第38話 おお勇者よ。またやってしまったのか其方は

「ふむ.....そうか」


麻里子先生は悩みながら。

壊れたカメラを見つつ眉を顰める。

どうもかなり怒っている様に見える。

俺はその姿に、半殺しだけは止めて下さいね、と告げる。


すると麻里子先生は、まあ何というか竹刀でぶっ殺そうかと思ったが、と言ってくる.....ああやはりか。

そんな感じがしたしな。


「.....まあそれは冗談だが。この学校でイジメとはしかしまあ許し難いな」


「.....ですよね」


「.....でも私は私自身で解決するです!私.....自分が悪いですし」


「.....そんな事は無いよ。豊子」


「ああ。大人に頼るのも正義だぞ。長野」


そんな事を言いながら麻里子先生はお茶を入れる。

そしてお茶菓子を出してきた。

相変わらずのヤンキーの聖母の様なそんな感じで。


するとそれを見た豊子は、こ、こんな場所でお菓子食べて良いのですか?、と言ってきた。

麻里子先生は、まあまあ。食え食え。大丈夫だ。上には伝えておくから、と言う。

まあ伝える気は無いだろうけど。


「.....麻里子先生優しいですね!」


「.....そうだろ?俺のお気に入りの先生だ」


「.....うーん。ちょっと待て。お気に入りとはどういう意味かな?千草」


「まあその。言葉通りの意味っす」


「ほほーう」


麻里子先生はジト目で俺を見てくる。

俺は苦笑しながら、でもどうします?この問題、と言ってみる。

すると麻里子先生は、大丈夫だ。任せておけ、と言い出した。

そして、なあ長野。.....お前の担任は末島だったな?、と聞き始める。


「あ、はい!なぜ知っているでナスか?」


「そりゃ知っているくさ。だって末島は高校時代からの私の後輩だからな」


「.....」


「.....」


あの。本当においくつ?先生。

後輩ってドン引きなんですけど。

思いながら俺達は苦笑する。

すると、まあでも末島なら話せばいけそうだな、と顎をひと撫で。

そしてニヤッとした麻里子先生。


「.....とにかく。末島に話しみろ。それとも呼ぶか?末島を」


「.....いえ。私.....頑張ってみます!」


「.....そうか。まあそうは言っても千草が手を出すとは思うがな」


「.....え!?花奏先輩.....」


「手出しはあまりしないけど不安だからな」


「.....ああもう。分かりました。.....でも花奏先輩と.....一緒か.....嬉しいな」


「.....?.....何か言ったか?」


何かぶつぶつと呟いている豊子に聞く。

だけど豊子は、な、なでもなあ友瀬n愛のは!?、と訳の分からない言葉を言って動揺した。

何でだよ、と思いながら目の前を見ると。

麻里子先生が鋭い眼差しで俺を見ていた.....。


「.....そうか。お前はまたやってしまったんだな」


「.....え?.....いや。ちょっと意味が.....」


「また女の子に惚れられたんだな?」


「.....は!?」


「.....ふぁえ!?」


俺は直ぐに横でお茶を噴き出した豊子を見る。

豊子は真っ赤になりながら指を動かしながら俺をチラチラ見てきた。

ああこの反応はマジなんだな.....。


俺は考えながら豊子を見る。

豊子はモジモジしながら俺を見上げてくる。

真っ赤になっていた。


「アッハッハ!お前彼女が居るだろ?千草?あぁん?」


「.....い、いや?豊子。俺は.....彼女居るからな?何かその。恋をされても困るぞ?」


赤くなる俺。

するとその言葉に、分かってます!、と言う豊子。

そして俺をジッと見てくる。

それから、私の恋は叶わぬ恋です。.....でもこれで良いんです、と豊子は言ってくる。

つまり.....彼女は覚悟の上で俺に惚れたのだろう。


「.....豊子.....」


「私は長野豊子として花奏先輩を応援したいです」


「.....」


何も言えなかったが。

豊子は固い決意の眼差しで俺を見ていた。

俺はその姿を見ながら頷く。

そして麻里子先生を見る。

麻里子先生は俺達を見ながら、青春だな、と言いながら。


「でもそれと今の問題は話が別だ。.....取り敢えずは末島を呼ぼう」


「.....確かにですね。末島先生なら信頼出来ると思います。それに麻里子先生の教え子ですから」


「あ、あまり.....その。大人の人には迷惑は.....」


「.....これは迷惑じゃない。キツイ時は他人に頼るんだ。豊子」


そして俺は頭を撫でる。

豊子はボッと赤面している。

あ。またやっちまった。

俺は考えながら慌ててから、す、すまない、と謝る。


「.....良いんです。.....好きな人にこうされるの好きです」


「あーっはっは!二股だな!見事に!」


「教師が二股言うな!?」


「だってそうだろ。二股は二股だ。.....だけどまあ.....こんな二股なら許される気はするが」


「教師が言ったら駄目ですよそれ!?」


俺は大慌てになる。

すると笑っていた麻里子先生が、それじゃ、と電話を掛けた。

その相手はどうも末島先生の様だ。

それから間も無くして女性新任教師の末島先生が来る。


「よお」


「.....な、何でしょう?麻里子先輩」


「この学校では麻里子先生だけどな。.....えっとな。.....実はイジメ案件があってな」


「.....あ。.....そ、そうなのですね」


「.....ああ。.....そこの彼女がな」


そして末島先生は豊子を見て、そうなんですね、と悲しげな顔をした。

俺はその姿を見つめる。

すると麻里子先生が、暫くは保健室登校とかにした方が良いかもな、と言ってくる。

末島先生は、アンケートも取らなくちゃ、と言っている。

だけどそれに対して麻里子先生は、そんなもん何の役にも立たん、と話した。


「.....残念だが嘘を吐く馬鹿にそんなもんしても糠に釘だ。嘘は平然と吐けるからな」


「.....じゃあ麻里子先輩.....はどうするんですか?」


「だから私は麻里子先生だから。.....そうだな。.....長野。またクラスメイトと仲良くなりたいか?」


「それは当たり前です。.....だって一度しかない学生生活です.....」


「.....そうか。.....じゃあ長野。.....取り敢えず私がいじめっ子から話を聞く。.....その間は.....学校を休んでも良い。私が出席に関してはどうにかする」


「.....麻里子先輩.....」


良い加減にそれは止めてちょうだいな?

私は麻里子先輩じゃないから、と言いながら苦笑する麻里子先輩。

そして改めて豊子に向く麻里子先生。

それから、学校を休んで休憩するんだ。準備が出来たら登校してくれ。今は休憩が必要だよ、優しく諭した。


「.....でも私は.....何よりも花奏先輩の記事が.....」


「.....そんなもん。また登校すれば出来るよ。大丈夫だ。しっかり休んで」


「.....はい。.....花奏先輩が言うなら」


「.....よし。取り敢えず末島先生。準備に取り掛かるぞ」


「.....はい」


それからその日から暫く三者面談などをする為に豊子は休む事になった。

まあ何というか.....本当に色々あった.....な。

豊子が俺を好いているとか。

そんな衝撃的な事とか、であるが。

俺はそう考えながらも。

良かった、と思ってしまった。


「.....豊子。.....学校は無理してくる場所じゃない」


「.....花奏先輩.....」


「.....だから休んだ方が良い。休養が必要だ」


「.....はい。花奏先輩が言うなら」


そして豊子は柔和な顔でおとなしく指示に従った。

俺はその姿を見つつ帰宅する。

すると.....自宅の目の前に恋の母親が居た。

頭を下げて紙袋を持っている。

どうしたのだろうか。

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