177bit どうにも怪しい


 「つらい……つらすぎるよ……」


 掛け布団にくるまってイモムシ状態と化している糸は、げんなりとした表情でブツブツと呟いていた。


 「ま、まぁシズクさんも一応女性だから……。 それにしても、私たちが集合する日時って、MANIAChatでも決めていたよね? そのときは二人ともどうやって情報を掴んでいたんだろう」


 英美里が首をかしげた。


 「おそらくMANIAChatのやり取りも二人にチェックされている」


 「真衣ちゃんそれ本当……?」


 「たぶんね。 私も英美里と同じ疑問を抱いたから、一人で調べていたんだけど、私たち四人以外にもう一つMANIAChatにアクセスしているデバイスを見つけた」


 「そ、それがハジメさんとシズクさんなの?」


 「わからない。 まず、トップクラスのチャットアプリ、ねこチャットにおいて、そう簡単に不正アクセスはできないし、私でさえそのデバイスを逆探知することができなかった。 これは、かなり高度な技術が必要になるはずなんだけど……あの二人なら……できる気がする」


 真衣の口調はどこか悔しさをにじませていた。


 「あわわわ、真衣ちゃんがそこまで言うなんて……。 あの二人、そんなにすごいんだね……」


 「MANIACの七不思議、そのひとつはハジメさんとシズクさんの正体について。 ただのIT講師だと二人は名乗っているけど、どうにも怪しい。 二人の個人情報が不自然なほどネット上の検索に引っかからない」


 「ハジメさんとシズクさんの正体かぁ、それは興味深いね。 あ、だったら私も似たようなMANIACの七不思議があるよ」


 そう口にした雛乃は、ずっとふくれつらだった団子状態の糸めがけて勢いよくダイブした。


 「ぐふっ!! お、重い雛乃ちゃん……」


 「重いとは失礼な。 MANIAC七不思議のひとつ、それは糸っちの存在についてである」


 「え、私の存在……?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る