第28話 表の世界と裏の世界

美香と父親はあまり仲が良くない。

それに.....美香は父子家庭とされている。

俺は詳しい事を知らされていない。

何故かというと。

美香が話さないから、だ。


「.....取り敢えず美香。.....俺達が協力する。説得する。父親を。法律とか分からないからその点は協力出来ないかもだけど。それに家族関係もな」


「十分だよ。花奏。.....私なんかの為に有難うね」


帰宅しながら。

俺は恋.....と鈴木。

奏多に先に帰ってもらい俺達は.....公園で話していた。

すると美香は、結婚するとか言ってもね。お父さんは.....その。私に期待してない様な感じだから。.....私が女の子だから、と言う。


「.....女の子だから何だって話だな」


「.....振り向いてもくれないから。道具扱いかな。テストは100が当たり前だしね」


「.....そうか」


「.....ねえ。花奏」


「.....何だ」


これは私を好きになれという意味じゃ無いけど。

本当に好きな女の子は居るの?、と真剣な顔で聞いてくる。

俺は顎に手を添えるが。


全く思い付かない。

という事は居ないという事だろう。

恋と付き合っていたけど。

今は.....恋も俺との絆で結ばれている。


「.....花奏は自らが本当に好きな女の子と付き合ってね」


「.....お前の配慮に感謝する.....っていうかそんなのどうでも良いけど。.....お前はお前自身の事を考えてくれよ」


「そうだね。.....まあそうだね」


美香は悩みながら、有難う、と笑顔を浮かべる。

それから俺を見てきた。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

すると美香は、私は私自身の事を考えるよ、と言ってくる。


「何も思い付かないけどね」


苦笑する美香。

俺はその姿を見ながら、そうか、と言う。

それから美香を見据える。

美香は、私ね。お父さんと話すよ、と言ってくる。


「花奏に助けてもらう前に.....どうにかする」


「そうだな。.....分かった。でも無理はするな」


「そうだね。無理はしない、だね。花奏の言う事はしっくりくるよ」


そんな会話をしていると、美香さん、と声がした。

顔を上げると非常に良さげなスーツ姿の好青年.....が。

誰だコイツは、と思いながら美香を見る。

美香は困惑した様な顔をした。


「.....吉川さん?」


「.....久々だね。偶然に見掛けたから」


「そ、そうですか.....」


そんな会話をしながら美香は困惑の顔のまま俺を見る。

どうやら.....これは医者の様だ。

つまり婚約者だろう。

思いながら俺は美香を見る。

反応を観察した。


「おや?もしかして君は.....」


「そうですね。.....千草花奏です」


「.....美香さんから聞いているよ。.....良い子だってね」


俺に対してニコッとしながら手を差し出してくる。

そんな態度に俺も手を差し出した。

だが.....俺に対して真顔になって態度が豹変する。

俺は!と思いながら美香を見る。


「君は美香さんを誑かしていると聞くけど.....友人として大丈夫かな?」


「.....その表現は気に入らないですね。.....誑かしている?.....俺はそんな事をした覚えはないですが」


「.....そうかな?」


何だコイツ。

かなり良い感じのオーラをしていたがかなり嫌な気配しかしない。

俺は一旦と手を離そうとしたが。

離してくれ.....ない。

というか何だこの力は、と思っているとその医者はこう言ってくる。


「僕の美香さんに手を出したらそれなりの天罰が下るからね」


美香は何も言えない感じで見ていた。

俺はその様子を見ながら真剣な顔をする。

それから手を離してから。


俺に笑顔を浮かべる。

その姿は.....医者ながらも。

死神の様に見えた。

これは騙されているんじゃないのか。

美香の親父さんは。


「私に悪い事をしなかったら別に何も彼はしない」


「.....」


そのまま睨みながら俺は真っ直ぐに吉川を見据える。

コイツ.....、と思いながら俺は吉川を見る。

あまり良くない気配がするが。

だけど.....美香に手出しをしなければ素直で良い人で何もしないとは悪質だな.....。

考えながら俺は吉川を見つめる。


「吉川さん。もう止めて。花奏.....には何もしないで」


「.....そうだね。美香さん」


「.....」


恐ろしいというか。

これは.....あまり良くない。

接近させたくない。


俺の胸が心臓が高鳴っている。

だがもし手を出せば。

何をされるかも分からない。

俺は思いながら吉川とそのまま、帰るね、と言う美香を見送った。

あまりにも何も出来ない無力さから。


壁に、ずだん!、と音を立てて打ち付ける。

それから歯を思いっきり立てる。

クソッタレめが.....、と思いながら、だ。

こんな状況になっているとは。


「.....」


俺は考えながらそのまま壁に打ち付けた手の痛みを感じながら。

そのまま目の前を見つめる。

そして居なくなった美香と吉川の事を思った。

これは初めての展開だ。

そもそもこの呪縛から.....解放出来るか、か。


「絶対にこのままじゃ駄目だな.....どうにかしなければ」


この状態はあまりに良くないと思うが。

俺達はクソガキだな.....、とも思う。

早く大人になって.....助けたいものだ。

全てから色々な人を。


「.....俺って人を助けたいんだな.....」


こんな下らない事で.....見据えれるとはな。

まあでも未来を見据えれたのはまあ良いとして。

考えながら俺は.....そのまま帰宅。

のだがこれが問題だった。

学校に.....美香が登校しなくなったから、だ。



「.....美香ちゃん.....どうしたんだろう」


俺に問いかけてくる未来。

そんな未来に、分からないな、と答える。

俺達は丁度、麻里子先生の部屋に集まっていた。

麻里子先生も居る。


「正直お前らって色々な事に巻き込まれるよな」


「先生。それは失礼な言い方ですよ」


恋がツッコミを入れる。

するとポリポリと頬を掻いてから先生が謝る。

すまない、と言いながら、だ。

そして俺達をジュースを飲みながら見てくる。

オイ何飲んでんだ。


「.....実直な意見だったが。配慮が足りんかった。あ。ジュースはそこの冷蔵庫。戸棚にはお菓子。勝手に食って良いからな。私も食ってるし」


「アンタ.....生徒指導室の先生でしょ。何やってんすか.....」


「硬い事言うな!生徒指導室の先生だが.....生徒とは仲良くなりたいからな」


「アハハ。でも私、麻里子先生好きだよ」


「そう言ってくれるか。大塚」


ガーッハッハ!、と笑顔を浮かべる麻里子先生。

何か?男の人かな?俺は言いながらお菓子を持ってくる。

俺は額に手を添えながらも。

ポテチを食う。

さて.....どうするか、と思いながら。


「.....取り敢えず美香をどうにかしないといけないな」


「.....そうだね。花奏ちゃん。絶対に.....また笑顔になりたい」


「くぅ!青春だなぁ!」


「いや。今は青春ではないです」


鈴木がジト目のツッコミを入れる。

先生は、だ、だな、と怯む。

そうだな.....こんなもんが青春なら糞食らえだ、マジにクソッタレだわ。

思いながら俺は盛大に溜息を吐きながら悲しげな鈴木を見る。

それから言葉を発した。


「.....大丈夫だ。鈴木」


「.....千草君?」


「お前の意志とか反映するとかそんなんじゃないけど。何とかしないといけない事は何とかしないとな。.....美香と.....また笑顔になれる様に配慮する」


「.....!」


それから鈴木は、有難う、と俯く。

俺はその姿を見ながら.....顎に手を添える。

そして.....窓から外を見る。

どうしたものかな、と思いながら、だ。

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