第3章 貴方への恋心

苦しんでいる美香を救う為に

第14話 バレーボール部の裏の顔(上)

未来を取り返して俺の近くに置くと宣言してから.....丁度真夜中になった。

俺は、ふあぁ、と欠伸をしながら天井を見上げる。

しかし全然寝れる気配じゃない。

夜の海という海に浮いている三日月が見える中.....俺は考えていた。

どうしたら.....良いのか、という点を。


この先、未来をどう支えて。

そしてどう恋を支えていったら良いのか。

その事を考えるのは俺の役目だ。

だからしっかりと考えないといけない。

そして.....見定めないといけない。


ギィ


「.....?.....うわ!?未来!?」


「.....エヘヘ。花奏ちゃん」


「ど、どうしたんだ」


「何だか寝れない」


いきなり戸が開いたと思ったら。

何故か未来が入って来た。

キャラクター満載のパジャマを着た未来が、だ。


俺はその姿を見ながら赤くなる。

何だか.....少しだけ意外性があったから、だ。

未来がこんなパジャマを着る。

覚えてなかった。


「ねえ。花奏ちゃん」


「.....どうした。未来」


「恋ちゃんと本当に別れて正解だった?.....私は.....心が痛い」


「.....だって俺が決めた訳ではない。あくまで恋が決めた事だ。.....だから彼女の意思を尊重したい」


「.....花奏ちゃん.....」


ベッドに腰掛けてくる未来。

それからノイズキャンセリングイヤホンを外した。

俺は、大丈夫なのか、と聞く。

すると未来は、大丈夫。私は外の音が聞きたい、と言ってくる。

静かな音が、とも。


「こんな物に何時迄も頼れないよ」


「.....頼って良いんだぞ。.....お前の個性はみんな知っているから」


「花奏ちゃん。それじゃ意味無いの。.....私はまともな人間に戻りたいからね」


「.....」


俺は複雑な顔をする。

花奏ちゃん。それは君が悪いとかそういう意味じゃない、と話してくる。

そして顔を上げてニコッとする未来。

幼い顔ながら.....笑みが似合う女の子だった。


「.....私はまともな恋がしたい」


「.....それは.....つまり俺とノイズキャンセリングイヤホンに頼らず?」


「そう。何時迄も他人に迷惑は掛けれない。私は自立するの。花奏ちゃんを養いたいしね」


「俺はそんなつもりは無いけどな。.....だけど有難うな。未来」


するといきなり電話が掛かってきた。

メッセージも同時に来る。

このクソそこそこに遅い時間に何だよ、と思いながら見ると美香だった。

俺はフェイスタイムにする。


『もしもし』


「何やってんだお前は。この時刻に寝ていたらどうする気だった」


『まあそうだけど.....話したかったから。寝れない』


「.....そうか。それは俺も同じだよ。未来もな」


『.....おーちゃんと一緒に住む様になったんだね。今日から』


「.....ああ」


するとしんみりした様な空気になった。

その事に未来が、ねえねえ。美香ちゃん、とニコニコ笑顔で手を振る。

そして驚く美香を見ながら、何かゲームで遊ぼうよ、とそのまま言い出す未来。

美香は、どういうゲーム?おーちゃん、と話す。

すると胸を張った未来。


「しりとり」


「.....胸を張った割には普通だな?」


「あ。ひどいなぁ。花奏ちゃん今笑ったでしょ」


『おーちゃん。じゃあしりとりしようか。どうせ暇だし』


「だね!」


未来はニコニコしながら美香を見る。

そしてしりとりが始まる.....ところでだが。

美香がこんな事を言葉にした。

花奏。恋とも別れたんだって?、と。


「.....ああ。都合によってな」


『そうなんだ。.....お似合いって思ってたんだけどね』


「だから今はフリーだから愛しても良いんだぞ?」


『じ、冗談でしょ!揶揄わないで!』


「.....」


でも俺は言ってから。

あの図書室の一件を思い出す。

それからボッと赤面した。

図書室で脱ぎ始めた美香の事を、だ。

いかん煩悩が。


