第27話 美香と父親

未来が17歳を迎えた。

俺はそのめでたい日に.....つまり誕生日に。

未来の家でお祝いをしていて、未来の為に、とジュースを入れようと思い戸棚の位置を聞いてから。

そのままリビングにお邪魔してジュースを入れていると。


「やあ」


「.....国広さん.....」


「.....元気かい。千草花奏君」


「.....そうですね。.....大体は元気ですが.....」


国広さん。

未来の親父さんだ。

俺はその人を見ながら?を浮かべる。


笑みを浮かべている。

何か話でもあるのだろうか、と思っていると。

少しだけ複雑な面持ちになった。


「未来の事で少しだけ話がしたい」


「.....ええ。良いですよ?」


「そうか。.....有難う」


するとリビングの椅子に腰掛ける様に促された。

それから俺を真っ直ぐに見てくる国広さん。

俺は?を浮かべて国広さんを見つめる。

国広さんは、実は.....その。未来なんだが最近少しだけ疲れている様でね。.....学校を休みたいって言い出したんだ、と言ってくる。

俺は!と思いながら国広さんを見る。


「.....それは持病の悪化ですか」


「.....私達が招いた事だ。これは仕方が無い。そう思っている。.....そこで迷惑じゃなかったからまた未来を君の家に泊めたいと思っている。夏休みも近いだろう?もう連絡はしてあるんだが.....」


