62bit 打開策
「英美里ちゃんともう一度会って、説得しよう」
糸が言い、雛乃と真衣が頷く。
「じゃあさっそく! と言いたいところなんだけど、肝心の連絡手段がないんだよね……」
糸は懸念していたことを明かした。
すでに英美里ちゃんはMANIAChatのグループから抜けているし、携帯の電話番号や住んでいる場所もわからない。
学校の先生に英美里ちゃんの住所を尋ねるっていうのもなんだか怪しいし……。
「ハジメさんとシズクさんなら知っているんじゃない?」
雛乃が提案する。
「それだ! さすがだよ雛乃ちゃん!」
「じゃあ、私聞きに行ってくるね」
そう言って雛乃は部屋の外へ出ていった。
雛乃が戻ってくるまでの間、糸は特に何かをすることもなく、ただじっと座って待っていた。
一方の真衣はというと、スマホを
糸は無性に気になってチラチラと真衣の方を見てしまう。
この状況で……ゲームでもしているのだろうか……。
真衣ちゃんなら……あり得る……。
しばらくして、真衣の動かしていた指が止まった。
それと同時に部屋の扉が開き、雛乃が現れる。
雛乃の表情はどこか暗い。
「もしかして、ハジメさんとシズクさんに会えなかった?」
「ううん、二人には会えたんだけど……。 英美里ちゃんの家の住所をきいたら、個人情報に関することは教えられないって言われちゃって。 しつこくねばってみたんだけど駄目だった」
「そっかぁ。 どうしよう……」
糸は腕組みをし、ああでもないこうでもないと頭の中で打開策を考えあぐねた。
「糸はなんで悩んでいるの?」
いきなり真衣がぶっきらぼうに尋ねた。
「いやいや、英美里ちゃんと連絡をとりたいんだけど、その手段が思いつかないから悩んでいるんだよ。 雛乃ちゃんを待っている間もスマホでゲームしていたみたいだし、真衣ちゃんも一緒に考えて……」
「ゲーム? なんのことだかさっぱりわからないけれど」
そう言うと真衣は自分のスマホの画面を糸と雛乃が見えるように持った。
スマホの画面には、ねこチャットのアプリが映されており、画面中央には英美里のアカウントがあった。
「え、真衣ちゃんどうやってこれを見つけたの……」
糸がおそるおそる尋ねる。
「雛乃のこと待っている間に、軽くハッキングした」
「そっかぁ、あのとき真衣ちゃんはゲームをやっていたんじゃなくてハッキングをしていたんだね。 よしよし偉い偉い……」
糸の発した声が徐々に小さくなっていき……。
「って違う!!! 結局ハッキングしてんじゃん!!!!」
糸の威勢いい声が部屋中に響き渡った。
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