第48話 今日の教訓・契約内容はよく詰めよう!

とうとういつもの時間に間に合いませんでしたッ……!

ここで一気にお嬢様編を終わらせておきたかったんや、かんにんな!


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「そらそらそらっ! 守ってばっかじゃ勝てないよっ!!」



 上空を飛び回りながら、シャインが右腕の“ミーディアム”と左腕のロケット砲を乱射する。ビームとロケット弾の流星雨が、胡蝶蘭とNo.5にダメージを与えようと殺到した。


 それを強靭なレッグパーツの俊足でかいくぐったNo.5が、隙を見ては爆弾ボールを蹴り上げてシャインにぶつけようとするが、ひらひらと回避されて当たらない。

 元より地上の敵を想定した武器であり、空中を自在に舞う敵に対応した武器ではないのだ。恋との戦闘を前提としたビルドが仇になっていた。



「チッ、当たんねえ……! チョコマカ動き回りやがって!」


「……なら動きを封じられれば、当てられるのですわね?」



 歯噛みするサッカーゴッドに、恋が声を掛ける。



「私に任せて。動きを止めますわ」


「……んじゃ任せるッスわ」



 どうやってとは問わない。

 そもそもこの2人のケンカは今に始まったことではない。今回の決戦に至るまで、何度も矛を交えてきた。だからこそ、お互いが何をできるのかは把握している。



「“矢車菊”フルスロットル、レディ……!」



 シャインの攻撃をかわしながら鋼弓“矢車菊”を構え、数十本の矢をつがえる胡蝶蘭。

 クランリーダーにのみ与えられるポイントによって称号錬成を行ったこの鋼弓は、特殊な強化を付与されている。チャージ短縮、複数の矢の射出、さらにもうひとつ。


 “矢車菊”の花言葉は『信頼』。


 パートナーが必ず仕留めるという無上の信頼と共に、胡蝶蘭が弓を引き放つ。



「奥義・砲千火ほうせんか!!」



 数十本の矢が超高速で引き放たれ、その一本一本が意思を持つかのようにシャインに向けて殺到する。それはまるで矢の姿に変化した猟犬が、宙を飛翔し獲物に襲い掛かるかのごとく!



「うわっ、やっば……!!」



 さすがに頬を引きつらせたスノウが、全力で回避を選択する。

 飛行を得意とする機体にとって、飛来するボールなどは避けるのがたやすい。それは所詮“点”でしかなく、少し座標をずらせば回避できるからだ。しかし数十もの複数の点が一気に迫ってくるのであれば、それはもはや回避困難な“面”である。


 バーニアを起動して空中を横方向に飛びずさるスノウだが、その後を追って矢の軌道が歪み、追尾する。



『アレ全部追尾性能持ってますよっ!?』


「弓と見せかけて、小型ホーミングミサイルの一斉射出かぁ……!」



 恋が“矢車菊”に付与した能力は3つ。チャージ短縮、複数の矢の射出、そしてホーミングである。いざというときの切り札にするため、普段はホーミング性能をあえて封印するという念の入れよう。ブラフまみれのお嬢様であった。



「チッ、避けきれないな……!」



 スノウは舌打ちしながら武器を持ち換え、全力で後退しながらガトリングで矢を撃ち落とすことを選択。下手に回避しようとするよりは、より現実的な対処。だからこそその対応までが恋たちの予測の範囲内。



