178bit 仲間はずれ


 「私の存在について……?」


 「うむ。 偶然と言えば偶然で片づいてしまうんだけどさ、私たち四人のうち、糸っちだけがまだ共通点に当てはまらないんだよね」


 「共通点……?」


 「そう。 真衣ちゃんは政治家の改竄かいざんデータを盗み出せるほどの天才ハッカーで、英美里ちゃんは中高生に大人気の動画配信者。 一応自分も数学の能力を活かしてAIの構築に携わっている。 真衣ちゃん、英美里ちゃん、私の三人はそれぞれITの分野に特化した才能を持っているんだよ。 だけど、糸っちだけは……」


 「そんな才能、私にはない……」


 糸の目元に暗い影が差す。


 薄々気づいていたところではあった。


 MANIACで日々を過ごしていくうちに、実は三人ともすごい才能を持っていることがわかった。


 どれも、到底かなわないような。


 それに引き換え、自分はこれといった才能でさえ持ち合わせていない。


 できるだけ考えないようにはしていたけれど、いざ言われるとひどく負い目を感じてしまう……。


 「糸っち! そういう意味じゃなくて! まだ糸っちにはめた才能が眠っていて、これからその真価が発揮されるんじゃないかなってことで!」


 「これから……発揮される……」


 「そうそう! ほらぁ例えばプログラミングが超絶得意で画期的なアプリを開発しちゃうとか! 糸っち、本当はコードめちゃくちゃ書ける系女子じゃない?」


 「プログラミング……? コード……?」


 「え、えーーっと、あそうだ! 本当は繊細な作業が得意で、ロボットを家で量産していたり……」


 「折り紙でツルくらいなら作れるけど……」


 「あ……えっとー、あとはー……」


 「やっぱり私にはITの才能なんてないんだ……」


 糸はすっかりしょんぼり顔になってしまう。


 「雛乃ちゃん、どんどん糸ちゃんを追い詰めてちゃっているよ」


 「雛乃が悪い」


 英美里と真衣は雛乃に非難の目を向けた。


 「あーはい! この話はもう終わり! ただの偶然だよねきっと! そ、そんなことより糸っち、お待ちかねの『目的』の内容をそろそろお披露目ひろめしちゃおっかなー」


 雛乃はその場を取りつくろうため必死に話題転換を試みる。


 ……。


 しかし、糸はまだ悲嘆ひたんに暮れたまま。


 「糸っちー! 元気出してっーー! はてさて、今日からちょうど一週間後、その日はいったい何の日でしょう?!」


 「……一週間後……?」


 糸の頭の中でぼんやりとカレンダーが思い浮かび、今日から一週間後の日付に赤丸がつけられる。


 その日は……。


 「私の誕生日……?」

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