第31話 吉川の決断と俺達の恋愛と
美香の婚約者を果物ナイフで刺した美鶴の母親が警備員によって捕まった。
そして刺された吉川は治療を受ける。
あまり深い傷では無い様だが。
だが.....それなりの治療の様だった。
「.....花奏。あまり思わないで。色々と」
「.....悩んではいないけど.....でも残念だ。本当にな.....でも吉川を刺したい気持ちは分からんでも無いんだよな」
そんな会話をしながら。
翌日、学校が早かった日に俺と美香は2人でファミレスに居た。
外は雨が降っている。
つまりちょっと暗い感じだ。
俺が美香を好きだとそう言ってから事態は急展開した。
「.....ねえ。花奏。私って幸せになって良いのかな」
「.....それはどういう意味だ?」
「私が周りを不幸にしてないのかな。そんな感じがしてならないから」
「.....お前は何を勘違いしている?.....お前が居るから俺はお前を好きになれたんだから」
「.....そうかな.....でも.....私が存在したから.....」
思い詰めるとかお前らしくない、と言う俺。
それから笑みを浮かべた。
そして.....見つめる。
俺は、なあ。美香。俺としてはな。.....吉川には良い薬になったと思うんだよ、と言ってみる。
「吉川には確実に良い薬になった。.....こんな言い方をしたら駄目だけどな」
「.....そうなのかな」
「.....お前はそう言うが。吉川は確実には変われなかった筈だ。俺的にはな。.....だから.....刺されて良かったと思う。.....だけどこれは全面的には肯定出来ない。人間は平等であるべきだから」
「.....花奏って何か時折大人だよね。.....何ていうか」
「時折大人.....か。まだクソガキだけどな」
「.....でも大人だよ。.....私から見れば」
そんな感じの会話をしていると。
こんにちは、と声がした。
顔を上げるとそこには.....未来の母親。
つまり鳴さんが居た。
俺は?を浮かべながらその姿を見る。
「.....奇遇ですね」
「.....どうしたんですか?」
「つい見掛けたので.....お声を掛けさせてもらいました。.....その。お辛い中だと思いますが.....」
「.....はい」
そんな会話をしていると。
鳴さんは、横良いですか、と頭を下げてくる。
俺達はその姿に頭を下げる。
それから美香が、横どうぞ、と言う。
「.....実は偶然お見掛けしましたが.....その。お話もありまして。丁度良かったと思っております」
「.....そうなのですか?」
「はい。.....こうやって対面で傾聴するのも。社会福祉士という仕事なのですよ」
「.....そうなんですね」
俺達は顔を見合わせながら笑みを浮かべる。
花奏さん、と向いてくる鳴さん。
それから俺を見据える。
俺は?を浮かべて鳴さんを見る。
「傷付いたのは表面だけでは分かりませんから。.....皆さんの心が心配です」
「.....有難う御座います。.....その。.....美香が心配です」
「.....そうなのですね?」
「.....はい。.....実は.....私、生きてて良いのかなって」
「.....そうですね。.....美香さん。貴方はこの世界に必要とされています」
私なんかが言える立場では無いです。
でも.....今なら言えます。
これぐらいしか言えませんが私は貴方に生きていてほしいと言えます。
私が.....過ちを犯した。
それを貴方もしてはならない、と、と言ってくる鳴さん。
俺はその姿を見ながら飲み物を飲む。
「もう一度言いますが私なんかが言っても仕方が無いです。でも.....美香さん。.....私なんかと同じ様な情けない姿にならないで下さい。私の様な.....全てを恨む様なそんな変な性格に」
「.....!」
「私が戻って来れたのは花奏さんと未来のお陰です。囚われた奇跡です。この沼に嵌ると.....絶望しかありません」
「.....鳴さん.....」
美香は涙を浮かべた。
それから、ですね、と言いながら涙を流す。
そして俺は、美香。生まれてきた事に.....有難うな、と言う。
美香は、うん、と頷きながら号泣し始める。
「私は.....生きていて良かったんだね」
「.....これからは全てを想わなくちゃいけないかもしれないが.....だけど。.....俺は小さく言ってもお前は必要とされる事を認識してほしい」
「お父さん.....もそうだけど.....必要とされてなかったって思っていたから」
「俺達は必要としているから」
俺は言いながら美香の肩に手を置く。
それから椅子に腰掛ける。
そして、俺は美香の人生も守りたい。.....だから死なないでくれ、と告げる。
鳴さんは、私達は敵同士でした。それでも手を差し伸ばしてくれたのは貴方でした。花奏さん。どんな形であろうとも私は貴方達を祝います。.....そして.....貴方がたには感謝しかないです、と泣き始める。
「.....本当に有難う御座います」
「鳴さん.....」
「.....泣かないで下さい。私達は分かっています」
