176bit 鼻血を出しているかもしれない


 雛乃は立ち上がって扉の近くにある照明のスイッチまで移動した。


 まもなく部屋全体にぱっと明りが灯る。


 「うまい具合に隠されているんだけど、この部屋には監視カメラがたくさん仕掛けられているんだよ。 そことか……こことか」


 雛乃がしゃがみこんで壁際の一点を指さす。


 糸は目をらしながら雛乃の指先を見つめた。


 「あ、本当だ。 すごく小さいけどカメラレンズみたいなのがある」


 「私が見つけている限りでも数十台はあるね」


 「数十台?! いったい誰が何のために?!」


 「それはハジメさんとシズクさんのしわざ」


 糸の疑問に真衣が即答した。


 「あ、やっぱり? 私もそうかなーと思っていたんだけど、真衣ちゃんは知っていたんだ」


 「雛乃が勘づくよりもだいぶ前に。 問いつめたら、二人とも悪用はしないって言っていたからとりあえず無視していた」


 「雛乃ちゃんと真衣ちゃんで話が進んでいるけど、どういうことなの?」


 英美里は不安げな顔で周りをキョロキョロしている。


 「簡潔に説明すると、この部屋はずっとハジメさんとシズクさんの二人にモニタリングされていたということ。 で、例えば雛乃が遠隔操作の接続準備をしに来そうになったら、二人があらかじめ部屋の鍵を開けていた、というわけ」


 「な、なるほど……」


 「この合宿を提案したとき、私はあえて大声で監視カメラに届くようにしゃべってみたんだけど、そしたらハジメさんとシズクさんにきちんと伝わっていたから、きっと二人はどこか近くで監視しているんだろうなって思ったんだよ。 予想的中」


 「だから雛乃ちゃん、あのとき妙にわざとらしかったんだ……。 ハジメさんとシズクさんが合宿の話をさも知っていたかのような口ぶりだったのも理解理解」


 糸はこくこくと頷いた。


 「もっとも、シズクさんについては私情がからんでいそうだけど……。 私たちの寝顔うんぬんとか言っていたし……」


 「そっか、今もどこかで二人に監視されているかもしれないんだ」


 「私たちが危険な目にっていないかを見守ってくれているっていう点ではありがたいんだけどね」


 「ちょっと待って……」


 突然、糸の表情が深刻になる。


 「もしかして、私が半強制的に服を脱がされていたときも……」


 「あー、たぶんシズクさんは大喜びだと……」


 「なぁーー?!」


 糸は顔を赤くして、隠れるように掛け布団の中へと潜った。

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