第2章 美香と俺と未来
好きだから。だから
第5話 美香が好きなんです!
美香の事を心の底から大切にしてくれる様なそんな友人が居てくれた事に本当に今現在、感謝しか無い。
何というか異性として.....何か意識でもしているのか?
でも何方にせよ本当に嬉しい。
だってそうだろ。
鈴木はきっと美香を心の底から心配している。
何処の次元まで好きなのかはそれはさて置いて、だ。
それ考えるなら百合になってしまうので。
「聞いても良いか。鈴木。お前は一体どういうつもりで来たんだ」
「.....私は好きなんです。.....美香が大好きなんです。.....同じ異性ですが.....彼女の事が本当に好きなんです」
「.....」
鈴木は涙を浮かべ始めた。
そしてつうっと涙を流して見せる。
俺は無言でその様子を見守る。
そうして見ていると、涙を拭ってから俺にキッと視線を向けてくる。
私は本当にどうあっても彼女が好きです。
だから貴方が妬ましい。
そもそも愛される貴方が羨ましいです、と言ってくる。
俺に必死そうに訴えた。
それからいきなり俺の腕をガシッと掴んでくる。
そして涙を滲ませた。
お願いです、と。
そうしてから必死そうに訴えてくる。
「私の美香の事も考えて下さい。友人の事を.....お願いです」
と言ってから反応を見る様に鈴木は俺を見た。
俺はその姿に顔を顰める。
その言葉についてかなり胸に突き刺さった。
でもさっきから思っていたけど。
それじゃ美香は俺が.....?
「なあ。鈴木。美香って俺が好きなのか?今も?」
「.....それは私の口からは言えません。.....でもずっと好きなんだと思います」
「.....まさか.....そんな馬鹿な!?」
「私のアピールに振り向いてくれません。.....だからきっと愛しています。貴方を。どんな形で振ったとしても.....彼女は貴方を好いていると思っています」
「.....」
愕然とした。
それは何というか.....気持ちに槍が突き刺さった感覚だ。
俺は考えながら鈴木を見る。
鈴木は涙を浮かべて泣いていた。
「.....今日はこれで帰ります」
「.....あ、ああ」
「.....明日から.....」
「.....ああ」
そんな鈴木を見送ってから。
俺は胸に手を添える。
そして複雑な顔でそのまま外を見る。
何だか.....俺の気持ちも少し揺らぎ始めている気がする。
どうしたら良いか、と。
☆
何というか。
自室で、本当にどうしたら良いのだろうか、と顎に手を添えて夜、思っていると.....ドアがコンコンとノックされた。
それから、お兄ちゃん、と声がしてくる。
そして声がした。
「大丈夫?」
「.....奏多」
俺は考えるのを止めてから見開いて顔を上げる。
それからその妹の顔をジッと見る。
茶髪ながらも清楚な感じの女の子がいそいそと入って来る。
顔立ちは柔和な感じで笑みが絶えない。
その様子は俺を慕っている様な雰囲気。
身長はそう高く無いが中学3年生の15歳の少女。
反抗期真っ只中と言えるかもしれないのにそれでも家族に優しく俺を優しく見守ってくれる聖母の様な存在の、千草奏多(チグサカナタ)、と言う妹。
俺の.....様々な事の相談相手だ。
そして奏多は何時もの通りベッドに腰掛ける。
「どうしたの?.....その。今日は.....ご飯も余り食べなかったよね。気になったから来ちゃった」
「.....」
「.....何かその。悩んでいるの?」
「.....ああ。正直な。ちょっと青春で悩んでいるかもな」
そう。.....じゃあその青春を妹ちゃんに相談しなさい!、と満面の笑顔で胸を拳で叩き奏多はそれからニコッと俺を見てくる。
俺は見開きながら、お前には敵わないな.....、と苦笑いを浮かべる。
そして.....手の中の指を動かしながら。
奏多を見る。
「奏多、まただけど相談して良いか」
と呟いた。
すると奏多は、うんうん、と優しげに笑みを浮かべた。
俺は.....少しだけ喉を鳴らしてそして告白する。
