第37話 花奏の静かな怒り
俺を新聞記事にしてどないすんねん。
そう考えながら俺は活動をしていたが。
ずっと.....その。
長野に付き纏わられている。
これはどうしたものか.....。
トイレとかもそうだが.....付き纏わられている。
思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。
「長野」
「はい!」
「.....取り敢えずは偵察だと思うけど。.....トイレだけは止めてくれるか。盗撮になるぞ」
「はい!嫌です!」
「.....威勢だけは宜しい」
これは困ったもんだな。
俺は思いながら.....見ていると。
うわ。またやってるよアイツ、と。
長野を馬鹿にする様な目で女子達が。
つまり1年棒が見ていた。
「.....」
「.....お気になさらないで下さい!」
「.....イジメられているのか」
「.....まあ.....そこそこです!」
「.....そうか.....」
よく見れば。
カメラは修繕した箇所が沢山ある。
つまり何回か壊されたのだろう。
俺は溜息を吐きながら、長野。そもそも何で俺を新聞に?、と聞くと。
長野は、はい!この学校で有名だからです!、と答えた。
「.....嘘はいい。.....長野。本当はどうなんだ」
「.....!.....いえ。嘘は吐いてません!」
「.....実際は何かあるんじゃないか。.....残念だが俺に嘘は通じないぞ」
「.....そ、そうですか.....」
長野は困った様に視線を泳がす。
それから.....意を決した様に顔を上げた。
そして俺を見てくる。
恋お姉ちゃん.....を.....、と言いながら。
え?、と思いながら見る。
「恋お姉ちゃんの事が心配です」
「.....お前。恋の親戚か?」
「.....唯一の親戚です!」
「.....そうか。.....そうだったんだな。.....それで付き纏っているのか俺に」
「はい!」
俺はハッとしながら長野を見る。
長野はカメラのスワイプで俺の表情を確認したりしていた。
俺は盛大に溜息を吐く。
そして、お前が心配している恋だが.....大丈夫だ、と言う。
長野は顔を上げた。
その長野の頭を撫でる。
笑みを浮かべた。
長野は、ふえ?、的な感じだ。
俺は、イジメ。何かあったら言えよ。俺達が何とかするから、と言う。
「.....お優しいですね」
「.....これは優しいんじゃない。当たり前の事だ」
「.....いえ!優しいであります!」
「おう。威勢だけは宜しいな」
長野はニコニコしながら俺を見ていた。
俺はその長野を見ながら、友人は居るか、と聞く。
すると、居ません、と答えた。
なら話は早いな。
「.....俺達が友人になる」
「.....え?.....い、いえ!それはご面倒を.....」
「.....恋の親戚だろ。.....話は早い。.....面倒じゃ無いしな」
言いながら俺は美香を呼び出した。
すると美香が直ぐにやって来る。
目を丸くする長野。
そして美香が聞いてくる。
「この子は?」
「.....俺の友人だ」
「.....え?そうなの?花奏」
「.....そう。だからお前の友人でもある」
「.....!.....あ。そういう意味ね。.....初めまして。お名前は?」
「わ、私は長野豊子って言います!」
豊子ちゃんね。ゴメンね。花奏が迷惑を掛けてない?、と聞く美香。
そして苦笑する。
俺はその姿を見ながら、豊子。コイツも友人だ。お前のな、と言う。
豊子は唖然としていたがやがて少しだけ考えて。
「.....嬉しいです」
と笑顔で一言。
それから、まだ紹介したい奴は沢山居るけど先ずは未来だな、と美香に向く。
美香は、だねぇ、と言いながら笑みを浮かべる。
保健室行くぞ、と豊子を誘う。
「.....え?」
「未来を紹介してやるよ」
「.....え?え?」
「行くよ。豊子ちゃん」
そして俺達は豊子を保健室に連れて行く。
すると未来が顔を上げた。
え?誰かな?、と言ってくる。
俺は豊子を見た。
「.....この人もお前の友人で良い。仲良くしてくれるぞ」
「わー!カメラ持ってる。可愛い子だね。花奏ちゃん」
「.....」
俺の後ろに隠れる豊子。
その姿を見ながら、未来。友人になってくれないか。コイツの、と話す。
