第39話 愛情だと思います
「大変お世話になりました。本当に」
「.....いえ。大丈夫ですよ。お兄ちゃんとか私は.....その。引き留めただけですから」
「そうだな。奏多。.....お前の力もあったから」
リビングに招いてから。
恋の母親は涙を浮かべながらハンカチで涙を拭う。
俺はその姿を見ながら真剣な顔をする。
奏多も笑みを浮かべていた。
そして見ていると恋の母親は顔を上げる。
それから俺達を見てきた。
「.....私は.....何が間違っていたのか。.....本当に考えなくてはならないです」
「.....でも思い詰めないで下さいね。.....良いんですが.....」
「そうです.....ね.....本当に有難う御座います」
「.....私.....とにかく死ななくて良かったですって思います」
奏多は言いながら真剣な顔をする。
俺はその姿を見ながら恋の母親を見る。
恋の母親は、ですね、と言いながら複雑な顔をする。
その姿を見ながら居ると恋の母親は何かを差し出してきた。
それは先程の紙袋だ。
「.....つまらない物ですが.....」
「.....お茶淹れましょうか」
「そうだな。奏多。淹れてやってくれ」
「お気を使わないで下さい。.....有難う御座います」
恋の母親は慌てながらも頭を下げる。
そして奏多を見送ってから俺を見てくる。
よく出来た妹さんですね、と言いながら微笑む。
俺は、そうですね。恋と出会った事も影響しています。.....楽しいです。今が恋さんの存在は不可欠です。
「.....そうなんですね。.....恋は.....そんな感じなんですね」
「.....そうですよ。.....彼女は要らない子じゃないです」
「.....そう言ってくれて心が軽くなります」
「.....どんな人でも.....この世に生まれた限りは絶対に必要な筈です。それを学ばせてもらった人が居ます。.....その分を生きますけどね」
「そうなんですね.....」
そうだ。
俺にとっては.....出会った人で必要じゃない人なんて居ない。
まあ一部論外も居るけど。
だけどそれを学ばせてもらったんだ。
それは.....美鶴に、だ。
「.....恋は悩んでいました」
「.....」
「.....何も出来なかった私の責任ですね。.....全部.....」
「果たしてそうでしょうか」
「.....え?」
俺は思うんです。
貴方はもう十分に反省したと思います。
だから.....そんなに悩まないで下さい。
と言いながら俺はジッと見据える。
恋の母親は、そうなのでしょうか、と言いながら涙を浮かべる。
「.....私は.....役立たつな気がします。.....あの子も.....」
「.....あの子?」
「.....はい。.....えっとですね。長野豊子さんです。私達が預かっています」
「.....そうなのですか?」
「はい。親戚の子として、です」
でも守りきれてないです。
同じ学校に通わせたのは良いのに.....本当に役に立たないですね私は、と涙を浮かべてから泣き始める。
俺は、豊子なら俺が守ってみせます、と言う。
え.....?、と反応した恋の母親。
「.....豊子は守ります。これから先、俺達が、です。.....その代わりに約束して下さい。家では豊子を守って下さい」
「.....!」
「それが貴方の罪滅ぼしになる筈です」
「.....分かりました。.....有難う御座います」
お茶を置きながら俺を見てくる奏多。
俺はその姿を見ながら、奏多。お茶もそうだがお菓子を出してくれるか、と話す。
すると奏多は、もう用意したよ、と言ってくる。
さ、流石ですね。
「.....有難う。奏多」
「.....うん。大丈夫だよ」
「所で何の話?」
「.....豊子。.....ああ。俺の後輩の話だ」
「.....あ。そうなんだね」
俺は頷きながら奏多を見る。
すると奏多は、じゃあその子の話なんだ、と笑顔でまた参加する。
俺はその姿を見つつ目の前の恋の母親を見る。
是非飲んで下さい。.....奏多のお茶は絶品ですから、と促した。
「.....そうなのですね.....それでは」
「.....はい。粗茶ですが」
それから恋の母親はお茶を飲む。
そして、懐かしいですね。麦茶ですか?、と言ってくる。
俺は、そうですね。これは麦茶です、と答える。
麦茶が一番好きなので、とも。
「.....私は母親としてはこういうのを十分に淹れてやれませんでした。.....だけど恋は.....私にお茶をよく淹れてくれます。それは.....何の感情を持って淹れてくれているのかは分かりませんが.....」
「.....愛情でしょう」
「.....え?」
「.....きっとそうだと思います」
俺達は頷きながら恋の母親を見る。
恋の母親は俯きがちに、そうですかね、と言う。
その姿を見ながら、はい、と答える俺達。
そして、反省ばかりの人生かも知れません。でも一歩を踏み出すのも.....大切だと思います、と俺が答えた。
「恋さんはきっとお母さんに対してはたっぷりの愛を注いで居たいって願っています」
「.....そうだな。奏多。きっとそうだと思うぞ」
「だよね。お兄ちゃん。誰だって.....愛を注がれてそれに反発する人なんて居ないしね」
「.....私は学ぶ事ばかりですね。私の方が年上なのに.....同い年の方から学ぶ事が多すぎる気がします。.....母親として何も出来なかった分、です」
「母親としては十分に機能を果たしていると思います」
言いながら俺達も、いただきます、とお菓子をもらう。
お菓子は所謂、羊羹だった。
俺はその羊羹を食べながら、美味しいです、と恋の母親を見る。
恋の母親は、良かったです。それはオススメのお店の.....分なので、と答えた。
「.....恋にも食べさせてやりましたか?それと旦那様にも」
「.....はい。.....これから食べさせてあげようかなって思っています」
「.....それが良いでしょうね。.....ね。お兄ちゃん」
「.....そうだな」
それから俺達は笑みを浮かべて頷き合った。
そして恋の母親を見る。
そんな恋の.....母親は俺達に対して涙を浮かべていたがそれを拭ってから。
そのまま俺達に笑みを浮かべた。
「.....有難う御座いました」
「.....何がですか?」
「.....全てを救ってくれて。私は.....感謝しかないです。.....一家を代表して.....お礼を申し上げます」
「.....俺は当たり前の事をしただけです」
「私もお兄ちゃんが当たり前の事をしていたから当たり前の様に付いて行っただけです」
「.....あなた方は本当に良いご家族ですね。私が羨む様な」
「これから先は.....恋が、貴方が、旦那様がきっと幸せになりますよ」
俺は言いながらそのまま恋の母親を見る。
ですね。今からが.....きっと勝負なんです、と答えた。
そうしてから、花奏さん、と向いてくる。
学校の様子は私には分かりません、と言いながら。
「.....豊子ちゃんの事.....こんな形で任せるのは情けないですが宜しくお願い致します」
「大丈夫です。.....きっと俺なら守れますんで」
「.....そうだね。お兄ちゃん」
それにその。
恋愛されたから.....、と思う。
静かに赤面する俺。
すると奏多がハッとして俺を見てきた。
ジト目になってくる。
「.....お兄ちゃん.....まさか」
「ちょ、ま!?俺は何もしてねぇ!!!!!」
「.....また女の子を落としたんだね.....お兄ちゃん.....」
「.....」
「あらあら。若いって事ですか?」
俺は真っ赤になりながら大慌てになる。
そして盛大のため息を吐いた。
確かに惚れられたけどな!
だけど.....それとこれとは別だろう!
思いながら俺は額に手を添える。
それに対して2人は笑った。
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