「捉えたッ!!」



 撃墜しようとしたシャインの動きが鈍ったところに、空中に飛び上がったNo.5が接近する。



『騎士様ッ、危ない!!』


「おらあっ! オーバーヘッド……キックッ!!!」



 シャインにNo.5の強力無比なレッグパーツによるムーンサルトキックがヒット! さらにその背中に、撃墜し損なった数本の矢が突き刺さる。

 キックを喰らったシャインは、猛スピードで地面に向けて落下していく。



「ヒャッホォーーウ!! 悪名高い傭兵も、オレ様とレンちゃんのコンビの前では手も足も出なかったっすね! やっぱオレ様とレンちゃんの相性はピッタリっすわ!!」



 空中で激しく屈伸運動して勝ち誇るNo.5。

 古今のPvP文化で連綿と継承されてきた、勝利の煽りポーズである。


 恋は浮かれる婚約者に苦笑いを浮かべ、「誰が相性ピッタリよ!」と言おうとして、表情を強張らせた。



「足! 足に注意して!!」


「へっ?」



 サッカーゴッドがぽかんと自機の脚を見ると、強靭なワイヤーがすねに巻き付くところだった。ワイヤーから大きな力がかかり、がくんと態勢が崩れそうになるのをバーニアを駆使して必死に耐える。



「なっ、なんだと……?」



 そのワイヤーを射出したのは……シャインの右腕パーツ。ペンデュラム配下のメイド隊が装備していた“内蔵ワイヤー”を気に入ったスノウが、バーニーにねだって右腕に仕込んでもらったものだ。1カ月経っても借金が一向に減らない原因となったが、それだけの価値はあった。


 “アンチグラビティ”の重力制御とワイヤーによるしがみつきによって地面に叩き付けられるのを免れたスノウが、No.5を見上げてニタァと笑う。



「師匠に守れと言われた教えがいくつかあってね。そのひとつが『屈伸煽りをされたら絶対に許すな』だ」



 次の瞬間、シャインの背面の銀翼が白く輝き、真上方向に向かって急上昇。



「は、離せッ! ふざけんじゃね……うわぁ!?」



 ワイヤーを解こうと四苦八苦していたNo.5が、シャインの上昇によって宙吊りになった。サッカーゴッドの視点が天地逆さにひっくり返り、思わず動揺した声を上げる。


 必死にワイヤーを外そうと試みるサッカーゴッドに、恋が悲鳴を上げる。



「ゴッド! 自分の脚を切り落としなさい!!」


「はあっ!? できるわけないっしょそんなん! サッカー選手が脚を失っちゃ生きていけねーしっ!!」


「負けるよりはマシですわよッ!」



 その執着が命取りとなった。

 重力制御を発動してNo.5の重量を軽減したシャインは、自らを支点としてワイヤーを引き上げ、No.5の機体を大きくぶん回した!


 一度持ち上げてしまえばしめたものだ。遠心力によって半自動的にNo.5がぶん回される速度は増していく。ぐるぐると振り回されるサッカーゴッドが、三半規管を狂わされてめまいを起こした。



「ひえええぇぇぇっ! レンちゃん! レンちゃん助けてっ!!」


「はっ! そ、そうですわっ! あいつを射れば……!!」



 パートナーを救えるのは自分だけだと気付いた恋が、円運動の中心となっているシャインに向けて弓をつがえる。

 しかしその矢が発射されるよりも先に、シャインが腕から伸びたワイヤーを根元から切断した。さらに切断されきる直前に、No.5にかかる重力を増加! 



「急造奥義! ワイヤーハンマー投げ!」



 胡蝶蘭の方向に向けて、ハンマー投げされたNo.5がすさまじい遠心力によって投げ出される。



「う、うわあああっ!! レンちゃん、避けて!!」


「い、言われなくても受け止めるの無理ですわよッ!!」



 胡蝶蘭は必死に横方向へダッシュして、猛スピードで地面に叩き付けられるNo.5の巻き添えになることを回避。

 次の瞬間にドカンと爆音を立ててNo.5が地面にめり込み、強烈な落下ダメージを叩き込まれる。



 これがスノウがワイヤーを気に入った最大の理由。腕の延長として使うことで、至近距離でしか使えないという投げ技の弱点を克服できるのである。これには改造を依頼されたバーニーも、その手があったかと膝を打った。



「ぐあああああああああああああああっ……!!」


「ゴッド、しっかり!! 今助けますわ!!」



 No.5を地面から助け起こそうと近付く胡蝶蘭。

 その背中越しにシャインを見たゴッドが悲鳴を上げて警告する。



「ダメだ、来ちゃダメッス!! あいつの攻撃はまだ終わってないッ!!」


「!?」



 その隙をみすみす見逃すスノウではない。


 空中に片足を突き出したポーズで静止したシャインの白銀の翼がひと際白く輝き、裂帛の気合と共に必殺技を繰り出す!



