第18話 未来の両親の足跡を辿る旅

未来とのデートなんぞ初めてに近い。

俺は考えながら.....未来を見る。

未来はノイズキャンセリングイヤホンを動かしながら.....調節していた。

全てを警戒している、とかじゃない。

音に慣らそうとしている。


「.....なあ。未来。俺さ思い付いたんだが」


「何?花奏ちゃん」


「.....親父さんの足跡とか辿らないか。何か目的があったら面白いんじゃ無いかって思ったんだ」


「.....!.....花奏ちゃんが良いなら」


「.....そうだな。そういう目的があった方が動き易いだろうしな」


未来は笑顔になる。

ニコニコしながら.....俺に向いてくる。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべて柔和になる。

すると未来はガラケー、電話を取り出した。

俺は?を浮かべて見る。


「お父さんに聞いてみる」


「.....え?マジか?大丈夫か?」


「うん。お父さんと全然余裕で電話番号を交換したから.....大丈夫」


「.....そうか」


そして未来は恐る恐るな感じだが電話を掛ける。

すると、もしもし、と声がしてくる。

未来なのか、という言葉と共に。

俺は少しだけ汗をかく。

そして見る。


『未来。何の用事だ』


「.....お父さん。お父さんってどんな足跡を歩んで来たの?」


『.....それはどういう意味だ。.....お前達は何をしている』


「足跡を辿ってるの。お父さんの」


『そんなものを辿って何が楽しいのか知らないが.....そうだな。.....俺の足跡か。.....お前達が向かった博物館にも足跡はあるぞ。.....俺の。昔はそこら辺に住んでいたからな。妻とな』


俺は聞きながら未来を見る。

未来は悲しげな顔で、そうなんだね、と言う。

母親、と聞いて悲しくなったのだろう。

思いながら.....未来を見つめる。


『俺は.....妻にも変わってほしいと願っている。.....彼女は最初からおかしかった訳ではない。.....何かが取り憑いたのかもしれないな。彼女に』


「.....お母さんだって人間だもんね」


『.....お前は優しいな。未来。.....だが今となっては敵に近い。.....取り敢えず.....何も無い様にな。.....それでは切るぞ』


「うん。お父さん有難う。忙しい中ごめん」


『.....まあ.....楽しみなさい』


それから電話は切れた。

俺はその言葉を受けながら。

随分と丸くなったな、あの親父さんも、と思ってしまう。

未来は嬉しそうに、だって、と言ってくる。

そうだな、と思う。


「足跡を辿るなら先ずはお前の親父さんの住んでいた場所もそうだな」


「だね。行ってみようか。住所は.....」


そんな感じで俺達は歩き出す。

それからアパートに着いた。

そこでお婆さんが箒を枯葉を集める様にはいている。

俺はそのお婆さんに聞いてみる。

あの、と言いながら。


「はい?」


「.....この辺りの住所に.....その。大塚国広さんという方が住んでいませんでした?」


「.....それは.....10年前のあの男の人。知っているわよ」


「.....え?マジすか?.....まさか.....」


「丁度このアパートに住んでいたんだ。.....もしかして.....その女の子は」


「大塚未来と言います。娘です」


お婆さんは見開いた。

それから涙を浮かべる。

そうかい、と言いながら。

優しそうな娘さんに育ったね。

と言ってくる。


「.....このアパートに確かに住んでいたんですか?」


「そうだね。.....10年前に越したけど」


「.....そうなんですね.....」


「.....国広さんと奥さん.....は元気かい」


「.....そうですね」


顔を顰める未来。

それから俯きながらそのまま何も言わない。

その様子にお婆さんは何か分かった様に、そうかい、と呟いた。

そうしてから、まだ変わってないんだね.....、とも言ってくる。


「私が見る限りではね。.....あの奥さんは.....良い人だったよ。でも途中から何かが変わった様に.....引っ越して行った。国広さんと一緒にね」


「.....そうなんですね」


「.....ああ。.....良かったら中に入らないかい。.....管理室に」


「え?良いんですか?」


「聞きたいのもあるからねぇ。その後の」


お婆さんは箒を直した。

それから俺達はその様子を見ながら頷き合う。

そして俺達はそのまま案内される。

管理室に、だ。


「私達で良いんですか?」


「大きくなった娘さんの話も聞きたいしね。.....大丈夫だよ」


「.....そうですか」


「.....私は.....心配していた。.....歪んでしまった奥さんと一緒の貴方を。.....だからこそ聞きたい事があるのよ」


「.....」


俺はその様子を見ながら未来を見る。

未来は複雑な顔をしていた。

そうだな。

未来の言っている通りだが。

人間だよなあの人も.....未来の母親。


「.....狂ってなかった時期も.....あったんだって.....思った」


「.....そうだな。.....今となっては面影が無いけど。良かったじゃないか。そんな話が聞けて」


「.....お母さんも私を大切にしてくれていたのかな」


「.....そもそも何故そうなってしまったのか興味深いな。.....何かきっかけが掴めるかもしれない」


「そうだね。.....私.....お母さんとまた暮らしたい」


「.....!.....未来」


未来は涙を浮かべる。

それから涙を拭う。

俺はその姿を見ながら、やっぱりコイツは優しいな、と思った。

そして愛しいと思ってしまう。

幼馴染として、だ。


「どんなに捻じ曲がっても.....あの酷い先生とは違う。.....私のお母さんだもん。戻れる筈だよ。絶対に」


「.....そうだな。.....お前がそう言うならきっと戻る。.....鯉は無理だったけど.....親を取り戻せる筈だ。性格を、全てを」


「.....私のお母さんは.....戻ってくるよね?」


「.....そうだな。.....お前が願えばな。俺も協力する」


「.....花奏ちゃん.....だから大好きだよ」


告白みたいな事を言うなよ。

俺は真っ赤になりながら未来を見る。

そして俺達は席に座る様に促されてから。

そのまま椅子に腰掛けた。


「.....取り敢えずはちょっと待ってね。.....今からお茶を淹れるから」


「お構いなくです」


「俺もそうです」


「.....優しい子達が来たね。.....まるで貴方達を見ていると.....私が恋愛した時の事を思い出すわ。.....60年前の話だけどねぇ」


「.....れ、恋.....」


未来はボッと赤面した。

俺はその姿にまた赤面する。

するとお婆さんは、ウブねぇ。アハハ、と言いながらお茶を入れに向かった様だ。

俺達はモジモジしながら待機する。

すると未来が切り出した。


「花奏ちゃん」


「.....な、何だ。未来」


「.....私と結婚したら.....その。.....子供欲しい?」


「.....お前何言ってんの?」


いきなりの質問がそれかよ。

俺は、ぶっ飛んでんな!、と思いながらワタワタする。

真剣な質問だよ、と言ってくる未来。

俺は顎に手を添える。

そして、欲しいに決まっているだろ、と。


「.....お前ともし結婚して.....幸せになるならな」


「.....そ、そう.....なんだ。.....が、頑張るよ」


「.....お前さん?何か勘違いしてない?」


何でいきなりそんな話になるのか、と思ったが。

そうか大塚一家がこのアパートで暮らしていたから、とハッとする。

俺は真っ赤になりながら俯いた。

長いんですけどお茶が出て来る時間が。

もう10時間ぐらい経ったイメージだ.....どうしたものか。

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