「.....俺の家に泊まるよりは.....精神科に行かれた方が」


「大丈夫だ。彼女には最新鋭の治療を何時もしている。だけどね。.....未来は君が好きなんだ。.....だから一緒の方が良いかって思ったんだ。そこら辺はね」


「そうその。改めて言われるとクッソ恥ずかしいのですが.....」


「.....ははは。.....ああそれからもう1つだが。加瀬馬美香さんの家は.....」


俺は言われてから複雑な顔をする。

そして、これはあくまで噂ですが医者の家になってます、と答える。

すると国広さんは口元に手を添えて、やはりか、と言った。

それから、美香さんは幸せなのだろうか、と俺を見てくる.....。

そうだな.....。


『え?家の事?別にそんなのどうでも良いじゃん』


『家?普通だよ?』


まさかと思ったが。

俺は国広さんを見る。

国広さんは、実はね.....未来の担当医は美香さんの親父さんだ、と答えた。

俺は強い衝撃を受けながら、それってマジすか、と言う。

そうだね、と言いながら視線をずらして診察の書類を見せてくる。

そこには確かに、加瀬馬行弘、と書かれていた。


「.....自らの娘さんとはかなりの確執がある様に思える。.....まあ僕達もそれ以上でそれ以下でも無いお付き合いだが.....」


「.....」


「.....美香さんの話に少しでもなると行弘医師は、あの娘は、かなり嫌がる。.....まるで自分の娘を否定する様な感じだ」


「美香は取り敢えずは幸せだとは思います。.....だけどそうですね.....その状況だとあまり宜しくないみたいですね.....」


「まあこれ以上事は大きくはならないとは思う。.....だけど少しだけ気掛かりだったからね」


そんな感じの会話をしてから。

俺は国広さんに頭を下げてからそのままの飲み物を持ってからリビングを出た。

それから.....横を見ると美香が立っている。

俺は?を浮かべて、どうしたんだ美香、と聞いてみると。

美香は、お父さんの事.....国広さん話していたね、と言ってきた。


「.....ねえ。.....花奏」


「.....何だ?」


「.....もし良かったら私を恋人にして下さい」


「.....え?.....は!?いきなりどうした!?何でそんなにぶっ飛ぶ!?」


「.....実は.....私は許嫁としてお父さんの病院を引き継ぐ人に貰われそうなの。まあ予定だけどね。.....でもそうなると今の生活もどうなるか分からない」


「.....お前.....それはかなり許し難いぞ。.....何が.....」


えっとね。かなり前だけど花奏に迫ったじゃん?、と言ってくる美香。

確かにな.....それは覚えているが.....それがどうした、と聞くと。

美香は、あの時から噂されていてね。許嫁論争が、と言ってくる。

俺は!と思いながら、あれは鈴木に入れ知恵とかされたんじゃ無いのか、と聞く。

だが美香は、あれは私がほぼ全てやった、と答える。


「.....私は幸せの為に結婚するらしいから。.....お父さんは貴方を嫌っているから」


「.....そうだな。昔からそうだったもんな.....親父さん.....結構俺を嫌っていたもんな。あんな頭の悪い奴と一緒に居てどうなる、と」


「でもね。私はどうあれ貴方が好き。だからこんなのは絶対に嫌。.....だから.....それをされるぐらいなら私は貴方と初夜でも過ごしたい」


しょ!?、俺は愕然としながら真っ赤になる。

そして美香は俺に接近して来た。

ねえ。花奏。私って魅力あるでしょ?貰ってほしい、と言ってくる。

俺は、いや駄目だ!そんなの!、と言う。


「.....ぶっちゃけヤケクソなのもあるけど.....花奏。私は貴方が好きだから」


「.....いや。だから.....それはそうだけど.....」


「.....時間はまだあるけど.....結論を急ぎたいから.....検討をしてくれると嬉しい」


「美香.....」


美香は、じゃあね、と覇気のない挨拶で去って行き。

そして明るい声になる。

俺は溶けた氷を見ながら複雑に思う。

それから、まさか.....そんな事が、と思ってしまう。

二度ある事は三度あるとはこの事だろうな、と思いながら。



「少し思ったんですが」


「.....何だ?恋」


「私達とデートしませんか?花奏さんとそれぞれで」


「.....何を言ってんだお前は。.....それで良いのか?みんなは」


「良かですたい」


何を博多弁を使ってんだよ未来。

俺は思いながら苦笑する美香を見る。

今さっきの話はマジなのだろうか、と思いながら。

俺は思いながら溜息を吐く。

それからみんなに向く。


「.....みんな聞いてほしい」


「.....はい?」


「どげんしたとね」


「未来。何でお前は博多弁なんだ?まあ良いけど。.....俺は美香と付き合いたい」


その言葉に美香も。

それどころか鈴木も恋も奏多も。

みんなビックリしていた。

特に未来は、え!?、と驚く。


「.....俺は美香が好きだ」


「.....え.....それって.....」


恋が慌てる。

当然、鈴木もだったが。

その言葉に美香が却下の言葉を言った。

私は花奏。そんな気持ちじゃ付き合えない、と。

それから、貴方のそれって嘘でしょ?、と言ってくる。


「.....おい。俺は真剣にお前の事が.....」


「花奏。もう良い。.....有難う。でもやっぱり私は.....無理だって決めた」


「.....何かあったんですか?」


奏多がひっそり聞いてくる。

何かおずおずと手を上げながら、だ。

すると美香はニコッとして、何もないよ、と言った。

嘘八百の様な笑顔で。

俺は頭をガリガリ掻く。


「.....未来。奏多。そして恋。鈴木。.....お前らに話がある」


「.....ちょ!花奏.....!」


「「「?」」」


俺は美香に止められたが全てを告白した。

許嫁の件。

そして病院の引き継ぎ。

そんな事を、だ。

みんなは、何でそれを黙っていたんですか!、と美香に怒る。


「.....だって私が話しても.....」


「家庭の事情だから!?まあ確かにそうかもしれませんけど!」


「見知らぬ男と結婚するかも!?冗談じゃないよ!美香ちゃん!」


「美香お姉ちゃん!」


鈴木が特に激昂してまるで.....鬼神の様に笑っていた。

俺はその姿にゾッとしながらも。

困惑している美香を見る。


そんな美香の頭に手を添える。

そして、まあ取り敢えずは、だ、と言った。

それから、美鶴が居ても怒ると思うしな。どうにかすっぞ、と言う。


「.....バカ花奏」


「.....おう。何とでも言え。俺は諦めんぞ」


「.....だから好き」


美香は頬を赤く染める。

ったく気持ち悪いだろうが。

何処の馬の骨と結婚なんかするなんぞ。

殺してやるぞ俺が父親なら。

思いながら俺達は顎に手を添えて暫く悩んだ。

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