「必殺!! グラビティ・『メスガ』キィーーーック!!」



 スノウが叫ぶ必殺技名にディミが割り込みつつ、重力マシマシの急降下キックが叩き込まれる!!

 No.5を助け起こそうとする胡蝶蘭へと向けられた攻撃は、まともに喰らえば大ダメージ必至のまさに必殺の一撃。しかし胡蝶蘭が避ければ、No.5は確実に撃墜されるだろう。

 相手の弱点に付け込んだ意地の悪い攻撃を前に、恋はふっと軽く笑った。



「避けるという選択肢などなくってよ」



 胡蝶蘭は全身の力を抜き、迫りくるシャインのキックの前に身を晒した。

 必殺の一撃が胡蝶蘭に繰り出され、勝敗が決する……。かと思えたそのとき!



「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」



 背後からの叫びと共に、胡蝶蘭が真横へと突き飛ばされる。


 倒れ込む機体のコクピットから恋が見たのは、残された最後の機能を振り絞って立ち上がったNo.5だった。ほぼ戦闘続行不可能に追い込まれていたNo.5のバーニアすべてを限界を超えて稼働させ、胡蝶蘭を押しのけたのだ。



「ゴッドッ!?」


「ヘッ……惚れた女の盾にもなれなきゃ、男張ってる意味なんざねーッスよッ!!」


 そしてシャインの必殺のキックが、仁王立ちになったNo.5に直撃する!

 仁王立ちになったNo.5の……股間に!!



「「あっ……」」



 スノウと見守っていたギャラリーの男たちが、思わず声を漏らした。



「ほぎゃああああああああああああああああああああああああッッッ!!?」


「ゴ……ゴッドーーーーーーーーーーーッッ!?」



 デリケートな位置にメスガキの蹴りが突き刺さり、それでも止まらずにギャリギャリと地面を削りながらNo.5を大地へ沈めていく。

 No.5を地面の底へと引きずり込むような容赦ないメスガキの会心タマ潰しキックは、2メートルほど地に爪痕を刻んでようやく止まった。



「ひ……ひでえ……!! これが人間のすることかよォッ!!」


「悪魔かよこのメスガキ……!!」


「股間がキュンキュンした……何だこの感情は……!!」



 ギャラリーの男たちがドン引きした声と興奮した声を上げる。何か今の一撃を見て一部のギャラリーがやべえ趣味に目覚めていた。


 お嬢様たちは顔を赤らめて両手で顔を覆いながら、手の隙間からNo.5の股間に足を立てて固まるシャインをガン見している。


 そのスノウも正直ここまでやるつもりはなかったらしく、次のアクションに戸惑った様子を見せていた。間の悪い空気がその場に漂う。とりあえずその股間に置いた足をどけろ。



「もう……もういいでしょう!!」



 そんないたたまれない空気を破ったのは、恋の叫びだった。



「スノウさん、あなたが私たちの絆を試すために悪役を買って出たのは私にもわかっています。ですがそれはもう十分のはず。それ以上敗者を辱める必要はありませんわ。その脚をどけてくださいまし!」


「「えっ?」」


 えっ?



 全ギャラリーと地の文が一斉に疑問の呟きを漏らした。


 ぽかんとする人々をよそに、恋は真相を語る。



「スノウさんが考えていらっしゃる通りです。私とゴッドは決して仲は悪くありませんわ。以心伝心と呼んで過言ではないでしょう。ですが、私は彼を恋人とみなすことはできなかった」



 スノウは何も言わず、静かに彼女を見つめている。



「何度も言いましたが、価値観が違うのです。彼のアホみたいなキャラのノリについていけなかったのもありますが、最大の価値観の違いは相手を恋人とみなせるかどうかですわ。私にはどうしても彼を恋愛対象と思えない。だから距離を置いたのに、彼はどこまでも付きまとってくる……」



