第40話 花奏の家、放火される

何にせよ。

まだ豊子の事は何も解決してはいない。

だからこそ豊子を救わなくてはならない。

思いながら俺は.....恋の入院している病室に来た。


「.....恋。大丈夫か」


「.....はい。.....先輩」


「.....正直ビックリだ。お前がこんな真似をするとは」


「私も.....馬鹿でした。逃げたかったんです。それでも」


「.....」


俺はその言葉に。

恋の涙を見ながら涙を浮かべる。

そして、お前は死んで良いわけが無いんだ。だから死なないでくれ。お願いだから.....、と言いながら泣き崩れる。

放課後のオレンジ色の夕日が俺を照らす中、だ。


「.....先輩.....本当に御免なさい.....」


「.....ああ」


暫く俺達は手を握り合って見つめ合っていた。

そうしていると恋が、そう言えば豊子ちゃんの事.....有難う御座います、と切り出してきた。

俺は!と思いながら恋を見る。

恋は微笑んでいた。


「.....イジメを受けていたのを.....救ってくれたって聞きました」


「.....いや。救っては無いぞ。ただ.....今からなんだ。全てが」


「.....そうなんですか?.....でもまた先輩ならきっと全部やってくれるんでしょうね。.....私の王子様ですから。.....白馬の王子様ですから」


「.....白馬の王子様って言える様な事はしてない」


俺は言いながら恋を見る。

そうしていると病室がノックされた。

そしてドアが開いてから.....恋の母親が顔を覗かせる。


それから、大丈夫。恋、と聞く。

驚いた。

まさか来るとは思ってなかったから、だ。


「お母さん.....」


「.....御免なさい。.....全部の責任は私にある。だから幾らでも殴って頂戴。私を」


「.....殴る気はないよ。.....でも.....怒りたい気分」


「.....そうよね.....そうよね.....」


そんな感じで会話をする2人を見ながら。

俺は真剣な顔のまま見つめる。

すると恋の母親が泣きながら崩れ落ちる。

俺はその姿を見ながら涙を浮かべた。


「.....私が全て悪いから。.....だから.....恋。.....貴方は思い詰めなくて良いのよ.....死ぬべきは私なの.....」


「.....お母さん.....」


「.....私が馬鹿だった.....本当に馬鹿だった.....何もしなければみんな幸せだったのに.....」


「.....」


懲役になった事を。

そして刃物を振り翳した事を。

全てを後悔しているんだろうと思える。

というかずっと後悔はしているんだとは思うけど。

思いながら俺はジッとその姿を見る。


「.....恋」


「.....何ですか.....先輩」


「.....お前の事。ずっと愛している。それは愛じゃないけど.....仲間として愛している。.....だから死なないでくれ。お願いだ」


「.....はい。.....今度は絶対に死なない様にします。全て.....全てが満足しましたから」


「.....頼む」


蓮子さんを見る。

そんな蓮子さんも俺を見てきて頭を下げる。

俺は少しだけ2人きりの方が良いか、と思い廊下に出ようとした。

すると蓮子さんが俺に向いてくる。


「.....花奏さん。.....貴方にはどんな恩返しをしたら良いのでしょう。.....私はもう何も思いつかないです」


「.....貴方から恩返しを受ける必要はないです。言いました通り。家族で一緒に元通り暮らして下さい。それが最大の望みです」


「.....神様の様ですね。先輩」


「.....俺は神様じゃないさ。神でもなければブッダでもない」


「.....」


そして俺は恋を連呼さんを残してから。

そのまま廊下に出る。

それから歩いて行くと。


目の前の休憩室。

そこに.....吉川が居た。

何しているんだこの馬鹿。


「.....恋さんの事.....悲惨だったですね」


「何を薄らごと他人みたいな。.....糞食らえや」


「.....まあそう言わないで下さい。.....僕も重々に反省していますから」


「.....そうか」


「.....はい。それでとっておきの情報を持ってきました」


「.....は?何の情報だ」


この世界にネットがあるのはご存知ですよね?、と言ってくる吉川。

馬鹿かな?そんな事ぐらい知っているわ。

思いながら俺は吉川を見る。

すると吉川は、ですね、とクスクス笑う。

それから、ここからが本題ですが。クラスメイト裏垢というものをご存知でしょうか、と言ってくる吉川。


「.....何が言いたい」


「.....僕ですね。.....豊子さんをイジメた方々を特定しました。ネット特定班なんです」


「.....だから?.....何が言いたい」


「.....復讐しませんか」


「そんな馬鹿な真似は反する。俺の意義にな。すまないが帰ってくれ」


「.....あらら。残念です。.....それは」


吉川は苦笑しながら歩き出した。

それから、まあ何かあったら声を掛けて下さい、と言ってくる。

そしてそのまま帰って行く。

俺は退屈紛れにそのまま休憩室にあったテレビを点けた。

ったく吉川の野郎め、と思いながら。


「.....火事のニュースか.....って.....」


火事のニュースがあっていた。

速報で、だ。

俺はその火事の火元を見て唖然とする。

そこに映っていたのは.....消防車が5台。

俺の家だったから、だ。


「.....そんな.....馬鹿な.....」


俺はジュースを落としてしまった。

だがそんな事を気にしている場合ではない!!!!!

ど、どうなっているんだ!?


俺は慌てて電話しようとしたがスマホを震える手で落とした。

駄目だ.....ヤバい。

震えが止まらない!!!!!

どうなっているんだよマジに!!!!?

すると美香から電話が掛かってきた。


『花奏!ニュース観た!?貴方の家が.....!!!!!』


「.....今電話しようとしている!奏多に!!!!!」


『どうなってんの!?本当に.....!!!!!』


「俺が知るか!?馬鹿なのか!!!!!」


俺達は恋人同士ながらも言い争っていたが。

そのうち警察署から電話が掛かってきた。

看護師さんが電話を引き継いでくれたので、だ。

俺は電話を掛ける。

すいませんが警察署にいらっしゃって下さいますか、と。


俺は大慌てでそのまま警察署に向かう。

この街の警察署に、だ。

そして言われた事。


それは.....5人ほどの少年達と少女達による放火であったという事だった。

何者による仕業かは分からないそうだ。

奏多が煙を吸って.....重傷を負った。

信じられない.....こんな馬鹿な.....馬鹿な事が.....!!!!!

何が起こっているんだ.....!!!!?

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