すると未来は、うん!良いよ!、と気軽に挨拶した。
そんな姿に、未来は頼りになるからな、と笑みを浮かべる。
「そ、そうなんですね!」
「ああ。.....だからまあ俺達3人に先輩として頼って良いからな」
「.....は、はい!」
「それにしてもカメラ良いなぁ。大きいなぁ」
未来は笑顔になりながら、もし良かったら撮らない?友人の記念で、と豊子に言う。
豊子は、そういう感じで使うものでは無いです、と言う。
えー。残念、と言う未来。
ちょっと悲しげな感じで、だ。
そんな様子に流石の豊子も黙ってなかった。
「.....ちょっとだけですよ?」
「.....え?良いの!?じゃあ撮ろうよ!みんなで!」
「じゃあ撮るか」
「豊子ちゃんも一緒に!」
それから俺達はそのままシャッターを下ろして撮った。
なかなか良い出来栄えの写真が完成し。
そして豊子が友達になった。
豊子は.....本当に嬉しそうに俺達を見て写真を見ている。
その顔は安心した様な感じだった。
☆
「その!花奏先輩の魅力!しかと目に焼き付けました!」
「.....そ、そうか。そいつは良かった」
放課後の事。
カメラを触りながらの豊子にそんな事を言われた。
俺はその言葉に苦笑しながらも、良かったな、と言う。
すると豊子は大きく頷いてから。
下駄箱から去って行った。
1年生の下駄箱はここじゃ無いのだ。
「まあ.....彼女なら大丈夫そうだな」
俺は思いながら、あ。そう言えば豊子に言い忘れた、と思ってハッとしてから豊子を追い掛ける。
写真の事で、だ。
だが.....その引き返した事により。
俺は衝撃的な場面を目にする事になる。
「.....とよ.....」
そこまで言い掛けて俺は見開いた。
そして眉を顰めながらその姿を見る。
そこには.....豊子のカメラを取り上げて楽しんでいる.....リア充が居た。
そして必死に取り返そうとする豊子。
「返して!お願い!」
「毎回毎回だけど盗撮してんじゃないの?コイツ」
「そうそう!アッハッハ」
そしてカメラを思いっきり地面に叩きつけてから。
そのまま馬鹿にするリア充。
俺は静かな.....怒りが.....湧いてきた。
というかそうだな。
小学校時代の怒りが湧いた。
リア充は立ち去る。
そして雨が降ってきた。
「.....豊子」
「.....見ないで下さい!」
「.....」
「.....その。何度でも写真が消えても良いです。.....でも今日だけは.....私が大切な1枚の写真が消えてほしくなかった.....です」
「.....俺だったらぶん殴っても良いが。アイツらを」
そんな事をしないで下さい。
それは望んでいません、豊子は言う。
だが、と言うが。
豊子は、良いんです、と笑顔を浮かべた。
ボロボロの笑顔を、だ。
髪が雨で濡れる。
「.....私はこういう運命に合う運命なんですよ。アハハ」
「.....」
拳を握り締めて俺は豊子を抱き締める。
そして、俺もな。実は前イジメられていたんだ、と告白する。
だからお前は強いな、とも。
豊子は愕然としながら俺に聞いてくる。
それは本当ですか?、と。
「.....ああ。.....だから怒りが湧いた」
「.....駄目です。怒りが湧いても。.....手出ししたら負けですよ」
「.....お前本当に優しいな」
俺は強く抱き締める。
そして頭を撫でた。
それから豊子に向く。
俺達はまだ死んで無い。思い出は何時でも撮れるが.....でも今の状況は俺の知り合いの先生に相談するぞ、とも。
「.....こんな連鎖は許せない。ずっと続いちゃ駄目だ」
「.....花奏先輩.....」
「麻里子先生知っているか?その先生だが」
「.....はい。知ってます」
「.....その人の部屋に行くぞ。今から」
怒りは豊子のお陰で収まったが。
この負の連鎖は終わらせないと駄目だ。
俺の二の舞をさせる訳にはいかない。
思いながら俺は豊子を立ち上がらせてから。
そのまま麻里子先生の部屋に向かった。
俺のイジメを受けた時みたいな。
誰も手助けをしてくれない世界は作りたくない。
だから、と思いながら。
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