 恋はどこか哀しそうにクスリと笑った。



「幼い頃から兄妹みたいに育った相手を、恋人と思えるわけはないのに。だから私は親や友人たちの前で、彼をことさらに嫌ってみせた。挙句の果てにはみんなを巻き込んでゲームの中でも対立して、こんな決闘まで……。周囲の大人からしたら、いい加減にしろと言いたかったことでしょうね。だから私の親族は、ペンデュラムに相談したのですわ」



 その言葉に、ギャラリーの中の大人たちがこっそりと頷く。



「スノウさん。貴方の本当の依頼人はペンデュラムでしょう? 彼が依頼したのは悪役を演じ、私と彼の関係を取り持つことではありませんか? だから私と彼の決闘に割って入り、連携させて関係を再確認させようとした。違いますか?」



 スノウは恋の言葉を受けて、にこりと微笑んだ。



「そんなことよりバトルの続きしよ?」


「私の話を聞きなさいよッ!?」


『イイハナシダナーで一件落着しそうな流れだったのに何でちゃぶ台ひっくり返すんですかッ!?』



 恋とディミに突っ込まれたスノウは、めんどくさそうに頭を掻いた。



「いや、確かにペンデュラムからはそう頼まれたよ? 関連企業の後継者問題を収めてくれると、自分のポイントになるからって。うん、想像したよりもずっといい連携だった。えらいえらい」



 スノウはパチパチと拍手を送りながら、でもねと続ける。



「キミらが仲直りするかどうかなんて、ボクにとって正直どうでもいいんだ。そりゃ仲直りできたねよかったね、という気持ちはちょびっとはあるけども。そんなことよりバトルをしようよ」


『す……筋金入りのバトルジャンキー……!!』


「なんてやべーやつですのッ!? ペンデュラムも頼む相手をちょっと考えて依頼してほしかったですわ!」



 ドン引きした顔をする恋に、スノウは小首を傾げて不思議そうな顔をする。



「キミだって、バトルが好きだろ。じゃなきゃそこまで強くなるもんか。弓術に薙刀術、他に何を習得してる? 戦うのが好きだからこのゲームやってんだろ」



 そう言ってスノウは不敵な笑みを浮かべ、クイクイと人差し指を曲げて挑発のポーズをとる。



「さあ、ここで中断していいのか? 婚約者だか兄弟同然の存在だか知らないけど、仇を討たずに終われないだろ?」


「はぁ……。ご自分の立場をわきまえていらっしゃるのかしら? 貴方は契約違反をしでかしているのですよ? 私が貴方の契約違反を訴えれば、ペンデュラムの名声も地に墜ちる。それをわかった上で挑発していらっしゃるの?」