『でも花奏。私は今.....ゴメン。落ち着いたから話すね。.....私は今、貴方とは付き合えないと思う』


「ああ.....そうなのか?」


『.....ゴメンね』


その事に俺達は押し黙る。

そんな中で俺は.....気になったので聞いてみる。

美香に対して、だ。

何故これを聞いたかと言えば。

今なら美香は答えてくれるかと思ったから。


「.....なあ。美香。そろそろ良いんじゃないか?付き合えない理由を話しても」


「.....!」


『.....私が君と付き合えない理由.....?』


丁度俺達しか居ないし。

良いんじゃないか?、と言ってみる。

すると美香は顎に手を添えてから.....考え込む。

それから、ハァ、と溜息を吐いた。


『そうだね。何時迄も秘密にしていても仕方が無いしね』


「.....話してくれるのか?」


「美香ちゃん.....」


『.....私が君と付き合えない理由はね。バレーボール部にあるの』


「.....え」


「.....え?」


俺達は唖然とした。

それから美香を見つめる。

美香は、色々とパシリとかで扱われているんだ。私。イジメに近いかも、と皮肉混じりの笑顔で言ってくる。

俺は静かに怒りを覚えた。

それはマジか、と聞いてみる。


『だから君と付き合うには資格が無い、と言ったの。こんな情けない姿を晒すのもね、と思って。.....でも花奏』


「.....何だ」


『ゴメン。涙が止まらないや。.....私は.....君が好きって言いたいのに』


「.....」


未来も涙を浮かべていた。

そして泣いている。

そんな部活.....辞めてしまえば良いのに、と思ったが。

もしこれをサラッと言ってしまっても。

どうしようも無かった場合どうする。


「.....美香。.....その場所から一時的に離れたらどうだ」


『.....無理だよ。何だか支配されているし。先輩のパシリだしね』


「.....なら俺がその先輩とか言う馬鹿に話してやる』


『.....花奏.....?』


このまま終わらせる訳にはいかない。

平穏が崩れているのに黙ってられるか。

俺は思いながらグッと握り拳を作る。

すると、やろう。美香ちゃん。私もやれるだけやってみるから、と言い出す。


「このまま黙ってられるか。鈴木も巻き添えにしてやる。.....全部を塗り替えてやる」


『.....花奏.....私は.....何で.....君の事を振ったのに』


「振ったとかそんな次元の話じゃ無いだろ。.....マジに怒りしか湧かない」


「.....花奏ちゃん。私も怒ってる。久々に」


『.....』


美香は嗚咽を漏らして号泣し始めた。

怖いんだよね、と言いながら。

黙ってられない。

こんなに幼馴染が苦しんでいる。

明日でも決着をつけてやる。


「花奏ちゃん。どういう作戦にする?」


「バレーボール部がそこまで腐っているなら先ず担任とかに俺達がその先輩と話している所を見てもらってから証拠を掴んでもらおう。.....担任の先生なら任せられるし」


「直ぐにバレーボール部が悪いって生徒指導室とかに突撃しない理由は?」


「簡単だ。今は証拠が無いから、だ。だから見てもらうんだよ。証拠集めは重要だと思うしな。だから協力してもらう。鈴木とかにも」


『.....私はどうしたら良い?』


「お前はいつも通り何食わぬ顔で接してくれ。バレーボール部の先輩達に。で鈴木に協力してもらって上手い事.....中庭とかに呼び出そう」


俺は思いながら、それで良いか、とみんなを見る。

みんな頷きながら、花奏ちゃんに任せる、と未来に言われた。

美香がこんな目に遭っているとは。

俺は絶対に許せない。

そのバレーボール部の先輩が、だ。


思いながら俺は明日の決行を考えてから未来と美香としりとりを少しだけして寝る。

それから翌日の学校になる。

昼間の時間帯に昼休み。

そこで全ての作戦を決行する事になった。


これは名付けて『美香解放作戦』だ。

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