言っても、魔法を使わない俺にとっては実感は何も無いのだが。
「吸魔石を扱えるのは俺だけ……というか正九芒星保持者だけってのは分かったけど、何に使うんだ?」
「扱えるわけじゃありません。持ってあるけるだけです。吸魔石はマナを封じ込める石。この石の中にはすでに膨大なマナがあるのです。もし割れれば……」
「もし割れれば……?」
「一国が吹き飛ぶでしょう。」
「そんなテロに使われる兵器みたいなモノを俺が持ってるって事?」
そこで先ほどから黙り込んでいたサラが唐突に声を上げる。
「思い出したわ」
そう言ってサラは目線を振り返る。その先には本棚があった。よく見ると、本のいくつかに”吸魔石”の文字が見える。
「私のひいお爺様が、吸魔石の研究をしていたんです。その研究のために、この地に住んでいたの。もしかしたら、この本の中に詳しい事が書かれているかもしれないわ。探してみましょう。」
そうしてタケルとサラは本を読み漁る事約3時間、サラのひいお爺さんの日記にて吸魔石からマナを取り出す研究をしていた事、そしてその研究で助手が居た事がわかった。どうやらその助手は当時この近くに住んでいたようだ。
「この人なら何か詳しい話を聞けるかもしれないな。行ってみようぜサラ姉」
「そうね、でも今日は遅いからまた明日にしましょう」
「じゃあ俺は買い物に行ってくるよ。何も食べる物ないし」
こうしてまた夜が明けた。
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