 自分がペンデュラムとスノウに担がれていたことに苛立っているのか、恋はムッとした表情でスノウに詰問する。



「んー? ボクは契約違反なんかしてないよ」


「何を言ってますの! 私に襲い掛かって、決闘を台無しにしておいて!」


「だってキミ、『味方に襲い掛かってはいけない』なんて一言も言ってなかったよね」


「は……? そ、そんなの当たり前のことでは……!?」


「キミとボクが交わした契約は2つだ」



 スノウは片目をつむりながら指を1本ずつ立てていく。



「ひとつ目は『敵の助っ人をやっつけてくれ』。これは完遂した。

 ふたつ目は『味方が不利な状況なら介入してほしい』。今まさにやっているところだ」


「何を言ってますの!? 今は不利な状況じゃないでしょう!?」


「味方の総大将が敵に攻撃されている状況は、普通は不利な状況って呼ぶんだよ?  しかも一騎打ちに負ければ敗北する。これ以上の不利って他にある?」


「うぐっ!?」



 言葉につまり、声にならない呻きを漏らす恋。

 確かに客観的に見れば、勝敗を捨てた状況と言っても過言ではない。戦術的に見れば将帥として完全にアウトであった。


 スノウはにこにこと微笑みを浮かべる。



「ね、契約違反してないでしょ? 味方を攻撃してはいけないとは言われてない以上、契約は守ってる。だから報酬はちゃんといただくし、キミともバトらせてもらうよ」


『契約の隙を突いて破滅させるタイプの悪魔か?』


「み、認めませんわっ! そんな仁義を欠いた行為……」


「ククク……ハッハッハッハァ!!」



 恋の言葉を遮るように、大きな笑い声が平原に響き渡る。

 その声の主は、リスポーンを選ばずにシャインの下で横たわるサッカーゴッドだった。彼はコクピットの中でパチパチと拍手しながら、どこか晴れ晴れとした顔で笑みを浮かべる。



「これは一本取られたね、レンちゃん。確かにその通り。そんなガバガバな口約束に頼った君が悪いよ。大企業の跡継ぎとしてあるまじきことだ。声高に相手の非を主張したところで、恥をかくのは君の方だよ」


「ゴッド! でも私たち、担がれたのですわよ!! 親にいいようにされて、悔しくはありませんの!?」


「ま、悔しいは悔しいけども」



 サッカーゴッドは顎をさすりながらカラカラと笑う。



「まあ仕方ない、相手の方が上手だったんだ。俺も君も、まだまだ学ぶことは多いということだね」


「…………」


「お互いにこれから勉強していこう。俺と君の関係がどうなるかはさておいても、まだ先は長いんだ。じっくりいこうじゃないか」


『えぇ……? 誰ですか、あの爽やかイケメン……』



 ずっとあの口調なら俺たちも普通についていけるのに……と、エースプレイヤーの誰かがぼやく。



「で、レンちゃん。本音はあの子と戦いたいんだろ?」


「でも……」



 渋る恋を妹に送るようなまなざしで見つめながら、ボロボロのコクピットの中でサッカーゴッドは笑う。



「いいんだよ、無理に大人の真似なんてしなくたって。まだまだ体面なんて気にすることはないさ。オレ様だってそうしてるじゃんじゃん?」


「貴方のそれは、やりすぎですわ。それこそ“大人の真似”じゃないですの」



 おどけるサッカーゴッドに苦笑を見せて、恋はシャインに向き直る。



「よぉし! やってやりますわぁぁぁあ!! フルパワーでいきましてよ!」


「いいね! 来いッお嬢様!!」


「“胡蝶蘭”リミット解除ッ!! この30秒に、すべてを賭けるッッ!!」



 恋の叫びと共に、胡蝶蘭の体が鮮やかな虹色に煌めく!

 機体の体色がグラデーションしながら、ゲーミングカラーに発色!

 さらに背中から虹色の蝶の羽が生え、移動するたびにキラキラと全身から金粉を撒き散らすエフェクトが出現した!!



『あっ、あれは!! OPオプションパーツ【リミットモード】!! 制限時間後の自爆と引き換えに、30秒の間機体の性能が数倍に向上する激レアOPですッ!!』


「いいねぇ! 常識持ってるなら絶対に使わないぞ、そんなOP! やっぱキミもクレイジー同類なんじゃないか!」


「フッ……」



 歓喜するスノウに向けて、恋は薄く笑いながら金髪をかき上げる。キラキラと金粉エフェクトが舞い上がった。そして裂帛の気合と共に、蝶の羽から金の鱗粉を撒き散らしながら叫ぶ。



「絶・好・調ですわああああああああああアアアアアアッ!!!」




 なお、30秒をしのがれて普通に爆死して負けた。



「ぬぎゃーーーーーーーーーーーーーーーですわぁぁぁぁ!!」


「そりゃ弱点わかってるならそうするよなあ……」


『お、おとなげねぇ……正面から相手してやれよ……』


「弱点漏らしておいてその発言はどうかと思いましてよッ!!」



 そんな幼馴染のどこか楽しそうな悲鳴を、サッカーゴッドは肩の力が抜けた様子で、にこにこ笑いながら眺めるのだった。



「ハハッ……やっぱレンちゃんはおバカやってる方がカッコいいよ」

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