第6章 矢澤恋

見抜けなかった俺は死ぬべきか

第32話 転落していく全て

吉川は反省すると誓った。

俺はその事に関しては賛同する。

何というか被害届も出さないと言った。

これはこれで良いのだろうか。

悩む所だが.....。


美鶴の母親だがその件もあり釈放された。

そして刑事事件には発展しない展開になりそうだ。

俺はその事にホッとする部分もあった。


取り敢えずは.....また落ち着いた部分もあるな。

思いながら俺達は.....美香の親父さんに放課後に呼び出されて居た。

俺達は応接間の院長室に居る。


「.....今回の件は.....私のミスだ。.....謝罪に値する。すまなかった」


「そう.....ですね。確かに」


「.....お父さん.....」


「時間が無かったのだ。.....私は美香に幸せになってほしい為に焦りすぎていた。.....だから事がデカくなってしまったのだ。.....反省しかないだろう」


「.....」


美香の親父さんはそう言いながら頭を下げた。

そして、時に。その話は置いておいて。.....お前達は付き合い始めたのか?、と聞いてくる。

その言葉に俺と美香は向きながら。

そのまま手を握り合った。


「はい」


「.....うん。お父さん」


「.....そうか。.....お似合いだと思う。今回の件を見るなり。私は幸せを急ぎ過ぎていた様だな」


「.....」


「.....それからもう一つ話がある。.....お前達は矢澤恋さんを知っているか」


「.....え?恋が.....どうしたんですか」


彼女だが.....重度のうつ病になっている、と告白してきた。

俺は!と思い浮かべてから。

そして美香を不安な顔で見る。

え!?嘘だろ!?そんな顔に見えなかったぞ!?


俺は愕然として思いながら親父さんを見る。

親父さんは、勘違いしないでほしいのは。これは.....彼女の親からの虐待の様だ、と告白してくる。

君のせいではない事だ、と言ってくる。

私の元に今、診察に来ているんだが、と告白してくる。

ああでもこの事は内密にしてくれ、とも。


「.....恋さんから任せられたから言っておく。.....何というか必死にせがまれてな」


「.....恋ちゃん.....」


「.....彼女の父親は窃盗症がある」


「.....え.....」


その為に何度も警察に捕まっている、と言ってくる親父さん。

俺は愕然として見る。

だがそれ以上は話せない。

それ以外は彼女から聞いてくれ、とも言ってくる。

俺達は顔を見合わせて俯く。


「.....恋は.....そんな目に遭っていたのか.....」


「.....そうだね.....」


「.....窃盗症は窃盗をする事が自分を見てくれる。つまり.....心の安定に繋がっている部分もあるから」


「.....」


個人情報になるのでね、と言いながら、私は診察に戻る、と親父さんは立ち上がりそれからそのまま歩き出した。

俺はその姿を見送ってから、お前達も早く帰りたまえ、と言ってくる親父さんを見つめる。

美香も複雑そうな顔で頷いた。



「そんな事になっているなんてね」


「.....窃盗症.....か」


「.....それは苦しいよね。親が何度も捕まる.....窃盗で.....堪らないよ。壊れちゃう私なら」


「.....そうだな。.....確かに」


俺達は屋敷から出てから。

そのまま美香に見送られる。

美香がハグしてきた。

そしてキスをしてくる。

俺は!と浮かべながらそのまま見る。


「.....愛してる。花奏」


「.....ああ。俺もだ」


「.....恋ちゃんの問題。解決しようね」


「.....そうだな」


そして俺達は頷き合ってから。

そのまま俺は青空を見ながら帰宅した.....その日。

大丈夫と思っていた恋がカッターで自殺を図った。

リスカを起こし.....病院に運ばれた.....。



「.....何でこんな不幸が連続するんだ!!!!!」


俺はドンッと病院の壁を思いっきり殴る。

そして出血する俺の手を見る。

それから号泣した。

何で.....恋.....嘘だよな.....。


未来が号泣する。

そして駆け付けた美香も泣きじゃくっていた。

恋は自殺を図ってから。

ICUに運ばれる羽目になった。

出血していたから、だ。


「花奏.....死んじゃったら嫌だよ.....こんなの嫌だよ.....」


「そんなもん.....俺だって.....!!!!!」


あの笑顔の奥で.....必死に悩んでいた事に。

俺は気が付かなかった。

つまり.....絶望に、だ。

俺は.....涙が止まらなかった。

総合病院の空を見上げる。


「千草!遅くなった!.....その。矢澤は.....」


ICUの前に居た俺達の元に。

麻里子先生が心配げに俺達の元に駆け付けて来た。

俺はその姿を見ながら涙を拭う。

それから、麻里子先生。来てくれて有難う御座います、と告げた。


「.....あんなに元気だったのに.....私ですら見抜けなかった。教師の恥だな。私は.....」


「.....そんな事は無いです。そもそも俺達ですら見抜けなかったんですから」


「.....信じられない行動だ。.....何故こんな事に.....なってしまったのだろうな.....」


「.....ですね」


ICUとか見たく無かった。

そもそも恋がその場所に入院しているのを.....見たく無かった。

死にたい。

美鶴の時もそうだが。

辛さを見抜けなかった俺は.....恥だな。

馬鹿野郎なのかもしれ.....


そこまで想った時。

何か暖かい風が吹いた気がした。

それも病院なのに、だ。

俺は!と思い浮かべながらカーテンの空いている場所を見る。

そこから風が吹き抜けた。


『花奏。大丈夫。恋ちゃんは救ってみせる。クヨクヨしない。君らしくない』


「.....!.....みつ.....る?」


『大丈夫だよ。救ってみせる』


俺はその風に号泣し始めた。

本当によく助けてくれるよな。

美鶴は、だ。

思いながら.....俺は号泣して崩れ落ちた。


頼む美鶴でも。

神様でも。

恋を.....大切な仲間を助けてくれ。

俺は思いながら.....膝を曲げて泣き崩れた。


「千草!矢澤が目を覚ました!」


「.....え?」


先生の絶叫に俺は顔を上げる。

そしてガラスを叩く。

そこには.....目を覚ました恋が。


俺達を見て涙を浮かべる。

奇跡って起きるんだな、と。

そう感じた瞬間だった。

重傷で瀕死だったらしかったのに。


「.....また助けられたな。美鶴」


そんな言葉を言いながら俺は泣き崩れた。

みんなと抱き合って、だ。

ホッとしてしまった。

本当に安心だ。

これ以上の安心感は無い.....ぐらいに。

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