61bit 同じ気持ち


 「で、どうするの? 英美里のこと」


 真衣が糸と雛乃を見ながら言った。


 「私は英美里ちゃんとこんな形で別れるのは嫌だ……と思うけど、それはただの自己満足でしかないかもしれない。 英美里ちゃんがそっとしておいてほしいなら、私は……」


 糸は自分の気持ちをうまくまとめきれず、最後まで言い切ることができない。


 「糸っちはさ、えみり*の正体が英美里ちゃんだということを、学校の人とかに言いふらす?」


 雛乃が糸に尋ねた。


 「私は……言わないよ。 英美里ちゃんの嫌がることはしない」


 糸は力強くはっきりと答える。


 「私も真衣ちゃんも、きっと糸っちと同じ気持ちなんだよね。 英美里ちゃんも揃った四人でMANIACなんだよ。 けれど、英美里ちゃんは恐れている。 私たちが裏切るんじゃないかって。 その不安を何とかして取り除いてあげれば、振り向いてくれるんじゃないかな」


 雛乃は真剣な眼差しで糸を見つめた。


 「雛乃ちゃん……」


 「それに私……有名人のサイン欲しいし」


 「へっ?」


 「いや、えみり*は超人気だから、サインをもらっておけばいざというときに……」


 いつの間にか雛乃の表情はニタニタしていた。


 「その理由はちょっと……」


 糸は呆れてきちんとツッコむことすらままならない。


 「英美里がいないと張り合いがない。 英美里は私にとって好敵手こうてきしゅのようなものだから」


 真衣が言った。


 そうか、タイピングトーナメントのとき、英美里ちゃんは真衣ちゃんと互角に戦えるほど、パソコンのスキルがあったんだ。


 真衣ちゃんは真衣ちゃんで、英美里ちゃんのことを気にかけているのだろう。


 「真衣ちゃん……」


 糸は真衣に視線を向けた。


 「外へ出かけたときに、いかに周りをざわつかせるか。 英美里とはいいライバル関係だから」


 そっちかぁーーーい!!

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