第41話 晴れ渡る空に

全てが壊れていく。

そんな.....感じがした。

俺はそう考えながら.....ボーッと空を見る。

ここまでするのか、と思いながら。

実は犯人が分かったのである。


その犯人は.....実は豊子を虐めていた奴らだった。

それを逆恨みして燃やしたのである。

俺は、最悪だ、と思ってしまった。

少年少女達はこんな事で魂を売ってしまったのか。

そう思いながら、最悪だ、と思ってしまった。


「.....奏多。大丈夫か」


「.....うん。大丈夫。有難うね。.....お兄ちゃん」


家は半焼した。

その為に自宅には住めなくなってしまい。

俺達はアパートに引っ越した。

何というか.....本当に虚しいと思う。

それは何がといえば少年達がこれでこの世で要らない扱いになってしまった事に。


「.....お兄ちゃん。優しいよね。本当に」


「.....馬鹿なだけさ。まだこんなふざけた事しか考えられない様な、な」


「.....でも時には人を恨むのも大切だからね。.....お兄ちゃん」


「そうだな。.....今回はマジに.....怒りしかない。大切な奏多を傷付けられた恨みってやつだな」


俺は言いながら彼方の頭を撫でる。

それから優しく髪を透き通らせてみる。

可哀想にな.....本当に。

いきなり自宅放火とかそんな真似をしてくるとは思わなかった。


「.....奏多。俺は仇を打つからな」


「うん。有難う。お兄ちゃん」


それから俺は奏多を見ながら笑みを浮かべる。

そして俺は窓から外を見る。

豊子が心配だ、と思いながら.....。

病んだりしないだろうか、と考えてしまう。


「奏多。俺.....恋の元に行って来るから」


「.....うん。気を付けて。何だか恋さんに.....申し訳ない」


「何が申し訳ないって?大丈夫だよ」


「.....いや。私が病院送りになるなんてって思ってね。だから.....恋さんに申し訳ないなって」


「.....成程な。.....お前は優しすぎる」


「それはお兄ちゃんもでしょ」


そうだな。確かにな、と言いながら苦笑し合う俺達。

その中で、でも、と切り出した奏多。

それから俺を真剣な顔で見つめてくる。

今回は優しいとかそんなの関係無いから、と言ってくる。

それは確かにな。


「今回は.....本当に許せない」


「お母さんとお父さんに任せるしかないよ。こういうの。私達でどうにか出来る問題じゃないと思うしね。やられた分は仕方が無い」


「まあ確かにそうだな」


「.....でもお兄ちゃん。こんな事を許しちゃ駄目だよ。甘いかも知れないけど今回は戦わないと」


「捕まったから何とも言えないけど。.....でも.....そうだな。厳しくいきたい」


「私がやられたからお兄ちゃんは厳しくいくだろうけどね」


そうだな。

でもそこら辺が甘いのが俺だ。

思いながら居ると。

病室のドアがノックされた。

それから豊子が心配げな顔をしながら顔を見せる。


「すいません。.....私のせいですね」


「.....豊子。.....有難うな。そう思ってくれて有難い。だけど思い詰めるなよ」


「思い詰めては無いですけど.....何かもう.....どうしたら良いんですかね」


「でもこれで暫くお前に関わってはこないだろ。それはそれで良かったんじゃ無いのか?上向きに考えようぜ」


「.....そうやって明るく接してくれるのは先輩だけです。こっちは.....苦しいのに」


「.....」


俺は豊子を見ながら頭に手を乗せる。

そして、逆恨みにしても過激だけど。でも周りからいじめっ子消えたから逆に良かったんじゃないか、と言う俺。

豊子は、そうですね。恋と同じ様にはなりたく無いですから明るくいきたいです、と言ってくる。

俺は、その意気だ、と励ます。

だが。


「.....でも先輩にどれだけ迷惑を掛けたら良いのか.....」


「.....豊子.....」


「馬鹿ですよね。存在が無かったら良いんですかね私は」


「.....落ち着け。.....それは言い過ぎだ」


「でも先輩になんて謝ったら良いのかもう分からないです!!!!!」


豊子は号泣する様に顔に手を添える。

そんな豊子の頭にチョップした。

そして顔を思いっきり驚かせながら顔を上げる豊子。

それから俺に?を浮かべる。


「恋みたいになりたいのかお前は。.....恋だって.....こんな事は望んで無い筈だ」


「そうだよ。.....豊子さん」


「優しいですね。.....先輩」


「俺は前向きに捉えている。今回はな。.....だってお前の周りから不必要な奴らが消えたんだからな」


「ですね。前向きに捉えます.....」


そうだな。今度こそその意気だ。

と言いながら俺は彼方を見る。

奏多は頷きながら俺を見ていた。

取り敢えずは.....どうなるかは分からんが。

何とかしないとな。


「.....それで先輩。家はどうするんですか」


「自宅か?燃えたしな」


「.....じゃ、じゃあ私の家に来ませんか。奉仕します」


「馬鹿野郎。彼女が居るんだぞ俺は」


「でも.....私はそれぐらいしないと満足しないです」


「.....じゃあさ。約束してくれよ」


俺は豊子を真っ直ぐに見る。

そして笑顔を浮かべた。


死なないでくれ。


それだけがお前へのお願いだ、と。

その言葉に豊子は涙をまた浮かべた。

それから、はい.....、と静かに頷く。


「悩むな。前だけ見て生きてほしい。死なないでくれ。それが俺の願いだ」


「.....はい.....」


「それだけやってもらえりゃ後はどうでも良い」


「何でそんなに優しいんですか先輩」


「俺は明るくいこうって決めたんだよ。だって.....そうじゃないとみんな.....離れるからな」


「それが先輩なのですね」


俺は、ああ、と言いながら頷く。

すると豊子は涙を拭ってから笑顔を浮かべた。

やっと見えた笑顔だ。

それから、分かりました。私は死なないです。.....死なずに前向きに生きます、と言ってくる。


「そうだな。.....その意気だ。それにお前のせいじゃないんだから。これ全部」


「これ全部は言い過ぎですよ先輩。.....私のせいです」


「.....そうかな。お前のせいって何処かあったか?イジメで苦しんでるだけじゃないか」


「先輩。ケジメはつけたいです。誤魔化しは無しでお願いします。私はしっかり.....私自身で決着をつけたいです」


「そうか.....そうなら俺はもう止めないよ。でも協力はさせてくれ」


「はい。.....だから先輩。生きます」


言いながら豊子は涙を浮かべながら拭った。

涙は何回も浮かんでいる。

可哀想にな.....、と思う。

今彼女は不登校の方々が集まる場所に通っているらしいが。

フリースクールだっけか。


「花奏先輩。私は貴方が居るから死ねませんね」


「新聞作成から思いっきりぶっ飛んだよな。ハハハ」


「新聞作成は訂正します。.....悪い人じゃないかったって」


「そうか.....まあそれはご自由に、だな」


「はい。絶対に訂正します」


豊子は言いながらグッと拳を握ってから顔を上げて決意する。

俺はその姿を和かに奏多と見ながら。

そのまま見送った。

それから奏多が俺を見てくる。

これで良かったの?お兄ちゃん、という感じで、だ。


「ああ。これで良いんだ。.....俺は何も間違ってない。アイツをサポート出来たからな」


「.....でも2股だよねぇお兄ちゃん」


「喧しいわ。違うっての」


そんな感じで言い合いながら。

俺達はクスクスと笑った。

さてこの先.....家を探さないとな、と。

そう考えながら。

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