これまで起こった事を奏多に全て。
「俺な、美香に振られたんだ。それから.....後輩と付き合いだした」
「.....うんうん」
「.....でもそれでいるのにな。美香は俺に対して何だか複雑な顔をしてくるんだ。歓迎しているとは思えない顔で、だ。それから後悔した顔で見てくる」
「.....そうなんだ」
しかしまあ本当に聞き上手だよな奏多は。
途中の相打ちもそれなりに上手い。
この娘にADHDという発達障害が有りながらも.....俺の話を動かないで真面目に全てを聞いてくれる。
最高の、それも自慢の妹と言える。
なんか.....嫁に行ったら号泣するってかとにかくひたすらに泣くだろうな俺。
マジにそれは言える。
考えながら奏多に話を続ける。
そして見つめる。
「そんな中でな俺な。美香の友人に、美香の気持ちも考えろ、って言われたんだ。美香も俺に対して.....迫って来た。友人は腕を必死に掴んできて、だ。それで.....気持ちが揺らいでいるんだ」
「うん.....そうなんだ」
「俺って本当にどうしたら良いんだろう。後輩はマジに好きだ。でも美香に関しても今でも好きなんだと思うんだよな。だけど.....今は後輩の事を幸せにしたいって気持ちが強くてな。でも美香もそれなりに幸せにしたいって気持ちが.....有ってな。マジに最低だよな俺」
「.....でもその話から言うと美香ちゃんはお兄ちゃんを振ったんだよね?」
ああ。そうだな、と俺は返事する。
それだったらそうだね、と顎に手を添える奏多。
そして真っ直ぐに俺を見てくる。
でもこれはどう考えても振った方に絶対にマイナスだよね、と呟いた。
それから俺を真剣な顔で見てくる。
奏多は頷く。
「.....だよな」
「.....でも何でお兄ちゃんを振っちゃったんだろ?美香お姉ちゃん。そして.....私にはここ最近も笑顔で話してくれるけど.....学校ではそんなことが有ったんだね。やっぱり同級生じゃ無いと分からない事もあるなぁ」
うーん、と顎に手を添えて悩む奏多。
言い忘れていたが奏多と美香はマジな姉妹の様な大親友だ。
俺はその姿を見る度に幸せな気持ちになる。
妹がその。
俺がアホだけど美香にとられないかと不安にもなるが。
そんな馬鹿な、とは思うけどでもメチャクチャに不安です。
思いながら悲しげに居ると奏多が意見を発した。
「お兄ちゃん。後輩さんとは今の関係を続けた方が良いと思うよ」
「.....え?」
「だってそうでしょ?後輩さんが全力の気持ちで告白して来たんだよ?それを蔑ろにしちゃうのは絶対に駄目。それにどう考えても美香ちゃんに非が有るよ今回は。揺らぐのは分かるけど駄目」
「でも美香が.....」
と言葉を口にモゴモゴすると、もー!お兄ちゃん。そんな気持ちじゃ駄目!、と喝を入れる様に俺の手をペシッと叩いて握ってくる。
そしてニコッと優しく微笑んだ。
奏多は手で俺の手をすりすりしてくる。
「美香お姉ちゃんには私からもそれなりに話すよ。大丈夫。任せておいて。全部がなんとかなるとは思わないけどね」
「いやホンマにお前には本当に頭が上がらないな。俺の妹だけど」
「私はそんなお兄ちゃんの妹だからね」
「.....お前.....」
いや割とマジにジーンと来た。
当たり前だからね、とニシシと歯を見せて笑う奏多。
結婚したい、と思った。
血縁あるけど、とも思って気落ちする。
すると、あ、それはそうと、と奏多は話し国語の教科書を取り出して見せてきた。
そして.....文章を指し示す。
これさ、と言いながら。
「私馬鹿だから文字が読めないから.....」
「.....ああ。成る程な。これは舞姫(まいひめ)って読むんだ」
うんうん。そうなんだね、と笑顔で返答する奏多。
ああ、と返事する俺。
そんな会話をしながらそのまま1日が過ぎた。
翌日になってから時計が思いっきり鳴る。
それから俺は起き上がって見開いて驚愕した。
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