「.....御免なさい.....涙が止まらない.....」
そして1分後。
泣き止んでから、私はですね。.....未来と結ばれなくても。.....それでも貴方達に感謝の意を伝えたいって思っているんです。この気持ちだけは分かって下さい、と話してくる。
俺達は頷いた。
「.....分かってます。.....私達は.....」
「.....だな。美香」
そして俺たちは笑み合って話す。
すると鳴さんが、ところで、と切り出した。
それから真剣な顔をする。
俺達も真剣な顔になる。
「.....刺された方は.....大丈夫なのですか?」
「正直言っても大丈夫ですと言えます。.....その代わり俺達の知り合いの母親が.....捕まったので」
「.....そうなのですね。.....では面会は.....」
「.....まだ何も定まってないです。俺達は.....見守るしかないです」
「.....そうなのですか。.....私もそれなりに協力させてもらいます」
「助かります」
それから俺たちは暫く会話をしてから。
そのまま.....俺達は鳴さんと別れた。
そして美香と手を繋ぐ。
恥ずかしながらも.....これが恋人の証と思っているから、だ。
☆
「花奏」
「.....何だ?」
「.....私.....は。本当に私で良かったの?.....恋人にするの」
「.....それはどういう意味だ?」
「私だよ?私は.....やくびょう.....」
俺は美香を寄せた。
そしてその唇にキスをした。
まさかの展開だったのだろう。
それから暴れる感じの美香を、どうどう、と言い聞かせる。
そして鎮めた。
「俺な。お前が好きなんだ」
「.....うん」
「.....全ての初めのシナリオを通してもお前が好きだ」
「.....うん」
その言葉に美香は涙を流した。
一筋の涙を、だ。
それから頷く。
そして美香の頭を撫でた。
すると、花奏。ちょっとしゃがんで、と言ってくる。
「.....?.....どうし.....」
そのままキスをまたされた。
俺は驚愕しながら美香を見る。
美香の唇は柔らかい。
そして真っ赤になる美香を見る。
「.....エヘヘ。.....分かった。愛してるよ。花奏」
「.....お前なぁ」
「それなら花奏も同罪だよ」
「.....まあそうだけど」
そんな会話をしながら歩く。
雨は上がっていた。
まるで.....晴れ渡る様に青空が見える。
俺達はその事に顔を見合わせながらそのまま動く。
すると電話が掛かってきた。
相手は.....見慣れない番号。
出てみてみると。
「もしもし?」
『もしもし。これは花奏くんの携帯ですか』
「.....お前まさかと思うが.....」
『吉川です』
「.....」
吉川.....か。
俺は、大丈夫なのかお前、と美香にも聴こえる様にスピーカーにする。
すると吉川は、はい、と頷く様な返事をした。
今ですがスマホを先輩の国広さんから借りていますので、とも。
俺は少しだけビックリしながらも。
落ち着いて返事をする。
「.....で。何の用件だ」
『私は.....美鶴さんのお母様を咎めないでほしいと訴えていきます』
「.....それはどういう意味だ」
『.....私は刺されて気が付きました。.....そうか。痛みってのはこういう事か、と、です。.....だから私は.....恨まれる気持ちも分かりました』
「.....」
『.....今は病院なので何とも言えませんが.....取り敢えず.....この事件が裁判に発展しない様にします』
「.....そうか。お前がそう言うなら」
全ては私が原因ですから。
と言いながら吉川は言ってくる。
俺はその言葉に、そうか、と返事をする。
すると、そこに美香さんは居ますか、と言ってくる。
「何」
『.....悪かったです。.....全て』
「.....貴方が後悔しているならそれでも良いけど。.....何で初めっからそうしなかったの」
『.....私が.....医者の初心を忘れているって事でしょう』
「.....」
『.....だから私は.....初心に帰ってから。.....何処か遠くで全てをやり直します。.....貴方には謝罪のコメントを。.....貴方とは関わらない様にします』
「.....そう。.....分かった」
しかしその言葉に、でも、と美香は言った。
貴方が去る前に美鶴のお墓に行って、と言う。
俺は驚きながら美香を見る。
すると吉川は、.....そうですね、と言ってくる。
反省しています、とも。
『.....私はその為には行かないといけないですね』
「そう。だから必ず行って」
『.....分かりました。.....体調が治りましたら。.....必ず伺います』
「.....貴方はそこからスタートしなさい」
『はい』
それから電話は切れた。
そして.....俺達は顔を見合わせてから。
そのまま外を見る。
色々と.....悩む所はあるが。
だが.....。
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