6bit AIって愛ですよね


 「じゃあ次は……君で」


 少し落ち込み気味のハジメが指名したのは、糸の左隣に座っていた女の子だった。


 「私は荒井雛乃あらいひなのと言います! 私も高校一年生です! なんというか、私はとってもAIに興味があるんです! 勝手に私好みの服をチョイスしてくれたり、車を自動で運転したり。 糸っちも言っていましたけど、私もすごいなぁって思ったんです!」


 ま、まぶしい……。


 糸は思わず目を細めてしまった。


 圧倒的な陽キャラ感。


 髪はほのかなブラウンカラーで、服もオシャレに決まっている。


 ほがらかで、気さくで、もう糸っちと呼んでいるし……。


 「うんうん、たしかにAIは面白い分野だよね。 ちなみに雛乃ちゃんはAIを学んで、何か目標があったりするのかな?」


 「ハジメさん、よくぞ聞いてくれました。 私はAIを使って……」


 「AIを使って……?」


 「いとしの彼氏ロボットを作りたいんです! だって、AIってアイですからね……!!」


 これはまた大胆なギャグを。


 糸は身震みぶるいをせずにいられない。


 「おお、そうかそうか。 そ、壮大な野望を立てているんだね雛乃ちゃんは」


 ハジメさん、雛乃ちゃんの扱い方に戸惑とまどっている……。


 糸はハジメにそっと同情の眼差しを送った。


 「でも、AIというのは膨大なデータを蓄積してパターンを構築していき、未来の予想を確からしくしていくんだ。 雛乃ちゃんは過去、それはもう幾人いくにんもの恋人と付き合ってきていそうだから、それらのデータをもとにロボットを作成すれば、本当に理想の彼氏が出来上がるかもしれない」


 ハジメさんの口調がやけに真剣だ。


 もしかすると、ハジメさんはITのこととなると、真面目モードに切り替わるのかもしれない。


 糸はハジメに少しだけ講師らしさを感じた。


 「え、私、彼氏とかできたことないですよ? ちなみに私の理想の男性像なんですけど、四十歳以上の渋めな感じで、かつ、フリフリのエプロンが似合いそうで、本職としてカジキマグロ一本釣りをしていて……」


 雛乃ちゃんにAIロボットを作らせたら、まずいことになるんじゃ……?


 嬉々ききとして話し続ける雛乃を横目に、糸はもう一度身震いをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る