75bit すべてが終わってから


 どういう風の吹きまわしか知らないけど、なぜまた学校に来たの?


 大人しく不登校のままだったら良かったのに。


 大場糸、荒井雛乃、目黒真衣、それと古匠律。


 仲良くしている友達の情報を晒されたくなければ、


 またあのときと同じように、動画、削除してくれるよね?


 削除しないんだったら……。


 今夜のコメ欄、お楽しみに。



 ルーズリーフを持つ手が大きく震えている。


 バクバクと高鳴る心臓が、英美里に戦慄と焦燥を与えた。


 やっぱり、駄目だった。


 英美里はカバンを掴み、全速力で教室を出た。


 教室を出る際に右肩を引き戸にぶつけ、大きな衝撃音が響く。


 しかし、英美里はお構いなしだった。


 微睡まどろんだ太陽の下で、英美里は帰り道を駆ける。


 がむしゃらに、ひたすらに。


 ただ、後悔だけを背負いながら。


 学校生活を謳歌することなんて土台無理な話だったんだ。


 消そう。


 それしかみんなを守る術がない。


 みんな、まだ教室で私のことを待っているのかな。


 ごめんね。


 私がすべて悪いんだ。


 息が切れて、胸が締め付けられる。


 それでも英美里は走り続けた。


 悲しみに打ちひしがれるのは、すべてが終わってからにしたかった。

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