77bit 彼女たちの仕業に違いない


 まぶたを開けて最初に映ったのは、窓の外に広がる夜だった。


 うそっ?! 寝てた?!


 英美里はガバッと跳ね起き、机の上にちょこんと置いてあったマウスを細かく動かした。


 スリープモードになっていたパソコンが明りを灯すが、長時間放置していたせいか、動画配信サイトのアカウントは自動的にログアウトされていた。


 英美里は慌ててログインしなおす。


 もう手遅れだろうか。


 なかあきらめかけながら、英美里は動画のコメント欄を目で追っていった。


 あれ? 特に何も起こっていない……?


 不思議に思った英美里は画面の右下を注視する。


 どうやらずいぶんと寝ていたらしい。


 なのに荒らされた形跡がないということは……ひょっとしてルーズリーフはただのいたずらだったのだろうか。


 それともまだ実行に移していないだけだろうか。


 英美里は頭を揺らす。


 ルーズリーフは教室に残したままだったので、書かれていた内容を確かめることができなかった。


 あ、そういえば糸ちゃんからメッセージが届いていたんだっけ。


 たしか動画を絶対消すなって……、糸ちゃんはルーズリーフの存在に気付いたのだろうか?


 可能性としてはある。


 だとしても、気付いたからといって何かができるわけでも……。


 糸ちゃん、雛乃ちゃん、真衣ちゃん……。


 真衣ちゃん……。


 真衣ちゃん?!


 英美里の頭の中である仮説が即座に組み立てられた。


 いや、間違いない。


 彼女の、彼女たちの仕業しわざに違いない。


 英美里はベッドのすみに転がっていたスマホを手に取る。


 そして、ねこチャットのアプリを起動した。


 

 えみりり: 糸ちゃん、いったいどういうことなの? なぜ糸ちゃんが動画を消すとか消さないとか知っているの?


 糸こんにゃく: えっと……それは……


 えみりり: 正直に教えてくれないと……


 糸こんにゃく: 教えないと……?


 えみりり: ちんちくりんって呼ぶよ


 糸こんにゃく: ひえぇっ!! 教える! 教えるから! 

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